――きょうはたのしい どんぐりまつり
村長:愚民共よぉ~、精々励めぃ。
蝶々:では、開会宣言を。
村長:是非も無ぁしぃ!
うさぎ:武装とか言ってたけど、ようは汚れないように軍手とか用意しろって事だよな?
お~、一杯落ちてるなぁドングリ!さぁ、優勝目指して集めるぞぉ~♪
ひぃ、ふぅ、みぃ……っと。
山羊:隙アリじゃあああ!!!!
隼:……。(ばささっ)
うさぎ:へ?
山羊:ふぇっへっっへ!若い、若すぎるわ!そのような無防備では奪われるが道理!
うさぎ:ず、ずるいよ爺ちゃん!それ、俺が集めたドングリだぞ!?
山羊:ふん。そのようなへっぴり腰では優勝など程遠………ぬふぉ腰がぁぁあっ!!!!?
隼:!!!!
うさぎ:………(呆)
山羊:と、兎に角、貴様の手を離れた瞬間から、このドングリは儂のもの。
精々次は油断をせぬことだな……あたたたた。
隼:………?
山羊:すまんのぅ風魔……。そうじゃな……昨日のブートキャンプがよくなかったのぅ。
一度帰って休むとするか……。
うさぎ:無茶すんなよ爺ちゃん……。あ~あ、また集め直しか。ひぃふぅみぃ……
(……めりめりめり)………ん?
(めきめきめき……どどぉおおおおん!!!!)のわぁっ!!!!木、木が……
ドングリの木が、いきなり折れてきた!?一体何が……
謎声:おや?外してしまったね。僕としたことが、少々計算を誤ってしまったようだ。
うさぎ:誰だ!
謎声:そんなにいきり立たないでくれ。僕は大きな声という奴が苦手でね。
今出て行くから、少し大人しくしていてくれないかな?
うさぎ:人に大木ぶつけようとしておいて、随分な態度だな。
そのお偉い方の顔、拝ませてもらおうかぁ!
ゴリラ:…………。
うさぎ:……え?ゴリラ?
ゴリラ:…………(困)
うさぎ:ちょ、ちょ待っ!帰ろうとすんなって!この木、お前が折ったのか?
ゴリラ:………(頷)
うさぎ:そ、そっか。………お前、さっきはアレだけ偉そうにしておいて、
出てきたら随分謙虚な態度なんだな。
謎人:僕をそんなゴリラと一緒にしないでくれないかな?
うさぎ:お前は……!お前は……お前…………何なんだ?
謎人:見て分からないのかい?天使だよ。
うさぎ:はぁ!?天使!?
天使:ほら。ちゃんと羽が生えてる。天使以外の何者でもないだろう?
全く、これ以上無いほど、僕に相応しいどうぶつだよね(悦)
うさぎ:動物なのか……?
天使:さて。見事僕の攻撃を避けてくれた君だけど、どうも君は、この祭りの真意を
理解していないようだね?
うさぎ:真意?
天使:周りを良く見渡してご覧。
蛙:おれ、いちばんになる~!お前等みんな負けちまえ~!(殴)
河童:ソウハ問屋が卸さなし助ヨ~!プリンセスラブミー砲発射ネ~(ちゅどぉおおむ)
大狸:金じゃ金!金をやるぞ~!代わりにドングリをたぁんと持ってくるのじゃ~!
ヒグマ:ふっはっは!木ごと引っこ抜いてやるばい~!(ずもももも)
うさぎ:な、和やかなお祭……り?
天使:そう。それは仮の姿。本当は皆が優勝を狙って目の色を変え、
ドングリを奪い合う戦慄のゲーム。ドングリ祭りの真の姿は……
買収も可、奪うも可。手を組むのも裏切りも、何もかもが許された、
ルール無用の殺し合いだよ。
うさぎ:ドングリで!?
天使:新入り君も生き延びられるよう、精々頑張ってほしいね。
キツネ:行け、我が駒。バリケードを展開し、森に誰も近づけぬようにするのだ。
ライオン:誰が駒だ、誰が。
キツネ:………。フィギュア売り場をなくしてやるか?
ライオン:あぁぁ御免なさい!村で唯一グッズが買える店なんだ!それだけは勘弁!
キツネ:ふん。ならば貴様の機関で敵を一掃せよ。
ライオン:へいへい。野郎共!富嶽の力、見せてやろうぜぃ!
黒猫:~♪大した砲撃だぜ。こりゃ拾おうにも、森に踏み入れることも出来やしねぇ。
カラス:うわあっつ!危なっ!(逃)……ふぅ~……危うく焼き鳥になるところだった。
黒猫:なんだ佐助。お前も参加してたのか。
カラス:あ……。まぁね~。賞金で新しい冷蔵庫欲しいしさ~。
黒猫:人を軽蔑の眼差しで見るのやめろよ。こないだの事は謝るって。
冷蔵庫ならかってやるから。
カラス:ホント!いや~、良かったよ♪俺様、真ん中野菜室で左右開きの奴がいいな~。
黒猫:と、とりあえずその話は、この状況を切り抜けてからだな。
カラス:うん。まぁあの二人なら組むだろうとは思ってたけど、案の定厄介な相手だね。
手も足も出ないっての?折角集めたドングリみ~んな放り出して、
砲撃から逃げるだけで精一杯だったよ。旦那ともはぐれちゃったし……
大丈夫かなぁ?
黒猫:あいつなら切り抜けるだろ。それにしても……こう連射されちゃなにもできねぇな。
せめて一時、間を詰める隙だけでも稼げればイイんだが……。
カラス:あ。そうだ。良い方法があるよ。
黒猫:?
柴犬:ぬぉおおおおおお!!!!!!豆鉄砲なぞ当たらぬわぁああああああ!!!!!
うさぎ:お、おい!危ないって!大砲だから!気合いで乗り切れるもんじゃないから!
柴犬:おぉ、慶次殿!大砲が振っている程度で怯えていては、勝負には勝てませぬぞ。
うさぎ:俺は勝負とかどうでもいいよ。もう帰ろうと思ってたのに、
この大砲の雨だろう?危なくって帰れやしないんだ。
柴犬:なんの。気にしなければ良いだけのこと。見よ、某などさっき背中にまともに
大砲が落ちてな。さながらカチカチ山の如き状況になりながらも、
見事二十六個ものドングリを集めきったでござる。
うさぎ:それで背中の毛皮だけハゲができてんのか……。おたくの鳥の泣き叫ぶ姿が
目に浮かぶよ……。
柴犬:そもそも某にとっての炎は身近で、然したる恐怖もないでござる。
元就殿と元親殿が、勝利に酔いしれている今こそ攻め時。いざ、参るぁああ!!!!
(ちゅどぉおおむ)ぬぉおお!?
うさぎ:あ~あ、いわんこっちゃない!ここは一旦退こう幸村。
柴犬:いやでござる~!!!
うさぎ:駄々をこねるなっての。あの鳥が居ない今、なんかアンタを止めるのは
俺の役目な気がするんだよ。
柴犬:むぅ~………お?
うさぎ:あれ?
柴犬:砲撃が……止まったでござるな。
うさぎ:なんでだ?
柴犬:わからぬ……。
キツネ:な、何をしているのだ!砲撃を止めれば、他の者に抜かれるではないか!
ライオン:そ、そうは言ってもよぉ……燃料はまだ充分……あぁっ!
キツネ:なんだ。
ライオン:コード……囓りきられてる……(泣)
キツネ:愚か者めが……。
ライオン:俺の所為かよ!?畜生……俺の可愛い機関に……何処のどいつだ!!!
リス:コード、囓ってきただよ。
カラス:ご苦労さん。いや~助かったよ♪
リス:兄ちゃん。約束守ってくれるべな?
黒猫:ああ。クルミでも米でもたらふく喰わせてやるよ。さぁて、反撃開始と行こうぜ!
うさぎ:なんだか分からないが、これはチャンスだな幸村!
柴犬:一杯あつめて、賞金貰うでござるよ!
キツネ:もうよい!こうなれば捨て駒共に集めさせるわ!貴様も拾え!
ライオン:えぇ~……俺、爪に泥はいるから、いまいちやる気が……
キツネ:………。
ライオン:ひ、拾います!拾えばいいんだろ!
うさぎ:お~お~。なんだかんだで、最後はみんな地道に拾うわけか(笑)
和やかなお祭りってのも、あながち間違ってないかもな。
謎声:愚鈍……実に愚鈍な者達だ……。
黒猫:Ah?
柴犬:何奴!?
パンダ:戦に酔い痴れ、拾うことを忘れた者達に、今更勝利など無い……。
見たまえ、私の収集したドングリを。
カラス:なっ……!
ライオン:米俵一俵分だとぉ!?
キツネ:貴様……一体どのような手を使った!
パンダ:何……君たちが馬鹿馬鹿しい小競り合いをしている間に、
人が本来あるべき姿でいた、それだけのことだよ。
うさぎ:つまり、誰にも構って貰えなかったから、地道にドングリ拾ってたわけか。
ライオン:つーかよぉ、アイツ誰だ?あんな奴、うちのゲームに居たか?
パンダ:………。苛烈苛烈。
カラス:あ。さり気なく自己アピールした。
黒猫:アイツがパンダかよ。衣装が白黒ってだけじゃねぇか。
柴犬:もふもふしていて可愛らしいでござるな~。
キツネ:管理人が思い付かなかったのであろう。
パンダ:兎に角、だ。卿達が今から集めたところで私の数には到底及ばない。
諦めて帰った方が身のためだと思うのだが、違うかね?
黒猫:ちっ……。
柴犬:団子……買えないでござるか?
カラス:旦那。電化製品買おうって約束したじゃん。団子買う気だったの……?
キツネ:貴様がとちらねば、我があのまま勝利していたものを(睨)
ライオン:だぁかぁらぁ!あれは俺の所為じゃないって……
うさぎ:そいつぁどうかな?
一同:!
パンダ:ほぅ。卿には秘策でもあるのか?
うさぎ:秘策という程のものでも無いさ。この祭りにルールは無い。
買収も可。奪うも可。……ってことは、今一瞬で一位になれる方法が
目の前にあるってことじゃないのかい?
黒猫:………。成る程(微笑)
カラス:奪うも可……だもんねぇ。
パンダ:ほぅ……面白い事を言う。だが、これを見ても、同じ事が言えるかな?(ぱちん)
キツネ:何!?
ライオン:周りの木が、火を噴きやがった!?
パンダ:この日のために開発した、樹木型の火炎放射器だよ。実に……実に美しい炎だ。
うさぎ:アンタ……よっぽど一人で暇なんだね。
カラス:………。
黒猫:おい。今なんで俺を見た。
柴犬:炎など、恐怖にあらず!我等六人が手を組めば、向かうところ敵無しよ!
ライオン:へ?六人。
キツネ:手を組むなど、いつ承諾した。
カラス:でもまぁ……この状況なら……
うさぎ:手を組むのが賢い選択、って奴じゃあないのかい?
キツネ:ふん。
ライオン:っしゃあ!気合いはいったぜぃ!
黒猫:Ha!遅れるんじゃねぇぞ。
うさぎ:ドングリの花、咲かせましょう!!!!
うさぎ:で、結局、なんでアンタが優勝なんだよ。
天使:前もって大量のドングリを発注しておいたんだよ。
これなら、無駄な労力は何も必要ない。ただ結果発表時に
会場へドングリを運べばイイ。ね、秀吉。
ゴリラ:う、うむ……。
黒猫:トラックの荷台から袋詰めのドングリ担いで行ったり来たり……
ライオン:見てるこっちが痛々しかったよな……。
天使:お疲れ様、秀吉。今日は賞金が手に入ったから、バナナ一房あげるからね。
ゴリラ:お、おぉ!本当か!
カラス:喜んでるよ……。
キツネ:不憫だな……。
黒猫:あ~あ、無駄な体力使っちまった。
柴犬:でも、よい運動になったでござる。きっと今宵の御飯は、いつにも増して
おいしいでござろうな~♪
カラス:いつにも増して大量に食べんだろうな~……
ライオン:外食でもすればイイだろ。
カラス:勿体ない。それに、こうなることを見越して、実は大量に下拵えしてきたんだ。
あとはちょっと手を加えれば、かなりの量ができる筈。
黒猫:流石だな。
カラス:誉めないで。哀しいから。
キツネ:ふむ。では我等も行くとするか。
カラス:はぁ!?なんで!?
キツネ:かなりの量があるのであれば、少々人数が増えてもよかろう。
柴犬:おぉ!賑やかになりそうでござるな♪
カラス:洗い物が増える……
ライオン:くぅ~っ、久々に賄い飯以外のもんがくえるぜ!
キツネ:不満なら無くすぞ。
ライオン:あ~嘘嘘!感謝してるって!
柴犬:慶次殿も来るであろう?
うさぎ:へ?俺も……行ってイイの?
柴犬:当然でござろう!某達は、悪のパンダに立ち向かった仲間でござる!
黒猫:結局あの後、制限時間終了して戦ってねぇだろ。
ライオン:そもそも、地道に集めたもん奪うってんだから、どっちが悪だかなぁ~……。
カラス:ま、向こうが挑発してきたんだし、楽しそうだったし、いいんじゃない?
キツネ:それで?来るのか?来ないのか?
うさぎ:………。勿論行くよ♪
カラス:まぁ……こうなりゃ何人来たって同じだしね……イイよもう。
みんなまとめて夕飯作ってやる!
キツネ:自棄を起こしたな。
うさぎ:へへ♪ご馳走になりま~す!
――なんだかとても濃いどうぶつたちの住む森。
けれどもうさぎは、これからのここでの生活が、
ちょっと楽しみになりました。
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