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戦国BASARAの二次創作文。 政宗、幸村、佐助、元親、元就が中心。 日々くだらない会話をしてます。
Posted by - 2024.11.26,Tue
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Posted by 今元絢 - 2008.03.05,Wed

――脳内鬱展祭り開催中

政宗:あ?何が開催中だって?
佐助:鬱展は懲りたって言った側から……何処迄もいい加減な人だよ。

――いろいろあるのですよ、事情が。
  という訳で、注意書き。

・3月3日の「捏造!大阪夏の陣」を先に読んでいただけると有り難いです。
 (その没ネタなので…)こっちは佐助の視点。展開は大分違います。
・前回と同じ部分は省いてますので、回想が多く、ややいつもと文章の形態が違います。
・どろどろに暗い上に、痛そな表現もちらほら。苦手な方はご注意下さい。

幸村:始まりでござる~♪
 


――「あの時、ちゃんとくたばっておくんだった」と、後悔してる。

幸村:佐助っ!!!

紅い飛沫が舞って、辺りが闇に包まれて

幸村:佐助……佐助っ!!!返事をするのだ!!!

何度も、何度も見てきた、その紅色。
昔は誰かの紅を浴びる度、何だか酷く汚れた気になって、必死に落とそうとしていた。
それが黒くなって、こびり付いて、もう離れないと分かったら、
そのまま染まって生きるのも、悪くないかと思うようになった。
でも、紅は嫌いだった。ずっと嫌いな色だった。

――あの暑苦しくて真っ直ぐで、危なっかしい「紅」に会うまでは。

どうせろくな死に方をしないだろうと思ってた。
だから、寧ろ幸運だと感じたんだ。
主を庇って死ぬ。忍としては、これ以上無いくらい恰好良いだろう?
でもアンタは、それを許してくれなかった。

右肩から脇腹にかけて奔る、灼けるような痛み。
そういえば、足もあまり言うことを聞かない。
「なんだよ、死んでもこんなしんどい思いをしなきゃならないのか?」
そう思って目を開けると、何とも情けない顔が其処にあった。
その顔を見て、ああ、生き延びちゃったんだと、理解した。
昔、仕え始めた頃、よくそうやってベソかいてたよね。
いつからだっけ?泣き出す度に、宥めてやらなくて済むようになったの。
あ~あ、洟垂らすなよ。みっともないなぁ、まったく。

佐助:旦那……アンタ、いくつだよ。なんつー顔してんのさ。
幸村:……佐助?佐助っ!!!起きたのでござるなぁぁあっ!!!
佐助:……っ……いきなりの大声は止めてくれよ……。結構傷に響くんだって……。
幸村:お、おぉ!すまぬ!……その……大丈夫でござるか?
佐助:なんとか現世に踏みとどまったみたいだね……。
   いや~、俺様もてっきり死んだとばっか思ってさぁ、
   こりゃ極楽で綺麗なお姉さんと遊びたい放題~って思ったら旦那だもん。
   ちょっとがっかりしちゃったよ~。
幸村:………すまぬ。
佐助:いや……そんな殊勝に謝られる事じゃないんだけどな。
幸村:某が未熟故……そなたを失うところであった……。すまぬ……
佐助:……あ、なんだ、そっちか。
幸村:な、なんだとはなんだぁぁっ!!!!どれだけ心配したか分かっておるのか!?
佐助:あ~、はいはい、御免って。大声は勘弁してよ……
幸村:お?おぉ、そうであった!すまぬ!

その謝る声もでかいんだってば。その言葉は、一応飲み込んでおく。
……そういえば、ここは本陣だ。敵方追撃部隊を撃破して、攻め込もうとする途中。
伏兵の中に飛び込み、真田隊は混乱に陥った。
まぁその中で、俺様もこんな状態になった訳だけど。
結局あの後、どうなったんだろう?旦那が呑気に俺の横なんかにいる所を見ると、
上手く切り返したんだろう……と、信じたい。
改めて目をやると、なんかもの凄い、見てる。こっち見てる。……気迫が怖いんだけど。

佐助:旦那……落ち着かないから、あんまりじぃっと見ないでくれる?
幸村:そ、そうでござるか?

少々不満そうに向こうを向く。なにも後ろを向けとは言ってないんだけどな。
素直というか、極端というか。珍しく溜息でも付いたのか、その肩が軽く下がった。

幸村:本陣は守りきったぞ。敵方もこの退却により、直ぐには動けまい。
   まだ不利な状況は否めぬが、可能性を失ったわけではないぞ。

こっちの思考を読んだかのようにそう言った。
可能性……ね。そう信じてなきゃ、こんな戦、やってられないもんな。

佐助:そいつは何より。……ってことはさ、俺様相当寝てた?
幸村:明け六から、ずっとでござる。

うわ、そんなに寝てたの何年ぶりだろ。そりゃ戦況も動くわ。

幸村:ずっと……動くことも……声も出さず……まるで……もう……起きぬかと……
佐助:ちょ、え、旦那!?……わかったから!悪かったよ!回想させて御免!
   もう大丈夫だから、ちゃんと洟かんで。
幸村:うぅ……

旦那は手近にあった布を取り、顔を拭ってから、ずびぃっと洟をかんだ。
……って、それ俺様の着物じゃん。もう血みどろで使い物にならないから良いけどさ……。

佐助:旦那はこの戦を左右する存在なんだぜ?自軍の大将がそんな顔じゃ、
   兵達が不安になるでしょうが。ベソなんかかいてちゃ、大将失格。
幸村:そうさせているのは佐助だ。
佐助:う……。あ~……成る程。主にこんな顔させてちゃ、俺様も忍失格かぁ~……。
幸村:こ、こんな顔だと!?ば、馬鹿にしておるのか!?
佐助:鏡で見てみなって。相当面白い顔してるよ。

言われてアタフタ鏡を探し出す。ホント、からかってると飽きないなぁ。
漸く見つけた鏡に向かって、吠えたり、顔を叩いてみたり、睨み付けてみたり。
なんか気合いを入れてるらしい。暑苦しい百面相。よくそんなにころころ変わるよね。
やがて満足したのか、こっちへ戻ってきた。さっきまでの捨て犬みたいな顔とは違う、
一軍団を率いる、大将の顔に戻って。

幸村:佐助は……庭にあった柿の木を覚えておるか?
佐助:……は?

なんでいきなり昔話?訝る俺に、旦那は勝手に話を始めた。
佐助に出来て、自分に出来ないのが悔しいって、知らぬ間に木登りの練習なんか初めて。
「見よ、一番駆けでござる~」なんて言って、てっぺんから転げ落ちて。
そりゃ覚えてるよ。こっちは心臓止まるかと思ったんだから。
でも、何で今?旦那はどっちかっていうと、昔話は嫌いだろ?
何かやらかしちゃあ泣いてた頃を、俺様が持ち出して、からかうからさ。
それを今日は、嬉しそうに自分から話している。
妙なこともあるもんだ。そう思って、相槌を打っていた。
昔話は、随分長々と続いた。周囲が戦場だということを、忘れるほどに夢中になった。

――それは酷く懐かしくて、楽しくて、悲しかった。

明くる朝、旦那は敵陣に突撃を仕掛けると兵達に言った。
自軍の兵は、たったの五百。分の悪すぎる賭けだ。
無論、止めた。無茶、無謀。死にに行くようなもんだって。
すると旦那は、淡々と策を説明し始めた。少数精鋭の部隊で、敵陣を貫く方法。
堅固な守りに見える本陣にも、僅かな隙があること。
確かに、それは可能な策にも見えた。でも、あくまで可能性。
失敗する確率の方が、遥かに高い。

佐助:何度も言ってるだろ!?アンタが倒れたら、この戦は終わりなんだよ!
幸村:だからこそ、行かねばならぬ。某以外の人間に、この策は不可能でござる。
佐助:他にも方法はあるだろ?相手は余裕かまして、三日分しか兵糧を用意してないんだ。
   長期戦に持ち込めばなんとか……
幸村:それが叶わぬことくらい、お主にもわかっておろう。
佐助:……。

分かってる。もうすぐ敵は、痺れを切らして突撃してくるだろう。
あの軍勢を止める手だては、無い。向こうが少ない被害で済まそうとしている内に、
此方を過小評価している内に、なんとかしなければ。
主要な味方が殆ど残っていない今、一番賢いのは、旦那の言うような方法だって。

佐助:じゃあ……俺も行くよ。
幸村:何を言っておる。そなたはまだ傷が癒えておらぬぞ。
佐助:行く。どうせ一度は無くした命、大して惜しくも無いしさ。
幸村:そんな事は許さぬ!そんな状態で動けばどうなるか分かっているであろう!?
佐助:じゃあ黙って見送れってのかよ!冗談じゃない……ここまで来といて、
   置いてけぼり喰うなんざ御免だ。俺はアンタに付いていく。
幸村:歩くことも儘ならぬ状況で何を言う!
佐助:自分だって手負いのくせに偉そうな事言ってんじゃねぇ!
   勝手に人を生かしておいて自分は死にに行くってか?巫山戯た事言う……
幸村:足手纏いだと言っておるのだ!!!
佐助:っ………。
幸村:………。………すまぬ。だが、お主を連れて行くわけには行かぬのだ。
   此処に残れ、これは命令だ。

卑怯だ。「命令」という言葉に、逆らえないのを知っているくせに。
分かってる、付いていっても、何の役にも立たないことぐらい。
分かってる、意地で突入を仕掛けようなんて、思っていない事ぐらい。
出来る限り多くの味方が生き延びられるよう、僅かな可能性に賭けたいのだと言う事を。
それなのに自分が付いていこうとするのは、馬鹿以外の何でもない事も。
怒鳴った所為か、また灼けるように傷が疼き出す。
冷たい震えと、微かな痺れ。立っているのも、少し辛い。
この傷が憎い。どうせなら何も知らぬ儘、自分を消し去ってくれればよかったものを。
何故今、自分を押し留める。何故、自分を永らえる道に取り残す。

幸村:何という情けない顔をしておる。佐助こそ、いくつになるのだ?

茶化すようにそう言った。昨日の、俺の言葉を。
冗談のつもりかもしれないけど、笑って言う事じゃないっての。

幸村:そんな顔をせずとも、俺は素直に敗れる気など無い。安心しろ。

無理言うなよ。

幸村:嘘ではない。そうだな……証拠にこれを預けるでござる。

そう言って旦那は、俺に何かを手渡した。――六文銭。
いつも首から提げているもの、真田の旗印だ。

幸村:六文銭は不惜身命の教えを表すもの。三途の川の渡し賃とされるそれは、
   いつ何時命を落とすことになろうとも、一歩も退かぬ覚悟を示しておる。
佐助:………なんで、これを?
幸村:渡し賃を預けてしまうのだ、某は死ぬ訳にはいかぬ。佐助の言うように、
   この戦の命運は、真田隊に委ねられておる。無論、一歩も退かぬ覚悟で臨むが、
   それで壊滅し、本陣を崩されては元も子もない。
   ………そなたの元へ帰る、必ず。勝利を手にしてな。
佐助:………。

何言ってるんだか。こんなの、何の証拠になるってんだよ。
ずっと提げてる所為か、銭はすっかり擦れて、元の文字も分からない。
それでも軽く握ってみると、金属のぶつかる、いい音がした。

――「行って参る。」

そう言って、旦那は出ていった。
「いってらっしゃい」と言う気には、とてもなれなかった。
傷の痛みに耐えながら、ただ其処に突っ立って、見送るだけしか出来なかった。


――真田隊が本陣に到達し、家康に自害を覚悟させるまで追い詰めた事。
  しかし、討ち取るには及ばず、退却を余儀なくされた事。
  そして………天王寺近くの神社で兵を看病していたところを襲われ、
  越前松平勢に首を捧げた事を聞いたのは、翌日昼過ぎのことだった。


忍に、固い絆なんてものは存在しない。
不安定な「信頼」より、大事なのは「契約」と「報酬」。
主を守るのは、死なれちゃおまんまの食い上げだから。
利を感じる者には擦り寄り、用が済んだら平然と斬り捨てる。
それが忍。
だから旦那も、そう簡単に「信じる」なんて言うもんじゃないよ。
何度もそう教えたのに、「熱き信頼」とやらを叫ぶことは、一向に止めてくれなかった。
昔から、人の言う事なんて全然聞いちゃくれないんだ。
何度も止めるように言ったのに。「嘘をつく」ことも。

佐助:何が証拠だよ……。叱られまいと適当な事言って誤魔化す癖、治ってないね。

手にした六文銭を握ると、相変わらず甲高い、いい音を立てる。
金属特有の匂いがして、少し血の匂いに似ているなと思った。
傷はまた開いているらしかった。これだけ走れば、無理もないだろう。
でも、取り立てて何も感じなかった。ただぼんやり、温かいだけ。

佐助:さて、行きますか。

――俺はアンタから銭を受け取った。
  だから、これは契約。帰りを待つ、そういう契約。
  アンタがそれを守れないっていうんなら、こっちから守らせるまで。
  一度受けた仕事は、最後までやる性分なんだよ。

助けてくれと、泣きながら懇願する男。
みっともない姿を晒すくらいなら、最初から道を阻んだりしなけりゃ良い。
その傍らに、無数に「ある」のは人間。
多分、胴体と首が離れたことも気付いてないだろう。
間抜け面の儘、転がっている。馬鹿な奴等だ。

衛兵:貴様!生きて帰れると思うな!

背後から、一際大きく響く声。向けられていた銃口は、二十を超えているだろうか。
城の中だってのに、豪気な出迎えだ。そんな口上を述べる前に、撃てばいいのに。
ほら、そんなことをしてるから、隙が出来るんだよ。
銃声の間を縫って、衛兵共を斬り捨てる。
其奴等は呆気にとられたまま、声すら上げずに倒れ伏した。
……あれ、数発喰らったかな?まぁ、大した問題じゃないか。
それより、早く探さないと。
悲鳴を上げる兵達を掻き分けて、更に城の奥へ、奥へ。
最後に開いた襖の向こうには、すっかり震え上がっている男が居た。
血走った目で此方を見つめ、来るなと言うように手を翳している。
尋ねるのも馬鹿らしくなるくらい、情けない姿だった。

佐助:あんたが、この城の主かい?
武将:だ、誰の手の者だ!私は……此処でむざむざ殺されるわけには……
佐助:アンタの命なんざどうでも良い。俺はただ、迎えに来ただけさ。
武将:む、迎え……

男はそこで言葉を切った。何かに気付いたらしい。
俺の手元を、恐怖の面持ちの儘、じっと見ていた。

武将:貴様……真田の……

腕に絡ませた六文銭。成る程、それで気付いたわけだ。
でも、余計なことは言わなくて良いんだよ。
アンタの口から名前が出るだけで、虫酸が奔る。

武将:と、隣の、部屋に……。首実検も済ませ、身内の者へ返そうと思っていたのだ……

最後まで聞かず、隣の部屋へと続く襖を開けた。
背中を見せたことに隙を悟ってか、男の側近が動く気配を感じる。
しかし男が「行かせてやれ」と、それを留めるのが聞こえた。

狭く、薄暗い部屋。ぽつんと置かれた、蓋付きの桶。
近くに寄って腰を下ろすと、真新しい木の匂いがする。
黙って、蓋を開けた。たった数日顔を合わせなかっただけなのに、
それは酷く、懐かしい気がした。

――「おかえり」

呟いて、首桶を抱き竦める。
繋いでいた紐が脆くなっていたのか、腕に絡ませてあった銭が、
甲高い音を立てながら、床にバラバラと散らばった。

 

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