――たまには、戦とかしてみる
政宗:おい、「たまには」ってなんだよ。それが俺等の本業だろうが。
佐助:でもここでは完全に本業無視してるしね~…
元親:つるんでくだらねぇことやってる方が面白ぇからな!
元就:我はいつでも戦に赴く準備は出来ておるぞ。
元親:大福片手に言っても説得力ねぇから。
政宗:確かに……「戦国」の「せ」の字もねぇよな……。
幸村:平穏なる世の中こそ、真に価値あるものでござる!
佐助:とは言うものの、管理人も「たまには」戦国らしいこともしようと思ったんだって。
元就:ほぅ、珍しいこともあったものだな。また友人の影響であろう。
佐助:ご名答。
元就:つくづく人の影響を受けやすい人間だな……。
佐助:少しは真面目な話も書いてみたいんだってさ。という訳で、今回は鬱展で~す。
政宗:鬱……?あの適当人間は一体何をやらかす気なんだ……?
佐助:大阪の陣だって。
政宗:あれか……。
幸村:何の話でござるか?
政宗:お前が一番知ってなきゃいけねぇんだろうが!
幸村:……???
佐助:という訳で、注意書きです。
・一応、主人公は幸村ですが、長い上に暗い上にオチ無しです。
・史実は盛大に無視。BASARAだからいいよね!(良くない……)
・瀬戸内コンビは出てきません。
※ウィキペディアを多用させていただきました。戦の流れは無双から借用。
コメント返信は日記の方でさせていただきます。
元親:はぁぁあっ!?俺等出番無し!?
元就:おのれ管理人……許さぬ!
佐助:まぁ名目上大阪の陣だしね、鬼の旦那達、時代ずれてるんだもん(苦笑)
政宗:鬱展か……気が乗らねぇぜ……
幸村:何だかよく分からぬが、頑張るでござるよ♪
――慶長5年、石田三成らが蜂起した関ヶ原の戦いで家康は東軍を指揮し、西軍を撃破。
慶長10年、家康・秀忠が伊達政宗ら奥羽の大名を加え、大軍を率いて上洛。
天下にはもはや豊臣家ではなく、徳川家が君臨することを示していた。
幸村:認めるわけには……いかぬ。
――慶長19年、方広寺鐘銘事件をきっかけに、秀頼率いる軍勢と、
家康率いる幕府軍の戦が始まった。
佐助:やっぱり旦那の読みは正しかったね。元々こっちの方が圧倒的に少ないんだから
まともやっても勝ち目なんてないんだよ。ビクビク籠城なんかしてないで、
大名を味方に付ける策でも講じた方が余程利口だっての。
まったく、あの大将と来たら、自分じゃ何も考えられなくせに
人に流されすぎ。お陰ですっかり不利になっちまったよ。
幸村:過ぎたことを言っても始まらぬ。それに、総大将殿を悪く言ってはならぬぞ。
佐助:へいへい。……でもさぁ旦那。先に言っておくけど……
正直俺様は、あの大将を信用してない。真田隊の壊滅を防ぐためなら、
俺は迷わず、あの人を斬り捨てるよ。
幸村:なっ、何を言う!それでは元も子もなかろう!?総大将が倒れればそれまで。
我等一同、秀頼様の恩為に、命も惜しまぬ覚悟を……
佐助:旦那が命を賭けるのは、あの人の為じゃない。自分の信念とか……
そういうもんの為だろう?その正しさは、生き延びなけりゃ証明できないよ。
幸村:………。
佐助:そんな顔すんなって。これはあくまで俺様の個人的な考え。
旦那は旦那の思うとおり、戦えばいいよ。ちゃんと援護してあげるからさ。
幸村:佐助……。某は……間違えているのだろうか……?
佐助:……やれやれ。またその話?
幸村:某はお館様の治める天下こそ、理想の天下と信じてきた。
それが叶わぬ願いとなった時、戦う理由も失った……そう思った。
佐助:まぁ……大将いなくなった後暫くは、旦那宥めるので大変だったもんなぁ。
幸村:今こうして戦場に赴くは、己の生に意味を成したいが為、
自分を無価値とされるを恐れるが故の、偽りの忠義に過ぎぬのかもしれぬ。
大事な部下達の命運を賭けて……それでも義を貫かんとするは……
佐助:……(溜息)それで?
幸村:……?
佐助:それで旦那は、どうしたいわけ?このまま諸手を挙げて降参する?
幸村:それは出来ぬ!
佐助:どうして?
幸村:今まで散々恩義を受けた主君を差し置き、自らが天下を治めようという
徳川方に服従など出来ぬ!忠義を忘れたその振る舞い……徳川の天下を
認めるわけには……いかぬ!
佐助:……。ちゃんと、「理由」があるじゃない。
幸村:り、理由……。
佐助:旦那はあの人を生かすことで、自分の大将信じて尽くすこと、「忠義」の価値を
証明したいのさ。立派な理由だよ。それでこそ真田幸村、日本一の強者ってね♪
幸村:……。
佐助:はい、そういう情けない顔しない!
幸村:ふぬぅ~!頬をひひゃるでにゃい~!あだだだっ!
佐助:旦那がそんな顔してちゃ、うちの軍の士気が下がるでしょうが。
幸村:わひゃっら!わひゃったから離すのらぁああ!!!!
佐助:気合い入った?
幸村:う、うむ!
佐助:はい、じゃあいつもの雄叫び。
幸村:み、漲るぁあああああああああ!!!!!
佐助:上出来~♪さぁて、俺様もお仕事お仕事。
――「負け戦は、百も承知。それでも退けぬ、理由がある。」
幸村:まずは敵前線部隊を、真田丸にて切り崩す!正面からの交戦を避け、
前線部隊の前田・松平両軍を誘い出すのだ!
兵士:おぉおおお!!!!
幸村:いざ、出陣!うぉおおおぉりゃあああああああ!!!!
佐助:あ~あ、言った側から全力突撃かよ……。こりゃなんとかしないとね……。
――「命を賭して、守ってきたもの。」
敵将:おのれ!我等を馬鹿にしておるのか!?討ち取れ……あの者を討ち取れぃ!
佐助:そうら、来た来た。鬼さんこちら~っと。
――「これだけは誰にも、崩させはしない。」
幸村:よくやったぞ佐助!今だ、真田丸砲撃開始!
敵将:何っ!?砲撃だと!?
佐助:お見事。お~、敵さんも慌ててるねぇ。
兵士:申し上げます。真田丸砲撃にて、敵前線部隊に甚大な被害が出ている模様。
幸村:よし、このまま突き進め。敵陣営を貫いて見せようぞぉおおおお!
兵士:おぉおおおお!!!!
――真田隊は、越前松平勢、加賀前田勢等を撃退。徳川方先方隊は総崩れとなる。
幸村:敵も砲台を用いてきたか。油断できぬな……。よし、敵方の砲台を攻め落とすのだ!
本陣への攻撃を食い止める!
佐助:……大した勢いだ。これならちょっとばかり留守にしても大丈夫そうだな。
幸村:何!?る、留守だと!?このような状況で、一体何用があるというのだ!?
佐助:俺様は俺様でやらなきゃならないことがあるんだよ。じゃ、旦那頑張っててね~。
幸村:さ、佐助ぇっ!?
――豊臣方の武将は、真田丸の構築を徳川方に寝返るための下準備と疑い、
少なからず真田軍を警戒していた。
佐助:ったく……こっちの気も知らないで、だからあの総大将は気に入らないんだ……。
――事実、豊臣方の弱体化を謀る家康は、信濃の中で一万石を与える事を条件に
幸村に寝返るよう説得していた。これを拒むと、「信濃一国を与える」と説得に出た。
佐助:俺は飲んでも良い条件だと思ったけどさ……
――「この幸村、一万石では不忠者にならぬが、一国では不忠者になるとお思いか!」
佐助:馬鹿正直って言うか、なんて言うか。ありゃ死んでも治らないね。
さて……城門到着っと。随分とまぁ、がっちり固めてるねぇ。
衛兵:貴様!何者だ!?
佐助:安心しな、味方だよ。真田の旦那んトコの人間さ。
ちょいと総大将さんに言いたいことがある。お目通り願いたいんだけどね。
衛兵:何?真田の……。ならば、通すわけには参らぬ。自陣へ戻るがよい。
佐助:そうら来た。全くアンタ達の思考は分かりやすい。
衛兵:な、何が言いたい!
佐助:その命令には従えないってことさ。悪いが、勝手に通して貰うぜ。
衛兵:貴様、どういうつもりだ!命に背くと有らば、容赦はせぬぞ!
佐助:……。邪魔だよ。
衛兵:主を謀る不忠の士……そのような輩を、秀頼様の御前に通すわけにはいかぬ……
即刻此処を立ち去らねば、真田は裏切りを認めたとして、貴様を此処で斬り捨てる!
佐助:……。
衛兵:何が可笑しい!
佐助:いや。……先に宣言しておいて良かったな、と思ってさ。
衛兵:……?
佐助:疑う理由……大方予想は付いてる。アンタ等がくだらない理由を持ってるのと
同じように、こっちにも有るんだよ。退くに退けない、「理由」がさ。
その為なら……俺様はどんなものでも壊す気でいる。
衛兵:……っ!
佐助:此処、通して貰うよ?
兵士:敵方砲台手撃破!敵は雪崩を打ち、本陣へ引き返してございます!
幸村:皆、勝機が見えたぞ!このまま中央を押し切り、一気に本陣を……
伝令:申し上げます!後藤軍、敵方細川忠興軍により、苦戦を強いられている模様。
伝令:薄田兼相軍、敵方の猛攻により苦戦。後退を余儀なくされております。
幸村:やはり数の差は圧倒的か……。よし、ここは一度本丸へ引き返す。
直ちに後退の準備にはいるのだ!
兵士:し、しかし……折角敵が退いていくと言うに……
幸村:味方の不利を捨て置き、単独で突入しては勝利が遠のく。
今こそ秀頼様に出陣していただく時。御大将が陣頭に立てば、皆の士気も上がろう。
我等の総力を持って、敵大将を討ち取るのだ!
兵士:おぉおおおお!!!!
幸村:開門されよ、真田源次郎幸村、秀頼様にお目通り願う!
武将:何…?真田が参った、と?……開けるな。奴は敵に通じておるやも知れぬ。
それに……正門は守りの要。秀頼様の御身を、危険にさらすわけには行かぬ。
兵士:申し上げます。その……お目通りは叶わず……!開門はならぬと……
幸村:……何!?某が敵と通じておるだと!?大野殿は、味方を信じられぬと申すか。
兵士:そのようにお考えのご様子……。なんと申し上げて良いものか……
幸村:……仕方有るまい。このような状況下で、全てを信じよというが無理な話。
信頼……勝永殿であれば、あるいは!西門へ迂回、何としても秀頼様に
陣頭に立っていただかねば!
佐助:やれやれ。根拠のない疑い賭けられてるってのに、どこまでお人好しなんだか。
西門へ迂回、こりゃ少し時間を食うな。ま、ある意味都合が良い。
旦那は余計な裏事情なんて……知らない方がいいさ。
秀頼:よ、良いのか……?皆、見る間に疲弊しておる。我等のみ本丸で
のうのうと構えているなど……
武将:此度の戦は、稀に見る混戦。敵方も数多の英傑が集合し、秀頼様を討ち取らんと
猛進しております。刃が、弾頭が、血の雨が降る戦場に一度立てば、
引き返すことは叶いませぬ。貴方様をそのような場にさらしたくはない。
秀頼:……うむ……わ、わかった……。
佐助:わかられちゃあ、困るんだよな。
秀頼:っ!!!
武将:何奴!?秀頼様から離れよ!
佐助:離れますよ、こっちの願いも聞いてくれたらな。
秀頼:貴様……敵方の忍か!?
佐助:安心しなよ。アンタの首なんかに興味ない。ただ俺様は、役割をこなしてるだけさ。
アンタも、自分の役割くらい果たしたらどうだい?
秀頼:ど、どういう意味だ……?
佐助:鈍いお坊ちゃんだなぁ……。さっさと出陣しろって言ってんだよ。
味方がじゃんじゃん死んでるってのに、本丸で震えながら縮こまってるなんて
仮にも総大将として恥ずかしくないのかい?
武将:貴様……無礼な!秀頼様を危険な目に……
佐助:危険危険って……安全な戦なんてある訳ないだろう。結局の所、アンタも怖いのさ。
総大将護衛っていう名目を笠に着て、じっと嵐が過ぎるのを待っている。
味方を疑うのは、自分にそういう腹積もりがあるのを見抜かれないため。
そう思われても仕方のない態度だぜ。
武将:貴様……言わせておけばっ!
佐助:おっと、そう血気にはやらないでくれよ。これ以上味方を減らすのは御免だ。
時代の流れに歯向かうことを選んだ以上、秀頼さんもアンタも、
腹括ったらどうだい?こんな所で、臆病風に吹かれてないでさ。
秀頼:うっ……
佐助:おやぁ?血の匂いにでも酔ったかい?この匂いは、これから益々色濃くなる。
危険に身をさらして、誰かの生涯を斬って、その罪を背負って。
アンタにその覚悟がないってんなら、ここで戦を終わらせる方法も……
無い訳じゃないんだぜ?
秀頼:わ、わかった……出陣しよう!
武将:秀頼様!
秀頼:この者の言う通りだ……。天下人の戦、今ここに示して見せようぞ!
佐助:……上出来だ。
武将:ま、待て!
秀頼:良い、行かせるのだ。者共、出陣の準備をせよ!
幸村:開門されよ、真田源二郎幸村、秀頼様にお目通りを願う。
武将:幸村殿!?貴殿が何故このような場所に!?
幸村:今こそ秀頼様が陣頭に立たねばならぬ。勝永殿、何卒開門願いたい!
武将:秀頼様のご出馬……さすれば兵の士気も上がろう。皆の者、開門せよ!
幸村殿を援護するのだ。
幸村:忝ない!必ずや、戦況を覆して見せよう。
兵士:三の丸、開門!
兵士:二の丸、開門!
幸村:よし、秀頼様も直ぐに……
佐助:はぁい止まった止まった~。
幸村:佐助!?今まで何処に行っておったのだ!?
佐助:だから、俺様には俺様の役割ってもんがあるんだよ。そっちはもう済んだから、
旦那のお手伝いに戻ってきましたよ♪
幸村:そうか!では直ぐに本丸へ……
佐助:それはもういいんだって。ほら、聞こえない…?
幸村:これは……法螺貝の音か?
佐助:大将も漸くやる気になってくれたみたいだよ。全軍移動を始めてる。
幸村:なんと!これは心強い!皆の者、総大将殿が御出陣なされたぞ!!!
兵士:おぉおおおおお!!!!
佐助:今度は正門の方が危ういみたい。早く行ってあげよう、旦那。
幸村:うむ!そのようだな。……佐助。
佐助:何~?
幸村:損な役回りを抱え込むのは、悪い癖でござる。
佐助:……。
幸村:……さぁ、正門へ急ぎ参らん!
兵士:おぉおおおおおお!!!!
佐助:あらら、ばれてたみたいだね……。
伝令:塙直之殿、御討死。
伝令:淡輪重政殿、御討死。
伝令:幕府軍三万五千、大阪城へ向け進軍。
伝令:織田有楽斎殿、御退去。
幸村:ぐっ……
佐助:旦那っ!
幸村:問題……ござらぬ。脆弱なる軍など、我等の力を持ってすれば敵ではない!
怯むな!全軍前進、これ以上一歩たりとも近づけは……
佐助:無茶するな!放って置いて良い傷じゃない。冷静さを欠くな、戦況を見ろ。
アンタが倒れたらそこで終わりなんだ。首に縄付けてでも、此処は一度退いて貰う。
幸村:……。すまぬ……。相次ぐ撤退の知らせに、焦りが生じていたようだ……
佐助:無理もないけどさ。……よしっと、出来た。あんまり派手に動き回らないこと。
いいね。守らないと、この傷結構ばっくり行くよ?
幸村:ばっくりでござるか!?しょ、承知仕った……
伝令:申し上げます!後藤基次隊、小松山に進軍!
幸村:何!?後藤殿が!?
佐助:あの人も裏切り打診されて、謀反の疑い賭けられてたからな。
汚名を晴らそうと、決死の覚悟でいるんだろう。
幸村:単独での進出はあまりにも無謀!救援に参るぞ!
佐助:え?ちょ、旦那。派手に動き回るなって言ったばっかりだろ!?
伝令:伝令!伊達政宗軍、幕府援軍として到来!後藤軍と戦闘を開始した模様。
幸村:政宗殿が!?これは益々捨て置けぬ。全軍転回、小松山を目指し前進!
兵士:おぉおおおお!!!
佐助:あ~あ、聞いちゃいない……。
兵士:後藤基次、西門付近にて討ち取ってございます。
政宗:そうか……ご苦労だったな。
兵士:はっ……あの……
小十郎:いいから下がれ。明石、薄田軍も近づいている。警戒を怠るな。
兵士:はっ!
小十郎:政宗様、お顔色が優れませぬな。
政宗:当然だろ。俺は緩い戦は嫌ぇなんだよ……。二万を超える軍で、三千足らずの軍を
踏み砕く。勝敗は明白、何の面白みも無ぇ。くだらねぇ戦だ。
小十郎:しかし敵方が旗を降ろさぬ以上、我等も攻手をゆるめるわけには参りませぬ。
政宗:だから余計に、だ。そんなもの、さっさと降ろせばいい。あの馬鹿共、
永らえればいくらでも機があるものを、自分の手で潰しちまいやがる。
気に入らねぇ、こんなに気に入らねぇ戦は初めてだ。
兵士:申し上げます。同じく西門付近にて、薄田兼相を討ち取りました。
しかし新たに、毛利勝永軍が到来。現在交戦中にござります。
政宗:押し潰せ、一切手は抜くなよ。……さっさと諦めさせてやる。
てめぇは……こんな所でくたばって良い奴じゃねぇんだ。なぁ?真田幸村。
幸村:勝永殿……なんとか持ち堪えてくだされ!
佐助:人を案じる前に自分を省みてよ。わかってる?旦那も手負いなんだよ?
幸村:かすり傷如き、気合いで治してみせる!佐助、遅れるでないぞ!
佐助:やれやれ……。……ん?烏。知らせか……。
幸村:どうしたのだ?
佐助:悪いね……良くない知らせだ。進軍してた総大将さん、伊達の軍勢に怯んで
本丸に逃げ帰っちゃったってさ。
幸村:なんということ……。秀頼様の陣頭無くして、我等に勝利をもたらすは至難の業…
佐助:あの坊ちゃんときたら……もう少し脅かしておくんだったかな……。
幸村:これで益々、伊達の軍勢を退かせるしかなくなった!参るぞ佐助!
佐助:へいへい。
小十郎:政宗様、あの旗印は……
政宗:言われるまでもねぇ。……来たようだな。
幸村:伊達政宗ぇぇぁぁあああああああ!!!!!!
政宗:Ha!相変わらず威勢が良いな、真田幸村。
幸村:今此処に勝敗を決す時!いざ、参る!
政宗:……生憎、こっちにその気は無ぇ。
幸村:な、何を申すか!
政宗:お前にだって分かってるだろ。どうせこれは負け戦、加えて、お前手負いだな?
こっちにもPrideってもんがある。こんな状態で決着だなんだと言われても、
俺は納得しかねるんでね。お前には此処で退いて貰う。
幸村:情けは無用、尋常に勝負せよ!
政宗:アンタに掛ける情けなんざ持ち合わせてねぇよ。ただ俺は、
意味のある戦がしてぇだけだ。真田幸村、お前は此処で消えるべきじゃない。
俺はアンタと、真の勝負がしたいんだよ。
幸村:意味がない……と、申すか。
政宗:……?
幸村:意地に縋った、無意味な戦……確かに、そう見えるのであろうな。
政宗:……。
幸村:貴殿には分からぬであろう。しかし某は、意味無く抗っているのではない。
たとえそなたの目に見えずとも、くだらないものに思われようと、某にはこの戦で、
守らねばならぬものがあるのだ!
政宗:………どうやら、死にに来たって訳じゃねぇようだな。
幸村:当然でござる。
政宗:安心したぜ。アンタの信念って奴、見せて貰おうじゃねぇか。
――伊達政宗、水野勝成らの軍勢、その数、二万以上
政宗:どうした?息が上がってるぜ~?
幸村:……まだまだぁっ!!!
政宗:勢いだけは落ちちゃいねぇようだな。ただそれじゃ、俺の首は取れねぇ。
幸村:くっ……
政宗:そこの忍も、加勢したって構わねぇんだぜ?主が苦戦してるのを傍観ってのも、
人情に欠けるんじゃねぇのか?
佐助:……出来ないだろ。それこそ旦那に怒られちまうよ。
幸村:その通り……手出しは……無用!参る!
政宗:上等だ!
伝令:毛利勝永軍合流!
――真田幸村、毛利勝永等の軍、一万二千。
真田隊は伊達政宗隊の先鋒部隊の進軍を押し止めた。
政宗:流石だぜ……真田幸村。これだけの数の差を押し切るとはな。
幸村:………。
佐助:旦那……もう十分だろ?少しで良いから、本陣に戻ろう。
幸村:………っ!
佐助:頼むから言うこと聞いてくれよ……。……竜の旦那。
政宗:……Ah?
佐助:アンタ、このまま本丸まで攻め込むつもりかい?
政宗:……先鋒部隊がやられたんだ。このまま無理に突っ込んでも、かなりの痛手を負う。
そんな危険を冒してまで、忠節を示してぇ大将でもねぇしな。
佐助:……ありがとな。
政宗:礼を言われる筋合いなんざねぇよ。その死にかけ引き摺って、退くなり何なりしろ。
生かして貰わねぇと、こっちも困るんでな。
佐助:……。旦那がアンタに拘る理由、少ぉしだけ分かった気がするよ。
政宗:……。さっさと消えろ。
佐助:……了解。
小十郎:政宗様、よろしいのですか……?
政宗:後藤等、追撃部隊は壊滅させた。俺等の任は果たしたろ。
小十郎:八尾・若江でも我が軍の勝利の報が入っております。
豊臣方に、もはや一縷の望みも有り得ぬかと……。
政宗:こんな戦で命を散らす程、アイツは柔じゃねぇよ。
……さっさと帰るぞ。嫌な空になってきやがった。
小十郎:御意。
――主要な家臣の討死、退去。残された道は、一つ。
佐助:雨、降ってきたな~。
幸村:日も沈み、視界も悪い。夜討ちの心配はない……敵方はそう考えているであろう。
佐助:「いるであろう」って……それは攻め込みづらいって事なんだからね。
幸村:さればこそ、本陣へ突入する好機!これを逃す手はない!
佐助:……。「単独で突入しては勝機が遠のく」って言ったらしいじゃないの?
この口がさぁ、ねぇ?何が好機だって?
幸村:ぬぅう~!ひっひゃるなぁ~!……うぅ……顔が伸びてしまうでござる……。
佐助:言ったろう?焦りすぎだって。無闇に突っ込んじゃ無駄死にだよ。
幸村:……。では、このまま……城が陥落するのを見ていろというのか?
佐助:そうじゃないよ。でも、今攻め込んだって馬鹿見るだけだ。
ここはきちんと休息を取って、また別の策を練らないと……
幸村:他にどのような策があるというのだ!
佐助:……。
幸村:佐助にも分かっているであろう!?主たる味方も、家臣も、総大将の指揮さえ
失ったのだ!もはや残された道は一つ。決死の突撃で、家康の首を取る。
それしかないのだ!
佐助:……。
幸村:前衛は突き崩した。敵援軍の、本丸への侵入も食い止めた。まだ……全ての希望が
消え失せたわけではない。俺はそれに賭けてみたいのだ……。
佐助:……。負ける可能性の方が、遥かに高い賭けでも?
幸村:……。…………うむ。
佐助:……そうしっかり頷かれちゃあな~。ただ、夜討ちは止した方が良い。
向こうは何十にも警備を固めてる。いくら不意をつこうが、砦を崩せなきゃ
本陣への侵入は不可能だ。同志を掻き集めて、砦を崩す部隊と突入部隊とに
分けて行動しないとね。……とすると、今すぐの行動は無理って訳だ。
幸村:そうなるのか……。
佐助:落ち込みなさんな。空が明るくなれば、先行きも見えるってね。
夜の内にしっかり休んでおきなよ。気合いで突き進むにしたって
限度ってもんがあるんだからさ(苦笑)。じゃ、お休み旦那~。
幸村:……待て。
佐助:何?
幸村:どこへ行くのだ。
佐助:どこって……俺様も休ませてもらうに決まってんだろ…?
幸村:………。
佐助:そ、そんなに睨むなよ……。あ~あ、いつの間にこんな目敏くなったんだか……
幸村:白状せよ!どこへ行くつもりだったのだ!
佐助:言ったろ?俺様には俺様の役割ってもんがある。旦那は知らなくていいことさ。
幸村:……ならぬ。
佐助:……………へ?
幸村:ならぬ。許さぬ!某とて申した筈だ。何故そなたは一人で何でも抱え込む!
佐助:そんな大声出さないでよ……軍のみんな起きちゃうって。
昼前には戻るから心配しないでよ。それとも……そんなに俺様が信用ならない?
幸村:その言葉、そっくり返す!!!!
佐助:うわ……吃驚した。
幸村:誤魔化すでない!何故一人で動く!?何故何も言わない!?何故……
佐助:……………旦那?
幸村:……決して……決して認めぬ!行くな……決して行ってはならぬぞ!
佐助:………………。あ~……うん……はい。わかりました。
幸村:………ほ、本当でござるか?
佐助:そこまで言われちゃね……。このまま張り合って、体力使い果たされても困るしさ。
幸村:そ、そのような事は無い!某は直ぐにでも戦場に赴ける気合いを……
佐助:はいはい、わかったわかった。目に鳩がとまってるよ。さっさと寝なさい。
幸村:……。
佐助:だからその疑いの眼差し止めてってば。本当に大丈夫だって。
傷もばっくり行ってんだし、頼むから少しは休んでくれよ……。
幸村:本当だな……?信じて……良いのだな?
佐助:………うん。
幸村:では……明朝………一番……に………大野殿………伝令……を………。…………。
佐助:………。あ~あ、口開いて。……相当眠かったくせにさ。さて……
――「御免ね、旦那。」
佐助:流石に警戒の度合いが半端じゃないな~。東側からなら、何とか入れそうか……?
かすが:楽しそうだな。
佐助:うわっ……吃驚した……。……なんでお前がこんな所にいるんだよ。
かすが:お前には関係ない。
佐助:相変わらずこの世界から足洗ってないのか……。懲りない奴だな。
かすが:お前の指図など受けない。私は私の生き方を貫くだけだ。
佐助:見たとこ、徳川方の情報収集ってわけでも無さそうだけど……何?夜のお散歩?
かすが:戦場を散歩する馬鹿が何処にいる……。忠告に来てやっただけだ。
佐助:忠告?
かすが:この先で敵方の忍が網を張っている。砦に侵入したければ、山道から迂回しろ。
佐助:あ………そうなのか?ありがとな……。
かすが:……。
佐助:……。
かすが:何が言いたい!!!
佐助:いきなり怒るなよ……。そりゃ疑問に思うだろ。なんでわざわざそんなこと
教えに来てくれるんだよ?
かすが:……。たまたま通ったので、ついでだ。
佐助:さっき散歩する馬鹿はいないって言ったばっかりだろ。
かすが:う………五月蠅い!貴様など勝手に捕らえられて死んでしまえ!
佐助:と、突然酷いな……
かすが:勝手な道を選び、勝手に朽ち果ててしまえば良いんだ!
佐助:勝手勝手って……俺様そんなに勝手人間か?
かすが:勝手極まりない!
佐助:断言されちゃったよ……
かすが:……あの御方がいなくなった時……私の生きる意味もまた消えた……
それを無理矢理生かしておきながら、自分はこんな道を選ぶ……勝手だ……
お前のような勝手でいい加減な奴……許してはおけん!
佐助:ちょっ、危ないからクナイ退かせって!お前は俺を生かしたいのか殺したいのか
どっちなんだよ!
かすが:五月蠅い!そんなこと知るか!
佐助:開き直りやがった……
かすが:………。………この戦……お前等が負けるのか……?
佐助:……さぁ?終わってみないと分からないよ。
かすが:お前は……死ぬのか……?
佐助:それも終わってみないと分からない。
かすが:………嘘をつくな。
佐助:嘘じゃないさ。俺はあっさりくたばってやる程、優しくないぜ?
かすが:………。
佐助:はぁ~……なんで皆して睨み付けてくるんだかなぁ……。
かすが:お前が悪い。
佐助:まぁ、そうかもな。
かすが:どこまで軽薄なんだ……。お前など……何処へなりと消えてしまえ……。
佐助:……そうさせてもらうよ。事が済んだら、茶の旨い店でも行こうぜ♪
かすが:断る。
佐助:相変わらずつれないなぁ……。………それじゃあ、かすが
かすが:……?
佐助:またな。
かすが:…………。
――「何処へも行かないと、言ったのに」
忍隊:それが……その……何処にも姿がございませぬ。
幸村:………。
忍隊:恐らく、敵方本陣付近の砦に向かったものと思われます。
あの砦は十重二十重に囲まれ、大軍での侵入は至難の業。
単独にて潜入し、内から崩す策を取ったのでしょう。
――「守るのが仕事だからと、言ったのに」
幸村:直ぐに出立の準備をせよ。目指すは敵本陣!正面から砦を突き崩す!
兵士:しかし、勝永殿の軍勢は、到着が遅れている模様。単独では……
幸村:怯むな!気合いで押し切るのだ!急げ……急がねばならぬ!
――「損な役回りを抱え込むのは止めると、言ったのに」
敵将:早く……早く援軍を寄越せ!
敵兵:兵糧庫付近に侵入者!火計により各小隊混乱、被害は甚大……!
敵兵:貴様……この軍勢が見えぬのか!?一人でどうにかなるとでも……ぐっ
敵兵:ひっ……く、首……が……っ!
佐助:人の心配してる場合……?
敵兵:……っ!!!あ……あぁ……
敵兵:そ、そんな……たった一人に………
佐助:悪いけど………このまま一気に潰させて貰うよ。
敵兵:伝令!間もなく援軍が到着する模様!
敵将:よし、そうなれば此方のもの!皆、あの者を討ち取れ!
佐助:何人でも呼んだら良いよ。……寧ろその方が都合が良い。
――「大切なものを失った時でも、前へ進めと言ってくれたのに」
家康:何……?西の砦が危ういだと?
兵士:はっ。はっきりしたことは分かりませぬが、外部からの侵入者により混乱。
死傷者もかなりの数が出ているようにござります。
家康:成る程……。その他の敵軍勢はどうしておる?
兵士:秀頼は一時動きを見せましたが、現在は大阪城内にて籠城。
後藤他、有力な武将を失い、最早万策尽きた様子。残る主要な戦力は、毛利勝永、
そして……真田幸村。
家康:真田か……油断は出来ぬな。
兵士:申し上げます!敵方からの侵入者により、兵糧庫陥落!
家康:何だと!?敵もまだまだ屈する気は無いようだな……面白い。
浅野、村上、水野隊は真田及び毛利軍へ進攻、残る軍勢は砦を守るのだ。
侵入者とやら……まずそいつを押さえぬ事には安心できぬからな。
――「何故、行ってしまう」
敵兵:く、来るなっ!……此処は絶対渡さん!忍ごと……き……?……
佐助:………。
敵兵:あ……ひ……い、嫌だ……
佐助:そう怯える事じゃない。此奴の顔見りゃ分かるだろ?自分がどうなったかも
分かっちゃいない。何も、感じやしないさ。
敵兵:ゆ……許してくれ……見逃してくれ……俺は好きでこんな所に来たんじゃない……
佐助:……。
敵兵:嫌だ……嫌だ……助けてくれ……
佐助:……。………行け。
敵兵:……あ。
佐助:さっさと行けよ。気が変わらない内にな。
敵兵:あ……あぁぁあああああ!!!!
佐助:さてと。残るはアンタ一人ってわけだ。
敵将:は……ははははっ!どうせ貴様は袋の鼠!たった一人で、
本気で落とせると思うてか!?我等を潰したところで直ぐさま援軍が訪れる!
もはや貴様等の敗北は見えて……がっ……。……。
佐助:分かってるさ……そんなことはな。………ま、これで本陣への侵攻も可能だろう。
こっちに集中した分、戦力も分散された。突入するなら今、だな。
――「何故、いなくなる」
佐助:……鬨の声?あらら……本当に大層な援軍だ。守りの要を崩した人間を、
ただで帰す気は無い……ってか。ご苦労なことで。
――「何故………」
幸村:邪魔だぁあああああ!!!!
敵兵:なっ……なんだアイツは……!
敵兵:真田幸村……一体何百の兵を討ち取る気か……
敵将:臆すな!真田が首を取れば、我等に勝利は確固たるものにな……くっ……
幸村:……退け。このような所で……止まる間はないのだ……
行く手を阻む者には容赦せぬ!命が惜しくば道を開けよ!
敵兵:と……とても俺達で敵う相手じゃねぇ!
敵兵:お、俺も退かせてもらう!
敵将:ええぃ役立たず共め!……おのれ真田、我のみでも討ち取ってくれる!
幸村:某とて退けぬ!烈火ぁああああああ!!!!……敵将、討ち取ったりぃいいっ!
伝令:申し上げます!敵方本陣正面、先鋒部隊が突破してございます!
幸村:何!?よくやったぞ!……しかし、正面には強固な守りが気付かれていた筈。
よくぞ先鋒のみで突破したものよ……。
伝令:敵方は西の守りに気を取られていたようにございます。
幸村:西の……?
伝令:西砦に築かれし兵糧庫より火の手が上がっている模様。何者かの計略により
徳川本陣は混乱、正面の警備が手薄になったためかと存じまする。
幸村:………………。…………佐助。
――「何故……」
佐助:随分豪勢な歓迎だな。見渡す限りの敵兵に個人で囲まれるなんざ、
なかなか出来ない貴重な体験だよ。
敵将:……まさかお主一人とは、此方も少々驚いたわ。しかし、この軍勢に一人。
よもや逃げ延びられると思ってはおるまいな?
佐助:アンタ等こそ、ほいほい集まって来ちゃって呑気だったらないねぇ。
正面ががら空きになってるのに気付かない?
敵将:な、何!?
佐助:勝利の予感に酔いしれてるから、判断を誤るんだぜ。
敵将:くっ……彼奴を斬り捨てよ!豊臣には敗北の道しか残されておらぬのだ!
佐助:………。やれやれ、こういうの柄じゃないんだけどな~……
――「旦那は……前へ進むんだよ。」
伝令:申し上げます!真田幸村隊、正門を突破。本陣に接近中!
家康:なっ……!何故だ!あれほど守りを固めていたのだぞ!?
伝令:恐れながら、酒井殿始め、正面の守護に当たっていた軍が、西の援軍に参じた模様。
正面の不利に気付き急ぎ戻ったものの、軍を分断されては、
真田隊の猛攻に為す術もなく……
家康:勝手な行動をせぬよう申しつけたに……。西は死を覚悟しての囮だったと言うのか。
伝令:兵糧庫鎮火。侵入した者も討ち取ってございます。
家康:おぉ!其方は何とか守りきったようだな!して、囮という役を買って出たのは
一体誰が軍であったのだ?勝永であれば、最早残るは真田のみ。
伝令:それがその……一人だったのでございます。
家康:一人……だと?
伝令:彼方此方で上がる火の手、討ち取られる武将。巨大な軍勢と思うておりましたが、
それは将のみを討ち取り、混乱に陥れるという計略だったのでございます。
恐るべき早業と、情報に踊らされ……
家康:忍が策……か。
伝令:恐らく。
家康:……本陣への侵入を許すな!真田を食い止めるのだ!
幸村:この機を逃すな!徳川本陣へ攻め入る!我が槍、家康が身を貫いてみせようぞ!
兵士:おぉおおおおおお!!!!!
敵将:させぬ!我が軍の総力を持って、真田を止めるのだ!
幸村:うぉおおおおおりゃああああああ!!!!!邪魔だ邪魔だぁあああああ!!!!
敵兵:ぐっ……
敵将:時代の波に抗うか、真田ぁぁあ!!!
幸村:某は信ずる物の為に闘うのみ!敵幾百あれど、某がお相手致そう!
敵将:ふん、時代に取り残されし愚か者よ、此処で朽ちるが良いわぁああ!!!
兵士:くっ……なんて数の敵軍だ……
幸村:退いてはならぬ……一歩を引いてはならぬ!皆の物、奮えよ!
行くぞ、火焔車ぁぁああああああああ!!!!
敵将:なんという勢い……このままではいかん!
敵兵:鉄砲隊、準備完了にございます!
敵将:よし、目前まで引き付けよ………撃て!
幸村:ぐっ……
兵士:幸村様!
幸村:掠り傷だ……。これしきで我が炎は……っ……消えはせぬ……
――「あんまり無茶するなって、言ったでしょうが」
幸村:……?
佐助:あ~あ、言わんこっちゃない。見事にばっくりいってるよ……。
幸村:さ、佐助!?
佐助:まぁ旦那に忠告したって無駄なのは分かってるけどさ。もう少し自重ってもんを
覚えてくれないと、こっちも気が気じゃない……
幸村:何故欺いた!!!!
佐助:……!……っとぉ、吃驚した……。いきなり耳元で大声出さないでくれよ。
幸村:何故嘘をついたと訊いておるのだ!!!
佐助:………あ~……うん……御免。
幸村:お主が一人で攻め入らずとも、某は本陣を貫いてみせると申した筈!
それを先走って敵勢を引き付けるなど……出過ぎる忍が、何処の世にあるか!
佐助:御免。
幸村:……どれ程心配したか分かっておるのか!
佐助:御免。
幸村:彼程行ってはならぬと言ったのに!何故……!何故……
佐助:………御免。
幸村:………。謝っても許さぬ……。
佐助:……こりゃ参ったな。どうしたらお許し頂けるんだよ~……
幸村:………。二度と離れることは許さぬ……勝利を手にする時まで、某に付いて参れ。
佐助:………。………やれやれ。
幸村:や、やれやれとは何だ!某は怒っておるのだぞ!それを頭などぽりぽり掻きながら
やれやれとは何事……!
佐助:はいはい、御免ってば。……分かったよ。もう命令違反はしません。
幸村:ほ……本当だな?
佐助:……うん。
幸村:何やらこれと同じ会話をして騙された記憶があるのだが、本当に本当なのだな?
佐助:疑り深いなぁ~もう。ちょっとは俺様を信用してくれよ~。
幸村:佐助が悪い!
佐助:ごもっともです……。……大丈夫だよ、旦那。今度は本当。
二度と勝手なことはしないさ。
幸村:………。信じて良いのだな。
佐助:……うん。
――「守るよ、最後まで。」
幸村:佐助……?
兵士:幸村様!背後に敵が!
幸村:……っ!!!……忝ない。
兵士:ご油断召されませぬよう。
幸村:……佐助はどうした?
兵士:は……?何方様にござりまするか?
幸村:今……ここに居たであろう?
兵士:はっ……見渡す限りの敵でござりまするな。我が軍が押しているものの、
気を抜けば、敵は雪崩を打って押し寄せて参りましょう。背後にもご注意下され。
幸村:………。
――「前へ……」
伝令:申し上げます!真田隊、越前松平勢を討ち破り、本陣に侵入!
家康:………流石は真田よ。時代に求められぬは、儂の方だったやもしれぬな……
兵士:い、家康様……!
家康:勘違いするな。儂とて素直に首をくれてやる気はない。
来るが良い、真田。儂の理想の天下、お主に崩させはせぬ!
――「幸村よ、お主は何の為に戦う?」
幸村:うぉりゃうぉりゃぁあああああああ!!!!家康ぁああああああ!!!!
家康:………来たな、真田。
幸村:……っ……覚悟……召されよ……!御首級……真田源二郎幸村が頂戴いたす!
家康:まさか武田の流れの物に、二度も馬印を倒されようとはな。
だが……流石のお主も、疲弊は隠せぬようだな。
幸村:黙れ!……貴殿のような不義の士に、天下はやれぬ!ここで成敗つかまつる!
家康:ここで儂が倒れ、豊臣が永らえれば、戦乱の世は終わらぬ。
死なずとも良い多くの人間が、さらに命を落とすことになる。
それでもお主は、槍を降ろさぬか。
幸村:不義なる者の築く天下に、平穏などあろう筈がない!戯言など、聞く耳持たぬ!
家康:……ではお主が理想とする天下は如何なるものか。
そのように血に濡れ、刃を翳し、多くの者を失いながら築くが、誠の天下か!
幸村:…………っ。貴殿に……そのような事を述べる資格はない……!
家康:強情な男よ。されどお主のような男をこそ、我が天下に必要であったのだがな……。
幸村:問答無用!真田隊が、蹂躙させていただく!烈火ぁあああ!!!
家康:……くっ……お主の気迫……まさに鬼神の如くなり。だが……
敵将:家康様ぁああ!!!
敵将:真田幸村!御首級、頂戴致す!
幸村:……っ!援軍……。
家康:間に合うたか……天は儂を捨ててはおらぬようだな……。
幸村:おのれ……家康!
家康:すまぬ、儂はここで倒れる訳にはいかぬのだ!
――真田勢は家康本陣まで攻め込み、旗本勢を蹴散らした。
その凄まじさは、家康に自害を覚悟させた程であったという。
しかし、数では徳川が圧倒的。真田勢も退却を余儀なくされた。
兵士:……あ。……幸村、様?
幸村:気が付いたようでござるな。
兵士:……っ!い、いけませぬ!某如きが御大将の背を借りるなど……!
幸村様こそ傷を負っていらっしゃると言うに……
幸村:そなたは足に深手を負っておる。自力で歩くは辛かろう。
兵士:も、勿体なきお言葉……
幸村:皆も、大事ないか?進むが辛ければ、休養を取るのだぞ。
兵士:問題ござりませぬ。我等何処までも、幸村様に付いて参りますぞ!
幸村:……忝ない。
兵士:ゆ……幸村様……?は、腹に……傷……が……
幸村:案ずるな、見掛けほど大した物ではない。
兵士:……。
兵士:幸村様!この先に神社がござりまする!
幸村:よし、そこで休むことに致そう。皆、しかと傷を癒せ。
――「そうまでして、一体何を守ろうとした……?」
幸村:すまぬ。白湯しか用意できぬが、少しは身体も温まろう。
兵士:あ、有り難き幸せに存じます……
幸村:何を泣くことがある!?そんなに痛むのでござるか!?
兵士:いえ、左様なことは……。御大将に従えたこと、武士の誉れにございます!
幸村:……うむ。勝永殿と合流すれば、風向きも変わる筈。諦めてはならぬぞ!
兵士:はっ!必ずや……必ずや勝利を……!
幸村:もう少し、もう少し耐えてくれ。勝利を手にする迄、我が炎は決して消えぬ。
義を信じていれば、必ず誠の平穏なる天下が……
兵士:幸村様!敵勢に発見され……がっ……
敵将:真田幸村ぁっ!御首級、頂戴仕る!
幸村:っ!!!!
――「それは………」
――追い詰められた真田軍は、四天王寺近くの安居神社で休養していた所を発見される。
幸村もまた、越前松平勢鉄砲組の西尾仁左衛門にその首を授けた。
小十郎:政宗様、真田が……。
政宗:………。……そうか。
小十郎:……ご帰還なされるのですか?
政宗:この勝利が覆ることは、もう万に一つも無ぇだろう。
止まっていても、何の得にもならねぇ。
小十郎:……心得ました。然らば、準備に掛からせます。
政宗:………小十郎。
小十郎:……。
政宗:………俺は進むぜ。戦国は、まだ終わっちゃいない。
小十郎:はっ。
政宗:………真田幸村。次会うときは………決着、付けて貰うぜ。
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