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戦国BASARAの二次創作文。 政宗、幸村、佐助、元親、元就が中心。 日々くだらない会話をしてます。
Posted by - 2025.01.22,Wed
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Posted by 今元絢 - 2009.07.07,Tue
アンケート3位、「追い追われ(光秀と織田ファミリー)」・鬱展使用

・光秀と濃姫様中心で、信長公は全くと言ってイイほど出てきません。
・幼少……とまで行かなくとも、若い頃の捏造があります。側室とかもちらっと居ます。
・死ネタあり。くらいです。

以上ご理解いただけました方は、読んでやってくださいませ。

――貴方がやったんでしょう

凛と、響く声。
振り返ると、見知った顔が、此方を見据えている。
何か言いたげに、それでも口を引き結んだまま、
微かな怒りをその目に湛えて。

「おや、帰蝶。何処ぞにお出かけですか?」
乾いた、音が響いた。次いで流れる、火薬の香りと細い煙。
銃弾に舞い上がった髪が、静かに肩に落ちた。
「怖い怖い……一体何処から持ち出したんです。
 西洋武具など、おなごが振り回すものではありませんよ……?」
「質問に答えなさい!」
あどけなさの抜けきらぬ顔が、苛立ちで歪む。
癇癪を起こしたのか、つかつかと此方へ歩み寄り、ずいと睨み上げてきた。

久方振りにこの家に立ち寄ったのだが、また随分な歓迎が待っていたものだ。
この姫は、自分の従兄弟に当たる。
彼女と織田の跡取りとの縁談が決まり、家内はその準備に慌ただしい。
一応自分は客人になるはずなのだが、殆ど放置の状態だった。
身内でもあるし、無理もなかろうと中庭を一人歩いていれば、
昔馴染みからの銃弾が襲ったという次第だった。
「貴方の仕業でしょう、光秀。」
「だから、何の話です……。」
「とぼけるんじゃないわ!打ち掛けに決まっているでしょう!」
「打ち掛け……。ああ、あの……」
そういえば、何処かの部屋に見事な打ち掛けが飾られていたのを見かけた記憶がある。
「上総介様の元へお持ちする大切な品。それを、よくもずたずたにしてくれたわね……
 同じ目をみせてあげるわ!」
銃口が此方を真っ直ぐに見つめる。
僅かに頬を膨らませたその顔を見ながら、小さな溜息を付いた。
その反応が気に入らなかったのか、銃口がさらに近付いたが、捨て置くことにした。
「一体どういう理論の元、私に辿り着いたんですか……?」
「いつだってそうじゃないの!私の大切なものは、みんな貴方が壊してしまうのよ!」
はて……?そのようなことがあっただろうか?
「よくもまぁ首をかしげられたものね!私が大切に育てていた花を引き抜いたでしょ!」
「あれは、貴女が水をやりすぎて根腐れしていたからです。」
「私の飼っていたホトトギスを握り殺したでしょう!」
「あんなに脆いものとは思わず………不可抗力ですよ。謝ったじゃないですか。」
「私が父上の為に一生懸命に折った鶴も、みんな燃やしてしまったじゃない!」
「折り鶴だったんですか……?どう頑張っても鶴には見えなかったもので、
 てっきり紙くずだと思いましたよ……」
「ふざけるんじゃないわ!」
姫はぎりりと歯ぎしりする。余程腹が立ったらしい。
あまり遊びすぎて、うっかり引き金を引かれては流石にたまらない。
膝を付いて視線を合わせ、諭すように声を落として言った。
「何故、私がそんなことをしなければならないんです……?」
「……っ。」
「そんなことをしても、私には何の得もないでしょう……?」
姫は何か反論しようと口を開きかけたが、そのまま目を伏せ、銃をおろした。
「だって………言ったじゃない。」
「……?」
「だって……この前来た時……貴方、言ったじゃない。」
この前来た時。そういわれて、記憶の糸を手繰る。
確か、姫の縁談を聞かされたのはその時だった。
そういえば、その時……
「尾張のうつけに嫁がされるなど、不憫なことですね………と言ったこと、ですか?」
「………。」
姫はまた、酷く不機嫌そうに顔を歪めた。
「打ち掛けが無くなれば、縁談が壊れるかもしれない。
 そう考えて、私がそれを引き裂いた……と?」
「貴方がどう考えたかなんて知らないわよ!」
姫は顔を真っ赤に染めながら、再び銃を振り回した。
幼い頃から気性の荒い娘ではあったが、今日はまた一段と大暴れである。
それも無理からぬ事であろうと思いながら、その手を押さえた。
「まったく、おめでたいですねぇ……」
「だ、誰が……っ!」
「勿論、貴女がですよ。」
「光秀ぇぇ……」
「一国の主の、正室となる。実にめでたいじゃありませんか……。」
「っ……。」
何とか声を飲み込んでいるが、微かな落胆を湛えた顔には、「そっちか」と書いてある。
実にからかい甲斐のある、良い反応だ。
成程、こんなに面白いモノを、他人にくれてやるのは惜しい、
という感情も、在ったやも知れない。しかし、
「生憎私は、其処まで気の回る人間ではありませんよ………」
喉の奥から押し殺した笑いを漏らすと、姫は手を振り解いて、不機嫌そうに着物を整えた。
「じゃあ、誰の仕業だって言うのよ。」
「そうですねぇ……野良犬でも迷い込んだんじゃないですか……?」
姫は小馬鹿にしたように鼻で笑う。
「此処を誰の屋敷だと思ってるの?門には衛兵、城壁も絶えず警戒されている。
 鼠一匹、入り込む事なんて出来やしないわ。第一……」
其処まで言って、姫は言葉を切った。
悠然と、自分たちの前を横切っていく存在。
見事な織物の切れ端を歯に引っ掛けたままの、野良犬の姿を見て。
「………。」
長く、気まずい沈黙が、流れる。姫の咳払いが、漸く其れを破った。
「さぁ、父上の処へ戻らなければ。」
「犯人扱いされて、私は放置ですか……?」
「五月蠅いわね。誰にだって間違いはあるでしょう!」
「…………。そうですね。ただしそれには……
 許されるものと、そうでないものがあります……」
訝る姫を捨て置き、犬に近付いた。
それはぴくりと反応し、警戒するように唸る。牙を剥くその首に、刃を翳した。
「み、光秀!何をしているのよ!」
「何って………処罰ですよ。婚儀の重要な貢ぎ物である打ち掛けを、
 見るも無惨に引き裂いた。畜生といえど、捨て置くわけにはいきませんからねぇ……」
姫は慌てて駆け寄り、犬を抱いて此方を睨みつけた。
「何も殺すこと無いでしょう!」
「貴女、さっき私の頭をぶち抜こうとしてたじゃないですか……」
「犯人って言っても、動物は別よ!」
「人も動物なんですけどねぇ………」
諦めたように首を振って見せ、刃を納めた。姫は小さく息をつく。
犬は事の次第が分かってでも居るかのように、姫の懐に大人しく顔を埋めている。
姫はその口元から打ち掛けの端切れを取ってやると、何処で擦り剥いたのか、
小さな傷のある犬の前足に結びつけた。
そのままそれを抱きかかえ、またも此方をにらみつける。
「この子は私が面倒をみます。貴方はさっさと帰りなさい光秀。
 この忙しいのに、貴方みたいなのがうろうろしていると苛つきます。」
「本当に……歯に衣着せぬ御方ですねぇ……。では、武具は、私がお預かりしましょう。」
姫はぴくりと眉を寄せた。どういう意味だとでも言いたげな表情で。
「勝手に持ち出したのでしょう……?お父上にお返しせねばねりません……。」
「これは!私が父上に戴いたのよ!」
怒りもあらわに、姫は言った。
「………。おや。」
「尾張のうつけが、本にうつけと思うたならば。当家に徒なすうつけとなり得たならば。
 私が直々に、引導を渡します。」
銃を握るその手には、一筋の迷いも見られなかった。
まるで幼い頃から連れ添った友であるかのように、いとおしげに其れを握る。
「逞しい御方だ……。私の取り越し苦労でしたね………。」
「何?」
「いえ、何も。」
姫は不思議そうに目を細めた後、気にせぬと決めたようで、犬を抱えたまま振り返る。
「行きましょう、犬五郎。」
「なんですか、それ。」
「名前よ。当たり前でしょう。」
「………。帰蝶も大概ですね……。」
「何がよ!」
「いえ。」
「…………。ふん、光秀。」
「はい?」
顔を上げると、額に銃口が当てられていた。
「私は私のやり方でこの乱世を生き抜いてみせる。何処にいてもね。」
「………。……はい。」
「また貴方が私の大切なものを壊しに来たら………」
姫は、銃を撃つ振りをして見せた。
「その首、私が飛ばしてあげるわ。」

嗚呼、この娘は、本当に――

「これは、これは。楽しみですねぇ。」
恐れ戦くのを期待していたのか、姫は不満そうに口を尖らせ、
そのまま踵を返して去っていった。
欠片の迷いもなく、尾張の虚けの元へ。
「私……またお邪魔しに行くなんて、言いましたかねぇ……。」
呟いて、笑みが漏れた。行ったら行ったで、帰れと罵るのだろうと思いながら。
足下には、打ち掛けの端切れが落ちていた。
手当をしてやったつもりで、ろくに結べていなかったらしい。
「犬五郎も……分かっていませんねぇ……。中身の無いものを引き裂いても……
 何も面白くないでしょうに………」

「まったく、こんな形でやってくるとはね……」
姫は相変わらず不機嫌そうな顔で、深々と溜息を付いた。

織田信長への士官が正式なものとなり、この城に参じた。
あの者の持つ深い闇色に魅せられ、酷く気分が良かったのだが、
ふと思い立ち、姫の元へ立ち寄ってみた。
部屋の奥からは、心の底から迷惑そうな溜息が聞こえたが、
なんとか奥へ通してもらうことが出来た。
「ご機嫌麗しく、濃姫様………」
「止めて頂戴。虫酸が走るわ。…………。………蘭丸君。」
姫の言葉に、部屋の隅に控えていた小姓が応じる。
「上総介様に、少し遅くなると伝えてもらえるかしら。」
「え……。えぇ……でもぉ……」
小姓は不満そうに唸った。その目は明らかに、自分の存在を警戒している。
と、言うより、幼き日の姫の「さっさと帰れ」という時の視線そのものだった。
「大丈夫よ。見た目以外は害はないから。」
「相変わらずですねぇ……帰蝶。」
小姓はまだ唸っていたが、渋々部屋を出て行った。
「それで?」
姫は上座から値踏みするように此方を見た。
「それで、とは?」
「何の用だって聞いてるのよ。」
「随分ですねぇ……。用がなければ、昔馴染みの姫君に挨拶も出来ないのですか……?」
「………。軽々しく『馴染み』だなどと言わないで欲しいわ。そうでなくとも、
 貴方は得体の知れぬ新入りとして、家臣達から警戒されているのよ。
 ろくに知りもしないのに身内面されて、他の者にあれこれ聞かれる
 私の身にもなってほしいものね。」
「これは失礼……。」
笑みが、漏れた。
軽く頭を下げてから、改めて顔を上げる。
「かなりのご活躍だそうですねぇ……。このお部屋も……その智略に対する褒美……
 と言った所でしょうか……?」
「………さぁ。」
姫はぐるりと部屋を見渡した。広く、がらんとした、その部屋を。
「どうかしらね。」
庭を飛び交う鳥の声が、五月蠅いほどに響く。
姫の傍らに置かれた銃が、夕刻の明かりを吸って、鈍く光っていた。
「本当は………貴女に一つ、謝りたいことがあって参りました……。」
「謝りたいこと?」
姫が訝しげに眉を寄せる。
「私が潰したホトトギス………覚えていますか?」
「……ええ。………。まさか……アレは態とだなんて言い出すんじゃないでしょうね?」
「いえ………そうではありません……」
鳥の声が、一層喧しくなった気がした。
「貴女が見せてやると籠から出したので………そのままうっかりを装い、
 逃がしてしまおうと思っていたのです………」
姫は驚くでもなく、淡々と言った。
「………。………どうして?」
「空を舞う者を籠に収めるは、少々哀れという気がしたものですから……。」
庭の音が不意に消え、静寂が部屋を包んだ。
「まぁ……誤って……潰してしまったのですがね。」
姫は何ら感情を見せることなく、ゆっくりと瞬きして、「そう」と言った。

部屋を出ると、敵意をふんだんに盛り込んだ視線が待ちかまえていた。
あの小姓だ。知らせに行くと見せかけて、廊下に居たらしい。
「お前、濃姫様と何話してたんだよ。」
「大した話ではありませんよ。それより……蘭丸、と言いましたか?」
「な、なんだよ!」
「此処は………何処でしょう?」
「はぁ?濃姫様のお部屋に決まってんだろ!」
「いえ、それは分かっているのですが……元居た部屋への戻り方が分からなくなりました。」
小姓の口が、妙な形に歪んだ。呆れているらしい。
「馬っっっっっっ鹿じゃねぇの!」
小姓は大きく舌打ちした。
その後も、よくもまぁ出てくるものだと思う量の罵りが次から次へと飛んできたのだが、
一応、前を歩いてもらえるので、彼が道案内になっていた。
「大体、お前みたいな奴が信長様の………」
小姓の足が、不意に止まった。
その視線の方へ目を向ければ、廊下を横切っていく人影がある。
数人の女達を従えた、女だ。此方に気付くと小さく会釈をし、そのまま去っていく。
「あれは……?」
「吉乃様。」
小姓は微かに口を尖らせながら言った。
「ああ……信長公の………。確か、お子も数人いらっしゃるとか。」
「そーだよ。だからああいう待遇受けてんだろ。」
「………。嫌いなんですか……?」
小姓は相変わらずの表情のまま言った。
「いや。どっちかって言うといい人だと思う。金平糖もくれるし。」
「そうですか、ならば良いのですが………。」
「うん………でも………って、お前に関係ないだろ!」
思い出したように食って掛かられても、どう反応して良いものやら。
小姓は再び悪態をつきながら、廊下を進んでいく。
「そういえば……帰蝶は犬五郎を連れてきませんでしたか?」
「いぬごろー?」
小姓は首をかしげた。
「嫁ぐ際に、連れて行ったはずなのですが……姿が見えないもので。」
「ああ、濃姫様の犬か。去年だっけかな?死んだよ。」
事も無げに、小姓は言った。
「病ですか?」
「いや、濃姫様が殺したの。」
寸の間、静寂が襲った。鳥の羽ばたく音が、大きく聞こえた。
「あの馬鹿犬、信長様が嫌いみたいでさ、ぎゃんぎゃん吼えてたんだけど。
 ついに文字通り「食って掛かった」訳。それで濃姫様がね。
 まぁ、信長様はどうでもイイみたいだったけど。」
小姓は、その時の姫の様子をまるで武勇譚のように語り出した。
その時になって初めて、庭で五月蠅くなく鳥が、不如帰なのだと気付いた。
「なぁ、光秀。」
顔を下からのぞき込まれ、我へと返る。
「お前、どうせ暇だろ?」
「はい……?私はこの後、謁見しなければならない方が山程……」
「蘭丸が遊びに付き合ってやるよ。来い!」
背に負っていた弓を手に取り、小姓は駆けだした。
これも姫の教育の賜かと溜息を付いてから、その後に続いた。


――貴方が、やったんでしょう

それは、金切り声に近いものだった。
解れた髪を振り乱し、口を微かに開いたまま、ゆらりゆらりと。
目は酷く赤く、刺繍の施された着物も、裾がくすんで焼け焦げていた。
焼け落ちる寺の中、降り来る火の粉に目もくれず、姫は虚ろに歩み来る。
「見て、しまわれたのですか……。」
零れる笑いを押し殺すことが出来ず、喉の奥が鳴る。
此処に辿り着くまでに、恐らく姫が目にしたであろう、あの小姓を思うて。
「何故……何故なの……?あの子は………あの子は貴方に話を……」
「魔王の子と呼ばれても、所詮は子ども。実に甘く、浅はかな考え方です………。
 まぁ、立派なものでしたがね。泣き言一つ言わず………。………いえ。
 親と慕うていた貴女方の名を呼んだは……彼なりの泣き言だったのやもしれませんね。」
「…………。」
何も言わずに、ただ凝視していた。炎を纏うた風が、姫を撫でていく。
「………ふふ。」
その口元が、微かに歪んだ。姫は、弾けるように笑い出す。
風も、爆ぜる音も掻き消して、その笑い声は夜闇に美しく響いた。

ほら、やっぱり。中身のある方が、こんなにも面白い。
あの禍々しい闇色にもうすぐ触れられると思うと、身が震える程の歓喜が襲う。
だが、これはこれで、前座にするにはあまりに惜しい。
そう思うて見て、長らく此の姫に感じていた、他とは違う感覚に気付く。
嗚呼、きっと、「昔馴染み」とは、こういう………

「言ったとおりでしょう?いつも壊すのはお前。でも……もう壊されて
 泣きじゃくるだけではないの。」
二つの銃口が、此方を見据えた。
「今度は、約束通り、私が壊してあげる。」
両の目を見開いたまま、その口元が笑みの形に歪む。
「血族とは恐ろしい者ですねぇ……」
低く呟き、同じ顔で、笑った。
「さぁ、舞いましょう………帰蝶。」
その羽が、ふわりと翻った。
 

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