「ばさらの森2」
――豆狸デパート
豆狸:良く来たな!好きなもんを選んでくれ。じゃんじゃん買っていくのだぞ!
柴犬:なんと!しばらく来ぬうちにデパートへ発展していたのでござるな!
豆狸:おぅよ!従業員も増やしたんだ。どうだ?うちの看板娘は。
ロボ:………。(ウィーンガシャ!)
うさぎ:なんというかその………ガードの堅そうな娘さんだよな、いろんな意味で。
豆狸:そうだろう!忠勝の接客は日本一よ!それで……ハブラシだったな。
それなら二階が生活用品売り場になっておるぞ。じっくり見ていけよ♪
リス:いらっしゃいだべ~♪いろんな家具さ、い~っぱい用意しただ。
たっくさん買っていってけろ!
うさぎ:あ、あぁ……けど、俺はハブラシを……
リス:こっちが雪だるまテレビ、こっちが雪だるまベッド、それでもってこっちが
雪だるまIHクッキングヒーターだべ♪
うさぎ:う、うん。いろんな種類があるのは分かったから。ハブラシを……
ネズミ:おっまえホント駄目だな~。お客が引いてるのがわかんねぇのかよ。
リス:むぅ……おら、一生懸命説明してるだ!
ネズミ:「ひとりよがり」だって言ってんだよ。お客が欲しいものを勧めなきゃ
買って貰えるものも買って貰えないんだぞ。
リス:うぅ……お客さん。おらのオススメは、迷惑だったべか……?
うさぎ:そんなことないよ!そっちのネズミさんもさぁ、言ってることは間違っちゃ
いないけど、女の子にそんな言い方はないだろう?俺、一生懸命な女の子は
大好きだよ。
リス:ほぉれみろ~♪
ネズミ:なんだとぉ!?調子に乗るんじゃねぇぞ餓鬼!
リス:おらのが二ヶ月年上だべ。
うさぎ:あぁもぅ喧嘩すんなって!
ネズミ:おい客!
うさぎ:呼び捨てかい……。
ネズミ:お前もいい加減なこと言ってないで、正直に言えよな!
お前の欲しいものはこの…………「もにもに歩く信長様ぬいぐるみ」だろ!?
うさぎ:………………………………うん?
リス:誰もそんなもの欲しがる奴いねぇべ。
ネズミ:此奴は欲しいと思ってる。眼を見れば分かるんだよ!な?
うさぎ:う、う~ん………。
白蛇:欲しい!欲しいですとも!
うさぎ:うぉ!吃驚した………
白蛇:アァァアアアアアァアっ信長公!何と愛らしいお姿でしょう!
これは私のために開発されたようなもの………単4電池も沢山そろえました……
これで信長公は、私と永久に……もにもにと死の舞を舞続けることになるのです!
さぁ、信長公を私の物にィイイイイイ!!!!!
ネズミ:ふざけんな。蒲焼きにするぞ、馬鹿蛇。
リス:天井からぶら下がるのやめてけろ。気持ち悪いべ。
白蛇:んふふふ………お褒めに預かり光栄ですよ、お二方………。
おや?客人は、この辺りで見かけないお顔……。
私は当デパートでヘアサロン「血まみれ」を営む者です。
最近は男子も毛先で遊ぶ時代……。いかがです……?
貴方の其のロングヘア……私が切り落として差し上げましょうか……?
うさぎ:遠慮するよ。つか、鎌でそんな繊細なヘアスタイル出来んのかよ……。
――市役所前
柴犬:ハブラシは買えたでござるか?
うさぎ:まぁね。店員が戦闘始めちまったから、自力で探したんだけど……
柴犬:某も買い物してきたのだ。もにもに歩くお館様ぬいぐるみでござる。
うさぎ:シリーズなんだ……それ。
柴犬:それからこっちは慶次殿に引越祝いでござる。服は何かと必要でござろう?
うさぎ:おぉ!ありがとな!………しかしこれ、変わったデザインだな。
白地に、黒いラインが縦横無尽に入ってて……。
柴犬:村で唯一の洋服屋のものでござる。警察犬と黒蛇の夫婦が経営して居る店で……
うさぎ:うぉおおおおお何コレ動いたぁああああああああ!!!!(怯)
柴犬:奥方の作る黒い手があしらわれたこの衣装は、「なんか生きてる服」として
秘かな人気を集めているでござるよ。気に入ったでござるか♪
うさぎ:も、勿体ないから、とりあえず仕舞っておくよ。……うん?
柴犬:如何した?
うさぎ:いや、あっちにも家具屋があるんだな~と思ってさ。
柴犬:おぉ!そういえば今日は金曜日!あちらは週に一度限定で出店される、
高級家具店「おくらや」でござるよ。
うさぎ:ちょっと覗いていってもイイか?
柴犬:うむ。ではご案内致そう。
――おくらや
黒猫:………。
ライオン:………。
うさぎ:うわ~……なんか入り口のトコ、思い切りヤンキーがしゃがんでるよ。
深夜のコンビニじゃねぇんだからさぁ……。
黒猫:………?
うさぎ:げ。目があった。
黒猫:Ah~?何見てんだコラ。(すぱー)
うさぎ:そりゃ入り口にいるんだから見ちまうっての。
そんなとこで喫煙はマナー違反って奴じゃないのかい?
黒猫:五月蠅ぇな。こちとら携帯灰皿常備してんだよ。何処で木天蓼吸おうが勝手だろ。
うさぎ:木天蓼かい……
黒猫:うちに帰ると、でっけぇドーベルマンがわんわんきゃんきゃん言うからよぉ……。
焼き葱とか吸わされんだぜ?やってられるかってんだよ。
ライオン:おい。一応こいつ客だろ?追い返したら元就に文句言われんぞ。
黒猫:お前はバイトだからな。俺だって屯してるだけで一応客なんだから、
文句言われる筋合いはね……ん?
柴犬:今晩和でござる♪
黒猫:HA!幸村じゃねぇか!なんだ、勝負しにきやがったんなら早く言えよ♪
楽しもうじゃねぇか。Nya-ha!!
柴犬:むぅ………今日は面倒くさいでござる。
黒猫:………(沈)
ライオン:久しぶりだな幸村。うちの家具買ってくのか?
柴犬:某ではなく、此方の御仁の買い物でござるよ。
うさぎ:こんちわ~♪
ライオン:おぉ!お前が噂の新入りか!
うさぎ:へ?俺、噂になってたの?
ライオン:ハハッ!この街の野郎共のこたぁ、俺がまとめて面倒見てやってるからな!
お前も今日から、俺をアニキと呼んでくれて構わないぜぃ♪
うさぎ:は、はぁ……
キツネ:気にするな。阿呆の戯言だ。
うさぎ:ん?
ライオン:お~、元就!客が来たぜぃ。
キツネ:見れば分かるわ、戯け。………。(見)
うさぎ:な、何だよ……。
キツネ:貴様は……本物とはなんだと思う?
うさぎ:はぁ?
キツネ:此の世にあるものは全て「本物」と「紛い物」に分けられる。
真実の目……即ち心眼を持つ物だけが、本物の価値を見極め、
手にすることが出来るのだ。
うさぎ:???
キツネ:付いてくるが良い。
――店内
うさぎ:………。何?この、おっさんの絵。
キツネ:これは彼の有名なシスレーやミレーと並び称された巨匠、
ザビー様の作品だ。それが今なら破格の「さんきゅっぱ」で手に入る。買え。
うさぎ:命令形かよ……。「さんきゅっぱ」って……3980円?39800円?
キツネ:3億9千8百万だ。
うさぎ:いらないよ………つか、そもそもびた一文出したくないよ。
キツネ:何を言う!貴様にはこの慈愛に満ちた表情を愛でる気持ちがないというのか!?
しかもこの作品は、鑑定書付きの完璧な本物!これを買わない手は無かろう!?
ライオン:つかその鑑定書、お前が昨日パソコンで俺に作らせた奴じゃん。
絵とか、一昨日クーピーで描いてた……
キツネ:焼け焦げよぉおおおおおおおお!!!!!
ライオン:ぐふぉっ!!!
キツネ:……ふん。戯れ言などに耳を貸すな。さぁ、心眼で見るのだ。心眼で。
うさぎ:うぅ………(困)
――店外
黒猫:だからよぉ、お前からもアイツに言っておいてくれよ。
柴犬:何をだ?
黒猫:俺とお前の勝負は真剣勝負。母親の出る幕は無ぇんだ。だから………
家の周りに水詰めたペットボトル並べるのをやめろって。
柴犬:あれが猫よけになるというのは、迷信ではなかったか?
黒猫:精神的に来るんだよ、あの手の嫌がらせは。そりゃこの前部屋の中で勝負した時
冷蔵庫を粉微塵にしたのは悪かったよ。けどだからって……
柴犬:おぉ!帰ってきたでござるよ。
うさぎ:あれ?なんか……こっちも取り込み中?
黒猫:けっ。お前にゃ関係ねぇよ。
柴犬:買い物は出来たでござるか?
うさぎ:い、いや……なんとか買わずにすんだよ……。
柴犬:む?………おぉ!なんと!もうこんな時間でござるな!
黒猫:なんだよ。もう帰るのかよ。
柴犬:佐助が鳴くから帰るでござる。
うさぎ:あぁ、カラスだからか……。あ!俺、市役所よらなきゃ!まだ開いてるか?
黒猫:うちの市役所は二十四時間営業だぜ。
うさぎ:へ~、進んでんなぁ。じゃあ幸村、案内ありがとな!
柴犬:うむ!また遊ぶでござるよ~。
――市役所
蝶々:はい。これで引っ越しの手続きは完了。貴方も晴れて、この村の一員よ。
うさぎ:ありがとな♪それにしてもお姉さん綺麗だな~。今度誘っちゃってもイイ?
蝶々:ふふっ、面白い子ね。………後にいる、大きな狼の姿が見えるかしら?
うさぎ:へ?ああ、見えるけど?
蝶々:彼が私の主人で、村長。噛み殺されて金色の髑髏を晒すだけの勇気があるのなら、
是非誘いにいらっしゃい?
うさぎ:う、うわぁ……(苦笑)
蝶々:あ、そうそう坊や。明日のドングリ祭り、貴方も参加する?
うさぎ:ドングリ祭り?
蝶々:秋の風物詩……って言えば聞こえは良いけど、ようは村の親睦会みたいなものね。
集めたドングリの数を競い合って、一番多かった人にトロフィーと賞品。
単純で和やかなお祭りよ。
うさぎ:へぇ~。友達をもっと増やせそうだな。あぁ!参加するよ!
蝶々:そう。じゃあ今夜の内に、頑張って武装なさいね。
うさぎ:わかった!……って、え?武装?
蝶々:ふふっ。おやすみなさい。
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