アンケート2位、真田主従分、阿呆仕様
・力尽きた感満載の短編。
・実はこっちが先に出来たネタ。
・……ですが、(黒)から継続のネタですので、
出来ればそちらを先にお読みください。
「聞いたぞ佐助!戦で腕に大怪我を負って、機能しないかも知れぬのか!?」
「早っ!いきなり核心突いてきたよこの子!」
座布団に無理矢理座らせ、びしっと指を突きつけてやれば、
忍は驚愕の表情で身を仰け反らせた。
「ねぇ……旦那、前の話読んだ?あの微妙なやり取り、全部反故にする気……?」
「否。前の話が長くなりすぎたのだ。こっちは長々書いている間がない。
巻きで行くぞ。」
「ま……。」
引き攣って面白い顔になっている忍の前に座り、その腕をむんずと掴む。
「いだいいだいいだい!何すんの!?」
「ふぅむ。これは困った。どうしたものか……」
「どうにもなんないから。俺のドジだし、お役目退く覚悟は出来……」
「却下。」
「いや、あの……。人の覚悟を、一瞬にして握りつぶさないで欲しいんだけど……。」
「有り得ない選択肢に時間を割いている暇はないのだ。
お~い、誰かあるか!例の物を持って参れ。」
廊下に声を掛けると、前もって命じておいた物が、すぐに運び込まれた。
「テレビ……?」
忍が警戒心もあらわに、此方を見上げている。
何を前置くでもなく、それを再生した。
「何?このアニメ……」
「面白い発想だと思わぬか?この能力ならば、多少握力が衰えた所で問題ない。
というわけで……」
そして、「群青色の果実」を、忍の前に押し出した。
「食え。」
「………はい?」
「食えと言うておるのだ。」
「えっと………聞くのが怖い気もするんだけど……。これ、何?」
「デビルの実だ。」
忍の顔に、脂汗が浮かび上がった。
「…………。英訳すればいいってもんじゃ……ないから。」
「忍隊に総力を挙げて探させたのだ。有り難く受け取れ。」
「アンタ、部下に何させてんだよ……」
「ちなみに効能は食べてみないと分からないそうだ。俺はゴムゴム希望でござる。
頑張れよ、佐助!」
「何を頑張るんだよ!嫌だよこんなの!」
「何故だ?」
「そこまで人生ギャンブラーになれません!ゴムゴムなら兎も角、
ジャリジャリとかネチャネチャの実だったらどうすんの!?」
「それはそれで面白そうだな。」
「冗談じゃねぇよ!」
「では、提案その2!」
「その2……?え。その3とか4とかもある流れじゃない?」
「政宗殿に電話で相談したら、教えていただいたのでござる。」
言いながら、すらりと抜刀する。
ここのところ槍ばかり使っていたから、刀を握るのも久々だ。
「え……。腐る前に切り落とせとか……そういう怖い話?」
「そんなことする筈なかろう。これを見よ!」
「何……。今度は漫画?」
「政宗殿はここ最近、手塚殿とおっしゃる御方の作品に夢中だそうでな。
中でもこの百鬼丸という御仁は、大層お強く……」
「俺、手に刀仕込めとかヤダよ。」
「何!?」
「何!?じゃねぇよ!どんな話を聞かされたのか知らねぇけど、
生身の人間にこんなもの、無理に決まってるだろ!」
「だ、だが……忍のやることは何でもアリと……」
「無理なもんは無理!」
「むぅ……」
「提案その3!」
「やっぱりあったよ、3。これ絶対4もあるよ……」
「元就殿に、電話で教えていただいた。これを装着しろ、佐助。」
それは、白くて丸くて、つるんとした物体。
「何……?これ。」
「ペタリハンドと言うそうだ。丸い形をしていながら、道具を取り出したり、
どら焼きを食べたり、何でも出来る優れものでござる。」
「…………。」
呆けているその両手に無理矢理装着してやると、なかなか其れっぽくなってきた。
「さすえもん……」
「嬉しそうな顔すんなぁああああああああ!!!!!」
絶叫する顔に、間髪入れずに白い布を突き出す。
「ポケットも用意したのだ。これを腹に付けろ。さすれば完璧よ。」
「何が完璧!?アンタ俺をどうしたいの!?」
付けてやろうと思ったのだが、じたばたと暴れるので上手くいかない。
終いには変わり身の術まで用いてにげ、部屋の隅でぜいぜいと息をしながら此方を見た。
「そんなに……嫌か。」
「当たり前だろ!」
「困った時に助けてくれる友……似ていると、思ったのだが………」
「あ……。」
目を伏せて項垂れる。
忍は暫く困ったような顔をしていたが、ふっと微笑むと、
近付いて、顔を覗き込んだ。
「旦那の気持ちは、嬉しいよ?けど俺は……」
「そうか!嬉しいか!では決定だな!」
「ちょ、最後まで聞けっての!」
力では負けるはずもない。押さえつけて、着物を引っ掴み、ポケットを腹に近づける。
「な、何!?まさか、それ直に付ける気!?」
「衣服の上からでは、本物に近づけぬ。とっとと脱いで腹を出せ。」
「嫌だぁああああああああああああああ!!!!!!!」
がたりと、音がした。
取っ組み合いをぴたりと止め、顔を上げる。
障子から半身を隠すように、覗いている人影があった。
「元親殿?」
名を呼ぶと、肩がびくりと震えた。何故かその表情は、酷く引き攣っている。
「いいんだぜ……別に。ほら、俺はいろんな趣向の奴知ってるし……
お前等がどっちに転がったって、ダチはダチだから……。……じゃあな。今日は帰るわ。」
「?」
「ちょっと待って!鬼の旦那待って!お願いだから待って!」
意味の分からぬ発言と、必死に止める忍。
何が何やら分からず、ポケットを握ったまま首をかしげるばかりだった。
「なんだよ、そういうことかよ。あ~吃驚した。
これから、すげぇ気ぃ使って付き合わなきゃならねぇかと思ったぜ。」
そういって、からからと笑う。
何に安堵したのかはよく分からなかったが、これで落ち着いて話が出来る。
「電話はしたものの、わざわざお越しいただけるとは。某、感激にござる!」
「だってよぉ、こんなに面白……………ダチの一大事だからな!」
「今、本音が出てたよ。」
忍が冷たい視線を向ける。
「まぁ怒るなよ。え~っと確か、機能性の高い腕を作って欲しいってんだな。」
「なんか話がショートカットされて、変な風に伝わってない?」
批難を捨て置き、荷物の中から何かを取り出す。
「まずは王道!サイコガンだぜ!」
「おぉおおおおお!!!!」
「何が王道?何が「おぉ」?」
てらてらと輝く「さいこがん」。その強そうな出で立ちに、思わず目を輝かせる。
「さすえもんが不満ならば、こっちはどうだ、佐助!」
「却下!」
「贅沢な野郎だな。んじゃでっけぇ鋏ってパターンもあるぜ。」
「おぉ!これまた強そうでござるな!」
「だろ?ホラーから感動物まで出来る上、カニマヨが出る時期には
ピザ屋の宣伝にも引っ張りだこ……」
「却下!」
二人でふくれっ面をして見せたが、忍は頑として譲らなかった。
「仕方ねぇなぁ……これは俺んちのメカ用にとって置きたかったんだが……
ほらよ、ドリルだ!」
「おぉおおおおおおおおおおおお!!!!!」
「いや……だから、何が「おぉ」なの……」
「わからねぇのか?本多とお揃いだぜ?」
「戦国最強、猿飛佐助にござるぁあああああああああああ!」
「………もうやだ。」
――それから数日後。
「ほんっと……誤診でよかった……」
右手をわきわきさせながら、忍が呟く。
「ドリルも捨てがたかったが……」
「捨てがたかったのかい。」
「やはり、そのままが一番良いな。」
「…………旦那のことだから、ビームくらい出せたほうが嬉しいんじゃないの?」
「駄目だ。頭に穴を開けられては適わぬ。佐助の手は、佐助の手でなければ。」
「………。あっそ。」
その手が、すと、髪を梳いた。
「櫛、置いて来ちゃった。手でもイイ?」
「構わぬ。」
「………そう。」
手にした書物に目を落としても、髪を梳く手はするすると動き、
丁寧に髪を結っていく。
「…………佐助。」
「……うん?」
振り返り、書物を広げてみせる。
「ハナハナの実も、面白いとは思わぬか?」
「………。」
部屋の片隅には、借りてきた「ワン○ース」が山積みになっていた。
「あのねぇ……人を玩具か何かだと思ってません?」
「思っている筈なかろう!俺はいつでも真剣に考えて居るのだぞ!」
「ああ、もうこの子は……」
今日も、平和に夜は更けていく。
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