政宗:なんとか戻ってこられたな……。しかし、前回のは酷ぇな……
佐助:このまま仮面舞踏会に持って行かれるところだったね……
幸村:危なかったでござる……。そういえば佐助、今日は豆の日でござるな♪
佐助:切り替え早いね、旦那。……豆の日?ああ、節分か。
幸村:某、炒り豆好きでござるよ!
政宗:あれは食うより撒くのが中心だろ?「鬼は外~」って。
元親:呼んだか~?
政宗:呼んでねぇよ。
佐助:どっちかっていうと、追い払ってたよね。
元親:な、なんだよ、のけ者にすんなよな~。折角一杯豆もってきたんだからよぉ!
幸村:おぉ、豆~!
佐助:へぇ~、イイ豆だね~。食費が浮いて助かるよ。
政宗:お前の基準は、いつもそこだな……。
元親:今日は節分、鬼の日よ。無論鬼役はこの俺様。
鬼に攻め込まれないよう、せいぜい頑張って豆投げるこったな!
幸村:ぬぉぉお!負けぬぅぁああああ!!!!
元親:その意気だぜぃ!おい、元就、何ぼんやりしてんだ。お前も豆取れよ!
元就:………。
元親:……?
――昔々あるところに、オクラ山という山がありました。
緑鬼:なんだ、そのネーミングセンスは!
――オクラ山には、幾人かの鬼が住んでおりました。
山の頂上に、ひとつぽつんと建つ家に住んでいるのは緑鬼。
今日は近所の紫鬼も遊びに来ています。
二人は大層仲良しでしたが、まったく違う性格をしておりました。
緑鬼:誰が貴様などと仲良しなものか!塵となって消え失せよ!
紫鬼:アッチィってんだよ!なにしやがる!
緑鬼:なにが紫鬼だ!貴様など桃色鬼だ、この姫若子めが!
紫鬼:俺だって好きで命名されたわけじゃねぇよ!つか痛ってぇよ!
ハタキを振り回すなハタキを!
――紫鬼は、沢山の友達鬼を持っていましたが、
緑鬼は、その性格が災いしていつもひとりぼっちでした。
緑鬼:余計なお世話だ!
紫鬼:お前なぁ、そんなこと言ってると、いつまでも友達できねぇぞ?
ちょっと山の近くによっただけで、「焼け焦げよ」。
ちょっと家の前で騒いだからって「日輪に捧げ奉らん」。
親切に届けて貰った落とし物を見て「これも策の内」、だもんな。
そんなだから、お前ん家の前だけ落ち葉掃いて貰えないんだぜ。
緑鬼:余計なお世話だと言っている!我に馴れ合いなど無用の長物。
貴様等のように愚鈍な鬼共と連むつもりはさらさらない。さっさと帰れ!
紫鬼:大福もってきたのに?
緑鬼:まぁ茶を飲む間ぐらいは待ってやらんこともない。
――世話好きの紫鬼は、何かと緑鬼の家に来ては、遊んだり愚痴ったり、
オヤツを食べたりフィギュアの自慢をしたりしておりました。
緑鬼:貴様……いつまで居座るつもりだ。
紫鬼:お前ん家のテレビの方がでけぇからよぉ、プレステも迫力が違うんだよな~。
緑鬼:……ふん。さては貴様、人のことをとやかく言う割に、
自分が孤立しておるのではないか?だから理由をつけて長居を……
紫鬼:あん?ああ、俺のことなら心配ねぇよ。今日は野郎共が鍋やろうつって、
夕飯用意して待ってる筈だからよ。お、やべ。そろそろ帰らねぇと。
緑鬼:……。
紫鬼:んな顔すんなよ~。また遊びに来てやっからよぉ。あ、なんなら鍋食いにくるか?
緑鬼:誰がいくものか!
紫鬼:そう言うと思ったぜ(笑)じゃあな。
――デリカシーの無い紫鬼にむかつくことも多々ありましたが、
それでも二人は何かと一緒におりました。そんなある日。
紫鬼:ハハッ!大量だぜぃ!
緑鬼:なんだこれは……?
紫鬼:見てわかんねぇのか?金銀財宝、お宝だぜ!近所の村からいただいてきたのよっ!
緑鬼:また強奪か……。
紫鬼:おいおい、時化た面すんなよ。俺等は鬼だぜ?悪さしねぇでどうするよ。
緑鬼:悪さがどうこうと言っておるのではない。鬼だから強奪する。
芸がないと言っておるのだ。新しき時代には、新しき時代に相応しい
より堅実な方法もある。にも関わらず貴様等は毎度毎度猪突猛進に……
紫鬼:新しい……か。そうだな、何も村の奴等と必ずしも敵対しなくてもいいんだよな。
緑鬼:……?
紫鬼:鬼に馴染めねぇなら、人間だって構わねぇってこった。
緑鬼:何の話だ……?
紫鬼:よし!俺に任しとけ。お前にばっちり友達作ってやるからよぉ!
緑鬼:い、いらぬと言っておるだろう!
紫鬼:まぁまぁ、いいから話を聞けよ。
――紫鬼は、回覧板を回すときや町内会の集まり、緊急時の非難や、
果ては老後の心配なども持ち出して、孤立するといかに困るか
緑鬼を説き伏せました。そして、ある作戦を提案したのです。
紫鬼:いつまでもぽつんとされてたんじゃ、こっちが気が気じゃねぇ。
いいな、手はず通りに動くんだぞ?
緑鬼:ま、まぁ確かに捨て駒は手元にあった方が便利かもしれぬな……
紫鬼:捨て駒でもなんでもいいけどよぉ……。兎に角、頼られちまえばこっちのものだぜ。
――その頃、麓の村では豊作に感謝するお祭りが開かれていました。
吾作:今年は沢山獲れただなぁ~。これで暫く安泰だべ。
つぼ八:て、てぇへんだぁ!
吾作:どうしたべ?
つぼ八:お、鬼が現れて!おら達の村を、みぃんな壊しちまうって暴れてるだよ!
吾作:な、なんだとぉ!?
紫鬼:まだまだいくぜぃ!(どっかぁあああん!)
つぼ八:あぁ!おら達の力作、いつきちゃんの等身大オブジェがぁあっ!
吾作:このぉ~鬼の好きになんかさせねぇぞぉ~!
紫鬼:弩九!
吾作:あー……
つぼ八:あぁ!吾作どんがぁああ!こんがり小麦色の肌にぃぃ!!!
紫鬼:それで本気じゃあねぇよな?もう少し楽しませてくれよ。
つぼ八:くそぉ、こうなったら先生方をお呼びするしかねぇ!先生、先生~っ!
紫鬼:先生だぁ?
――村の奥から、立ち上る闘気。
政作:おいおい、たかだか一匹の鬼如きになんて様だよ。
幸作:祭りを邪魔する悪い子はぁぁ……どこでござるかぁぁあ……
佐作:旦那……そんなに真剣に怒らなくてもいいんじゃないの…?
幸作:駄目でござる!祭りとは上手いもの一杯のわんだーらんどにござる!
それを邪魔するなど言語道断!某が退治てくれようぞ!
佐作:まぁ旦那が言うなら仕方ないか。鬼は外~ってね♪
――さぁ、焦ったのは紫鬼です。
紫鬼:お、おい!用心棒雇ってるなんて、聞いてねぇぞ!
政作:俺達は用心棒じゃねぇぜ?村人だ。
紫鬼:嘘つけぇぇぇ!!!んなギラギラした村人がどこにいんだよ!
政作:確かに……ただの村人じゃねぇのも事実。俺達は戦国最強村人、「奥州三傑」だ!
幸作:「お館様レンジャー」のがいいでござる!
政作:何だよそれ。意味わかんねぇだろうが。
幸作:なんで勝手に場所を奥州に設定するのだ!ずるいでござるよ!
佐作:ねぇ、二人とも。どうでもいいけど鬼……逃げちゃうよ?
二人:はっ!
――猛然と逃げる紫鬼。あとを追う……ええと……村人三人!ところが……
紫鬼:今だ!四縛!
政作:なっ!
幸作:ぬぉ!
佐作:あらら~……
――突然出現した網に、村人三人はあっさり掴まってしまったのです。
幸作:ぬぅ~罠とは卑怯なりぃぃ!!!
紫鬼:へっ、なんとでもいいやがれ。俺は倒されるわけにはいかないんでな。
罠用意しといてよかったぁ………。さぁ、もっと派手に暴れてやるぜぃ!
――その時。
緑鬼:ま、待つがよい……!村を荒らす不届者!
――なんとなく棒読みっぽい台詞を述べながら、緑鬼が現れました。
紫鬼:なんだよ緑。俺の邪魔しようってのかぁ~?
緑鬼:む、村人たちを解放し、即刻立ちされ。さもなくば、ぽてくりこづき回し、
泣いて御免なさいと言うまで容赦なく……
紫鬼:(小声)おい……もっと正義っぽい言い回しできねぇのかよ……
緑鬼:む……。ええい、兎に角退治てくれる!成敗!
――緑鬼は紫鬼に向かっていきました。激闘の末……
紫鬼:ぐっはぁあ!
――緑鬼が勝利しました。
紫鬼:馬鹿なぁぁぁあ!!!この俺がぁぁああ!!!
こんなことなら昨日のプリン食べておくんだったぁぁぁ!!!ぐああああ!!!
佐作:なんとなく余裕のあるやられ方だね。
緑鬼:さっさと倒れろ、この阿呆め。(ぱかんっ)
紫鬼:ほ、本気で痛ぇぞこの野郎……。ま、まぁ兎に角降参だ!
こりゃ山に帰るしかねぇなぁ畜生!
――紫鬼はすごすごと山へ帰って行きました。
吾作:あ、有り難うごせぇます!なんとお礼を言って良いやら……
つぼ八:お、鬼さんがおら達の味方してくれるなんて……おら驚いただよ!
緑鬼:味方?ふん……我は捨て駒を掻き集めようと目論んだまでのこ……
――紫鬼に「いつもお前は一言余計」と言われたことを思いだし、
緑鬼は咳払いして誤魔化しました。
緑鬼:ま、まぁ単なる気まぐれよ。
吾作:気まぐれでも助かったべ!ささ、おら達がお祭り用に拵えた団子、
こんなことしかできねぇから、たぁんと召し上がってくだせぇ。
緑鬼:ほぉ、なかなかの美味だな。
つぼ八:へぇ~、鬼さんも団子好きなんだか(笑)いつでも食べに来て良いべ!
緑鬼:まぁ気が向いたら来てやらんこともない。
幸作:あぁ、団子ぉ~……
政作:涎垂らすなよ。団子より、さっさとこの網なんとかしろよな!
いつまでぶら下がってりゃいいんだよ!
佐作:そういうことか……
政作:何ひとりで納得してやがんだ?
佐作:いや、どうもあの鬼の暴れ方が気を遣っているというか、妙に思えてさ。
様子を見ようと思ってたんだけど……そういうことか、と思って。
政作:そういうこと…?………ああ、成る程な。とんだ浅知恵にはまったもんだぜ……
――その夜。緑鬼はお土産の団子をぶら下げて、山へ帰ってきました。
緑鬼:おい、団子があまったから、持ち帰ってきたぞ。
既に乾燥してかぴかぴだがな、貴様のような味覚音痴には丁度良かろう。
――呼んでも、紫鬼の返事はありません。
緑鬼:なんだ、寝てでもいるのか?勝手に人の家に上がり込んだ末、
寝こけるなど、失礼千万……
――しかし緑鬼がみつけたのは、紫鬼の姿ではなく、
一枚の紙切れでした。
「うまくダチもできたみたいで よかったじゃねぇか
敵のおれとつるんでたんじゃ 村のやつらにあやしまれるからな
おれはどっかとおくの はなれた山にでもうつるとするわ
あばよ たっしゃでな」
緑鬼:………。
元親:元就!?お前、何泣いてんだ!?
元就:……っ!!!黙れ!誰も泣いて等おらぬわ!
佐助:妙に大人しいと思ったら、毛利の旦那、絵本なんか読んでたんだ。どれどれ~?
ああ、これ、旦那が昔読んでた本じゃん。こないだ倉庫の整理したとき、
出しっぱなしになってたのかな?
元就:勝手に見るでない!
政宗:「泣いた赤鬼」。随分らしくねぇもん読んでんだな……。
元就:喧しい!
幸村:懐かしいで昔話でござるな~。某も感動したものでござるよ(しみじみ)
元親:俺その話知らねぇな…?借りていいか?
元就:読むなぁぁぁぁ!!!!
元親:な、なんだよ……そんなに怒ることねぇだろうが……。
元就:ええい、勝手に偽善者ぶりおって!何が「あばよ」だ!
平仮名が多すぎて読みづらいのだ阿呆め!
元親:イテイテ!何の話だよ!
佐助:はいはい、喧嘩しない。さっさと豆まきしよう。俺様食事の用意しとくからさ。
政宗:OK guys!派手に撒き散らすぜ!鬼はそ……おい、元就!
捲く前から食ってんじゃねぇよ!
元就:よ、余計な労力を使いたくないだけよ。今年の我は、食専門で行く!
幸村:某も、食べる方がいいでござる~♪
元親:あ、じゃあ俺も食う~♪
政宗:お前等なぁ……そりゃ歳の数だけ食うって決まってんだぞ!一体何歳だお前等!
元就:我は明応6年生まれ、今年は2008年だから数え年で……
政宗:こんな時だけ戦国時代持ち出すな!
佐助:あれ?もうみんな食べてんの?はいは~い、恵方巻だよ~。
幸村:うぉおお!!!節分万歳でござる~!!!!
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