元親:さ~さの葉、さ~らさら~っと♪(もさ)
元就:なんだこのもさもさは。鬱陶しい。
元親:笹だよ、笹。今日は七夕だろ?短冊書こうぜ、短冊!
政宗:お前、そういうイベント事好きだよな……
佐助:懐かしいな~、昔は良く願い事書いて飾ったりしてたっけ。
最近、どうにも忙しくてね~。
政宗:発言が完全におばちゃんだよな……お前。
幸村:某も願い事書くでござる!それを瓶に詰めて海に放った後、
枕元に靴下を吊しておくと、妖精が表れて、三つの願いを叶えてくれるという
七夕の伝説を試してみようぞ!
佐助:旦那、それいろいろ混ざってる。
元就:そもそも七夕の願いとは、誰に対して願っているのだ?
政宗:星だろ?
元就:その星の男と女が川を挟んで会うとかどうとか……そんな話ではなかったか?
どう考えても、其奴等は自分のことで手一杯だ。他人の願いを叶える暇が
あるとは到底思えぬ。
元親:夢の無ぇ奴だな……。
佐助:まぁまぁ、毛利の旦那。夏に入って倦怠感溢れるこの時期に、家計を見直す意味で、
改めて今年の目標を掲げるって言うのも悪くないんじゃない?
元就:貴様の趣向の方が、余程夢に欠けると思うが……
幸村:元就殿。
元就:む?
幸村:七夕の星の話とは……どのような物でござるか?
元就:なんだ。知らぬのか?
幸村:ぼんやりとしか知らぬでござる。
元就:むぅ……言われてみれば、我も牛飼いと機織り女の話としか……
元親:これだから田舎モンはよぉ!いいぜ、俺が話してやるよ。
――むかしむかしあるところに、牽牛という牛飼いの青年が居ました。
牽牛:喰って直ぐに寝る等、怠惰極まりない!貴様等、それでも理の牛達か!
炎の牛:いや……だって俺等、牛っすよ?
氷の牛:牛は喰っちゃ寝するか、乳出すかが仕事っていうか……
雷の牛:なぁ?
牽牛:煩い!怠惰は、悪!削除ぉおおおおお!!!
五本牛:か、勘弁してくださいよぉ~……
――青年はとても働き者で有名でした。
ある時彼は牛たちをつれ、湖の畔で休憩していました。
牽牛:変身……!違うな……。モードチェンジ!……これも違う……。
メイクアップ!……違う。
風の牛:変身の練習ですか……?
牽牛:なっ!何を見ている!盗み見は悪!
闇の牛:いやだって……大声出して踊ってるから……
牽牛:踊って等おらぬわ!……む?他の奴等はどうした?
風の牛:ああ、なんか……湖の近くで騒いでましたよ。
闇の牛:絶景が見えるとかなんとか……
牽牛:……?まったく……何をしているのだ。
炎の牛:おぉ~……
氷の牛:すげぇ……
雷の牛:こりゃ見物だぜ……
牽牛:何をしている。
炎の牛:やべっ!
氷の牛:け、牽牛様……
牽牛:何をこそこそのぞき見ている………?……っ!!!!!!
雷の牛:いや、だって……ね?
炎の牛:見たくなっちゃいますよ、これは。
牽牛:こ、これは……
――湖では、天女が水浴びを……
天女:ふふふ……一つ……二つ……三つの石……
賽の河原に拾いませ……黒鬼在して四つを壊す…ふふふ……
――訂正。黒魔術をしていました。
牽牛:のぞき見は悪だ。気になるのならば、行って直接見せてくれと言えば良かろう。
炎の牛:それは流石に怖いっていうか……
牽牛:のぞき見など許さぬ。私が直々に、部下の不始末を詫びてくる。
氷の牛:ちょ、待って下さいよ牽牛様ぁ!
雷の牛:止めるなって。牽牛様も、あの子とお話ししたいんだって。
牽牛:な、何を言うか!
雷の牛:おっと。今のは聞こえなかったことにしてください~♪
氷の牛:俺等此処で見てますから。
炎の牛:牽牛様にも、遂に春が!俺等応援しますよ!
五本牛:頑張ってきて下さ~い♪
牽牛:貴様らぁああああ!!!!勝手なことを言……(ばき)……む?
氷の牛:あ。今、牽牛様が踏んだのって……
雷の牛:藁人形?壊れちゃったな。
炎の牛:あの子の……なんだろうな。
五本牛:あ~らら、こらら~、怒られる~♪
牽牛:貴様等ぁあああああああああああ!!!!!
天女:誰か……いるの?
牽牛:!!!!
――牽牛は咄嗟に、天女の藁人形を隠してしまいました。
天女:貴方……だぁれ……?
牽牛:と、通りすがりの者だ。邪魔をしたようだな、直ぐに退散する。
天女:あ……待って。
牽牛:(ぎく)
天女:市の……お人形……しらない……?
牽牛:に、人形?
天女:うん……藁の……お人形。市……アレに乗って……帰るから……無いと困るの……
炎の牛:乗って帰るんだ……
雷の牛:藁人形に……
氷の牛:凄い光景だな……
牽牛:さ、さぁ……人形?どうだろうな……?
氷の牛:あ、しらばっくれた。
天女:どうしよう……市……帰れない……。折角……地上での……お仕事……
天変地異の……準備が……終わったのに……。兄様に……叱られる……
五本牛:天変地異!?
牽牛:………。
炎の牛:牽牛様!ここはそんな憐れみの眼差しを向ける所じゃないですって!
牽牛:し、しかし……
氷の牛:地上の命運がかかってるんですよ!?
雷の牛:絶対その人形、返しちゃ駄目ですよ!
牽牛:む……。
天女:………(さめざめ)
牽牛:あ~、その……
天女:……?
牽牛:帰るところが無いならば……家に来い。
天女:え……
牽牛:勿論……無理にとは言わんが……。正義の名に恥じぬ行いをすると誓うならば、
置いてやらんこともない。
炎の牛:自分が帰還手段壊しておいて、随分な上から目線……
牽牛:削除されたいか。
炎の牛:ゴメンナサイ。
天女:でも……市……何も……できない……。何の役にも……立てないから……
牽牛:余計なことを考えるな。もうじき雨になる。さっさと来い。
天女:………。はい……(嬉)
――牽牛と天女は、それから暫く、仲睦まじく暮らしました。
織姫:あ、牽牛様……おかえり。(がっしょんがっしょん)
牽牛:何をしている……。
織姫:機織り……だよ。市……これしか……できない……から(がっしょんがっしょん)
牽牛:……。
織姫:見て……これ。何に見える……?
牽牛:紅白……だな。これは饅頭か?
織姫:ウルトラマンの衣装……作ったの……。カラータイマーも……頑張ったのに……
おまんじゅうにしか……見えないのね……(さめざめ)
牽牛:い、いや!そんなことはない!見える!言われてみればきちんとそう見え……
……そうではない!部屋一面は織りすぎだと言いたいのだ!
布が犇めいて窓も開けられぬではないか!
織姫:あ……御免なさい……。役に立とうと……夢中で……。
牽牛:余計な気を遣わずとも良いと言ったであろう。
織姫:でも……市……ここにしか居られない……。天にも帰れず……
行くところが……無いもの……。
牽牛:……。
織姫:だから……。今度から作った布は……ちゃんと締まっておくから……
ここに……いさせて欲しいの……。
牽牛:……。
――夕食の後、牽牛は織姫に改めて話があると言いました。
織姫:なぁに……?牽牛様。
牽牛:お前に……これを返す。
織姫:これは……市のお人形!!!
牽牛:私なりに補修してみた。おそらく、何とか使い物になるはずだ。
織姫:どうして……牽牛様がこれを……?
牽牛:………すまん。正義を語っておきながら、私は悪に染まっていた。
帰りたいと願うお前の言葉に、聞こえぬふりを決め込んだ。
己の不始末を隠したのだ……。
織姫:……。
牽牛:言い訳など出来ようはずもない。ただ……侘びと……礼を言わせて欲しい。
織姫:……?
牽牛:襤褸綴れしか着られぬ牛飼いに、毎日美しい機を織って見せた。
文字通りの、「彩り」をくれた。お前には、感謝せねばならん。
織姫:牽牛様……。
牽牛:長い間、悪いことをした。さぁ、早うそれに乗って帰るがよい。
織姫:………。………嫌です。
牽牛:……?な、何を言う!早う帰らねば、兄者に叱られると申していたでは……
織姫:此処に……牽牛様と一緒にいます!
牽牛:……。
織姫:……。
牽牛:………勝手にしろ。
織姫:……!………はい(嬉)
――なんだか書いてるこっちが居たたまれない気分になってきた、その時です。
天使:そうはいくかってんだよっ!!!!(どしゃああっ)
牽牛:なっ!天から子供が降ってきただと!?
織姫:元気……だね。
牽牛:元気の粋を越えてはいないか……?
天使:織姫様ぁ、いい加減に帰ってきてくださいよ~。天帝様が待ってます。
織姫:兄様が……?
天使:天帝様、「昔は余に逆らう子じゃなかったのに……」って、
すっかり塞ぎ込んじゃってんですから!それを良いことに、
もう変態が好き放題のさばって、天界は荒れ放題!
なんとかできるのは、織姫様だけなんです!
織姫:でも……市は……。
牽牛:行ってやるがよい。
織姫:……。
牽牛:天変地異を起こされては困るがな。天が滅ぶのは、地の者としても困る。
お前にしか出来ぬ事が在るのなら、それを果たすが、正義としての務めだ。
織姫:……。牽牛様も……一緒に………
天使:人間が天界にはいるのは禁止です。
織姫:……。ねぇ……金平糖……いる?
天使:ば、買収しようったって駄目です!兎に角帰るよ、織姫様!
――こうして天界と地上に引き裂かれてしまった二人。
しかし、哀れに思った神様は、牽牛に試練を与え、それを乗り越えられれば、
天界に入ることを許そうと言いました。
天帝:ふははは!余興はこれまでよぉ!
兵士:第三闘技、開始!
牽牛:削除ぉおおおお!!!!……そもそも……お伽草子の場合……笊で水を汲めとか……
そういう、知恵比べ的な試練ではないのか……?何故、物理的試練なのだ……(疲)
ええぃ、削除だぁああああ!!!!
兵士:決着!
牽牛:……か……勝った……。
天帝:やりよるわぁ……。ならば、余が直々に引導を渡してくれよう。
――神様と牽牛の激しい戦い。そして……
天帝:ぬぉおおお!!!
――牽牛が勝ちました。
牽牛:何やら早くないか?
兵士:戦闘シーンは、書くのが面倒ですからねぇ……。
天帝:ふっ……成長したな。好きにするがよい。
天使:天帝様……楽しそうだなぁ。
兵士:最近暇でしたからねぇ。
天使:いいなぁ。俺も戦してぇなぁ~。
牽牛:天界とは……こんなにいい加減な場所なのか?
織姫:牽牛様!
牽牛:!!!
――晴れて夫婦となった二人でしたが、二人で居ることが楽しく、
やがて牽牛は牛を追わなくなり、織姫は機を織らなくなりました。
牽牛:無言・即殺っ!(きゅぴーん!)
織姫:牽牛様……凄いな……。市も……頑張る。開け放たれよ……底の闇……(ごぉおお)
牽牛:ふむ。なかなかお前も強くなったな。
織姫:だって市……第八武器……手に入れたもの……
牽牛:何!?いつの間にレベル上げをしたのだ!?
織姫:ふふふ……♪
牽牛:ぬぅぅ……負けぬ!レベル究極で挑むぞぉおおおお!!!
――そんな二人に怒った神様は、天の川で二人の間を引き裂き、
年に一度しか会えないようにしてしまいました。
織姫:牽牛様……
牽牛:おのれ……こんな川など!
風の牛:危ないですよ、牽牛様!流れ、早いんですから。
牽牛:し、しかし……このままでは……
牛飼い:まぁぁつぅうううう!!!!
牽牛:……?何事だ?
牛飼い:なんだ川、こんな川!泳ぎ渡って、まつの元へ行く!
天女:犬千代様ぁぁぁあ~!まつめは此方にございまする~!
牛飼い:うぉおおおおおお、バタフライだぁああああ!!!!(泳)
天女:嗚呼、犬千代様っ!!!レーザーレーサーも吃驚の泳ぎっぷり。
まつめはまた惚れ直してしまいました!
牛飼い:きなさい!かわをわたり、わたくしのもとへ!
天女:ああああっ、謙信様ぁああああっ!!!今すぐお側に参ります!(ぴゅ~ん)
牛飼い:それでこそ、わたしのうつくしきつるぎ。
天女:謙信様ぁああああっ!!!
牽牛:………。
氷の牛:なんか……似たようなカップル、多いみたいっすね。
闇の牛:鳥で飛んでくのは反則じゃないのか……?
牽牛:……。ええい!この私だけ、黙ってみていられようか!
理の牛達よ、今すぐ支度に掛かれ!
風の牛:支度?何のですか?
牽牛:ダム建設に決まっている!
五本牛:…………………だむ?
牽牛:このような川など、正義の力で堰き止めくれよう!
雷の牛:いやいや、いくら姫様に会いたいからってそんな無茶苦茶な……
牽牛:無駄口を叩くな!天の川を堰き止めし「鵲ダム」、着工だ!
五本牛:まじっすか………。
――
元親:こうして織り姫と彦星は、七夕の夜に会えるようになりました。
めでたしめでたしっと。……かぁ~っ、ロマンチックだぜぃ!
元就:そうか……?何やらおかしな点が山ほどある気がするのだが……。
元親:いいんだよ、細かいことは。
佐助:いいなぁ~……。俺様もそういう健気な彼女が欲しいって願いにしようかな?
幸村:は、破廉恥な!
佐助:嘘~。俺様の願いは「全自動洗濯機」、ただひとつ。
政宗:それはそれでどうかと思うがな……。俺は勿論「天下」だぜ!
幸村:某は「お館様の御上洛」だ!
元就:ふっ……小さく「団子」と書いて在るではないか(にやり)。
幸村:!!!
元親:お前だってちっちゃく「大福」って書いて在るじゃねぇか。
元就:焼け焦げよぉおおおおお!!!!!!
元親:あああっ!俺の短冊がぁあああっ!!!!
佐助:この燃えかす「……分の一、フィギュア1つ。……パーツ、2本」とか
書いてあるんだけど。
政宗:注文票かよ……。
幸村:間もなく日が沈むでござるな!
元就:日輪が……
佐助:寂しそうな顔しないの。たまには星もいいもんでしょ。
政宗:ま、普段そんなに眺めたりしねぇよな。
元親:ここんとこ雨続きだからよぉ……けど、今年はちゃんと星が見えそうだな。
幸村:(ぱんぱん)何卒、御上洛と団子を。
佐助:旦那。手叩いて拝むもんじゃないから。
元親:お!一番星だぜ!
Powered by "Samurai Factory"