だから奴等にも働いてもらいます。
政宗：……っしゃいあせ～……
佐助：何それ。いらっしゃいませって言ってるつもり？
元親：……っせ～……
佐助：こっちは「せ」しか言ってないし。
元就：ええい見るな！寄るな！……好き好んでこのような恰好をしておる訳ではないわ！
佐助：こっちに至っちゃ、追い返してるし。アンタ等、ケーキ売る気あんの？
元親：売る気はある。
政宗：ただし、やる気は無ぇ。
佐助：アンタね……。旦那を見習いなよ。あのやる気を。
幸村：けぇぇええええええきは如何でござるかぁああああああああああ!!!!!!!!!
今なら熱く燃えたぎる蝋燭をお付けして、千円にてご奉仕中にござるぁあああ!!!!!
政宗：客が逃げてるじゃねぇか。
元就：街角ドッキリのようだな。
佐助：（溜息）まぁ、アレも良い例とは言えないけど。それにしたって、
もうちょっと危機感ってものを持ったら？明日までに三万稼ぐんでしょ？
元親：つーかよぉ、なんで俺等聖なる夜に、寒空の下でバイトなんかさせられてんだ？
政宗：去年は全キャラでPartyとかやってたのによぉ。
元就：管理人に休みがないが故の嫌がらせであろう。
元親：酷っぇ～……とばっちりかよ……。
佐助：修理代だよ。今年一年、アンタ等が暴れて壊しまくってくれた物の数々、
いままでのらりくらり誤魔化してきた請求書が、一気に押し寄せてきたの。
こっちは付き合いで参加してるんだから、ちゃんと働いてよ。
完売するまで帰らせないからね。
政宗：Shit……
元親：う～い……
元就：ふん。
幸村：確かに仕事という物は厳しい物でござるが、このあるばいとが終了した暁には、
ケーキの残り物をタダで下さるとのこと。某感動で前が見えませぬぅうう!!!!
佐助：旦那、涎で前が見えてないから。
政宗：第一よぉ、全員サンタの恰好ってのが、鬱陶しくねぇか？
元親：クリスマスの売り子っつったらコレだろ？
政宗：サンタはたった一人の爺さんが、汗水垂らして全国の餓鬼共に夢を配る
ところに味噌があるんだろ？増えてどうすんだよ、増えて。
佐助：サンタが一人とか、そんな設定あったっけ？
――ひとりであんな膨大なプレゼントをさばくなんて、確実に不可能だ畜生。
政宗：なんだ？今のは？
佐助：クリスマスの客数とラッピングの嵐に死にかけてる某玩具屋の嘆きだよ。
流してあげて。
元就：そもそも老人を酷使するなど、労働基準に違反している。
元親：けどまぁ、確かに、全員同じ恰好ってのも芸が無ぇよな。……と、言うわけで
じゃぁああん！実は用意してました！東急○ンズで購入のサンタ衣装（女子用）！
白い二の腕と白い太ももが丸見えの、冬にあるまじき大胆スタイル！
裾には柔らかな綿をふんだんにあしらい、女の子らしさを強調してみました！
政宗：………。……で？
元親：ん？
元就：そんなものをどうするのだ。
元親：着るに決まってんだろ。洋服に他の用途があんのか？
元就：気色の悪い姫若子めが……。
元親：おぉっとぉ！考えが甘いぜ。こいつは宴会の罰ゲーム様に用意した代物だ。
つまり！着るのはじゃんけんに負けた奴！俺とは限らねぇ！
佐助：……（溜息）あ～あ、また余計なこと言い出したよこの人。
幸村：おおおおおおなごの衣装など！ははは破廉恥な！
元親：じゃんけんだろうが、勝負は勝負。臆して逃げだ様な奴は、この中には居ねぇよな？
政宗：ぐっ……
元就：ふん、侮るな。………我はチョキを出す。
元親：ほぉお、心理戦って訳か。なら、俺はパーだ！
幸村：某はグーでござる！
佐助：じゃあアイコじゃん。
政宗：いくぜ！
――
政宗：………………。
幸村：………。
佐助：………。
元就：………。
元親：………似合ってるぜ。
政宗：嘘をつけぇええええええええええええ!!!!!（ばしーん！）
元親：あぁっ！帽子叩き付けんなよ。高かったんだぞ、コレ。
元就：似合っておらぬこともないぞ。ごつい二の腕とごつい太ももが丸出しの、
人としてあるまじき大胆スタイルだ。
幸村：ぎゃ、逆に男らしさが強調されておるぞ、政宗殿！
政宗：そんなフォローいらねぇえええええ!!!!!つーかコレ、お約束を踏み外してんだろ！
こういう時はこいつみてぇな女顔とか！こういうショタ系の奴とか！
仕事で女装歴の有りそうな奴とか！過去に女装癖があった奴とか！
そういう奴等が期待されるもんだろ！なんで俺なんだよ！需要ねぇだろ！
元親：勢いに任せて言いたい放題だな……。
元就：伊達が長曾我部のようなことを言い出したぞ、誰か止めろ。
佐助：大丈夫だよ……竜の旦那。マニアには大ウケだって（震）
政宗：あからさまに笑いを堪えやがって……（怒）
元就：言った側からマニアが集まって来たぞ。さぁ、伊達。声高らかにケーキを売れ。
政宗：うぅ……畜生……。
――
幸村：凄い効果であったな……。
佐助：面白がって見に来た女の子とか、結構買ってくれたから。あと……三割くらいかな？
元親：なんか、「そっちの組合」の客も多かった気がするぜ。
元就：しかしその客寄せパンダは何処へ消えたのだ？
佐助：寒さの限界だから着替えてくるって。店の奥に引っ込んじゃったよ。
元就：根性無しめが。
元親：あ～……じゃあ、あとは自力で売るしか無ぇな。
政宗：（飛出）てめぇえらぁああああああああああ!!!!!!
幸村：な、何事でござるか！？
政宗：い……今……小十郎が……店に……電話してきた………。
「小十郎は涙で前が見えませぬ」って……。
佐助：うわ～……
元親：見られたみてぇだな。
政宗：電話口で繰り返し、「大丈夫です大丈夫です」って言われたんだぞ！
俺のHEARTがROKENどころかCRUSHされちまったじゃねぇか！
元就：過ぎたことを言っても始まらぬ。そもそも負けた自分が悪い。
戦に参加した以上、生きるも死ぬも、己の力次第だ。
政宗：ぐっ……
佐助：偉そうなこと言ってるけど、ようは無責任だよね。
元親：あと三割……時間的にはどうだ？
佐助：どうかな～……さっきのペースに戻ると考えると、ちょっと完売は厳しいかも。
元親：じゃあ今度は、トナカイバージョンで別の奴が……
元就：却下だ。
元親：なんだよ。面白いのにぃ～……
幸村：何か他に良い方法はないだろうか？
元就：あるぞ。
幸村：誠か！
元親：早く言え！
元就：簡単な事よ。客共の需要に答えれば良いだけのこと。滑稽さ以外の需要となると…
政宗：滑稽って言うな。
元就：庇護欲だ。
佐助：なにそれ？
元就：裏手に古着屋があったろう。適当な安物を買ってこい。なるべく地味な色を選べよ。
一同：？？？
――
幸村：け……けぇきはいりませぬか………
けーきを……買って下され……。
一同：……。
政宗：いやあの……。
元親：あれが……お前の作戦？
元就：情に訴える。最も確実な方法だ。我等はこうして隠れて様子を見守り、
一人で売らせる。その方が情に届きやすい。
一同：………。
幸村：あぁ……美味しそうな匂い……。あの大きなお家、夕ご飯はきっと
ケンタッキーなのでござろう。うらやましいでござるなぁ……。
某も……一生懸命ケーキを売っていれば……きっと……いつか……
元親：あ、やばい。俺、切なくなってきた。
幸村：はぁ……寒いでござるなぁ……。蝋燭に火をともせば、少しは温かくなるだろうか？
（灯）……おぉ……あったかいでござるなぁ～……。
（ぎゅるるる……）うぅ、お腹も空いたでござる……。でも……
でも……頑張らねば！ケーキは要りませぬかぁ～……
政宗：こんな三文芝居で、本当に売れんのかよ？
元就：まぁ見ておれ。直にころりと騙された輩がわんさかと……
佐助：うぉおおおおおおおおお旦那ぁあああああああああ!!!!!!!!!!
政宗：っ!!!な、なんだよ。
佐助：駄ぁああ目だぁああああ!!!!可哀想過ぎて見てらんない!!!耐えらんない!!!
こんな不憫な話があってたまるかあああああ!!!!
元就：親心が炸裂したようだな。
元親：冷静に構えてねぇで止めろよ！
佐助：……待ってて旦那。今……今すぐ俺様が、全部購入してあげるからぁあああ!!!!!!
政宗：ま、待て待て待て馬鹿野郎!!!!内輪で買ってどうすんだよ！
幸村：売れぬでござるなぁ……。しかし、全部売らない内は
家に帰るなと言われておるし……うぅ（泣）
佐助：そんな酷ぇこと言った奴誰！？今すぐ粉砕してやる!!!
元親：お前だ、お前。
佐助：大体なんでうちの子があんなことさせられなきゃなんないの！？
元就：図体や態度のでかい馬鹿共では哀れに思えぬし、我は人に媚びるのは得意ではない。
容姿がそれなりで、貧乏くささがにじみ出ている真田が適任だ。
政宗：酷ぇ言われようだな……。
幸村：け、ケーキは要りませぬかぁぁぁ～………
――
政宗：すげぇ……意外と売れたぜ。
元親：既にケーキの箱持ってるのに、わざわざ買ってってくれる人までいたもんな。
幸村：これが真田幸村が力よ！
元就：錯乱する輩が居らねば、もう少し長く続けられたのだろうがな。
佐助：め、面目ない……
政宗：けどよぉ、どうするんだ？時間も時間だし、残り少ないとはいえ、
売り切るのは至難の業だぜ。
元親：通り過ぎる奴等も、駆け足に近くなってるしな。もう早く帰りてぇと思う
時間帯だし、引き留めるだけでも一苦労だな。
幸村：何かこう、派手なことをやってはどうだろうか？客人達の足も止まるのでは？
佐助：派手なこと？例えば？
幸村：そうでござるなぁ～（考）。馬で……
佐助：却下。
幸村：ま、まだ何も言っておらぬぞ……。
佐助：予想が付くから。……でも、インパクトは必要かもね。
もの凄い割引とか……まぁ、雇われの身では、勝手に値引きなんて出来ないけど。
元就：いんぱくと？そんなもの簡単ではないか。……長曾我部よ。
元親：あ？
元就：貴様、赤フンで踊れ。
元親：なんでだよぉおおおおおおおおおおお!!!!!!
元就：これ以上ないほどインパクトが有ろう。「珍種のサンタクロースだよ～♪」とでも
言っておけば問題ない。
元親：捕まるわ!!!!
政宗：俺にはあんなナリさせといてよく言うぜ……あれ？幸村どこいった？
幸村：政宗殿ぉ～！某、すっごいいんぱくと考えたでござるよぉ～♪
政宗：………。
元親：………。
元就：………。
佐助：………。ちょ、何……？あの白い巨塔。
元就：ケーキのようだな。一応。
幸村：超豪華ケーキでござるよ♪売れ残りを全て重ねたのだ。
あと一個売れば完売となるという一石二鳥！おぉっとぉ！？（ぐら……）
元親：巨塔っつーか、大分斜塔なんだが……。
政宗：お、おい幸村。動くな。そっから動くな。
幸村：何故でござるか？うぉおおお!!!?（ぐら……）
政宗：だぁああああ動くなっつってんだろ！倒れる！
元就：真田、いいからそれを降ろせ。そっと、慎重にだ……（汗）
幸村：何故でござるか？こうして掲げた方が見えやす……ぉおお!!!?（ぐらぁぁぁぁ……）
元親：あ。すっげぇやな予感……。
佐助：あ～あ……
幸村：ぬぉおおおおおおお!!!!!?（倒）
――休憩室
佐助：結局、倒した十個分買い取りだってさ。
元親：差し引きでバイト代は雀の涙……うぅ（涙）
元就：年末までバイト決定だな……。
政宗：（溜息）ったく……街はあんなに浮かれてるってのに、なんで俺達はこんな所で
クリーム塗れになってんだ……？
佐助：それ言わないで。泣きたくなるから。
幸村：でもクリーム美味しいでござるよ♪
政宗：嘗めるな。お前はいつも幸せそうでいいよな……。
幸村：うむ。今年も良い年であった。お館様の教えを受け、お館様と殴り合い、
お館様と共に戦い、お館様と共に木々を薙ぎ倒……
元親：わかったわかった（呆）
幸村：上田名物の蕎麦も、佐助の作ったおやきも饅頭もあんみつも
炊き込み御飯も煮っ転がしも雑炊も生姜焼きも牛丼も……そして団子も。
とても旨かったでござる♪
佐助：よかったね……つーか俺様の思い出は食い物だけですか……（沈）
幸村：来年も今年の様に、美味しい一年であることを祈っておる。
政宗：Ah～……来年の目標か。
元就：今年も書き初めで「天下」と書いていた馬鹿がおったが、
天下の「て」の字もなかったな。
政宗：うるせぇよ。お前だって「瀬戸内征服」って書いたんだからお互い様だろ。
元親：いや。それは叶えられたら困るんだって。
政宗：お前はなんて書いたんだっけか？
元親：「コンプリート」
政宗：何をだよ……。
元親：それはもう叶っちまったから、来年の目標は……まぁ「限定版」だな。
元就：だから、何のだ。
元親：毎年同じ目標で芸のないお前等よりマシだろ。あ、猿飛は？来年の目標。
佐助：ん～……とりあえず「死なない」かな。
一同：………。
佐助：なんか、管理人が妙な道に目覚めて、今年２、３回殺されたからさぁ。
元親：あ………そう。
佐助：旦那も気を付けなよ。
幸村：？
政宗：ま、まぁ何はともあれ、来年も馬鹿やってられることを祈ろうぜ。
さ、バイトも片付いたし、飲みに行くぞ。
佐助：未成年飲酒禁止。
元親：固いこと言うなよ。クリスマスだぜ～？
佐助：シャンメリーで我慢しなさい。ほら。
一同：おぉおおお!!!!
佐助：ポカはやったけど、売り切ろうとした根性は認めるって。さっきお店の人が
ケーキ１ホールと一緒にくれました。感謝しましょう。
元就：なんでもいいから早く寄越せ。
幸村：切り方が均等ではないぞ！そっちの大きいやつがイイでござる！
元親：あぁぁっ！サンタさんのお菓子は、俺が食べたかったのにぃいいいい!!!!
政宗：細かいことで喧嘩すんなよ（笑）Let's party!!!Yeah!!!!
――皆様、良いお年を。
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