戦国BASARAの二次創作文。
政宗、幸村、佐助、元親、元就が中心。
日々くだらない会話をしてます。
Posted by 今元絢 - 2008.09.29,Mon
――企画部屋より転載。
短編旦那分その2。白。
短編旦那分その2。白。
――砲台は、炎に吹き飛ばされた。
弾けた材が、舞い散る花のようにはらはらと落ちる。
炎から吹き来る風が、一つに括った髪を揺らした。
幸村:此しきの豆鉄砲で、真田隊が屈すると思うてか!
両の手に槍を振りかざし、叫ぶ。
謎声:何してんのアンタぁあああああっ!!!!?
が、それ以上の叫び声が其れを掻き消した。
振り返れば、其処にあるのは、いつぞやも見た狐の面。
全身の毛を逆立てるようにして、口を開閉しながら此方を見ている。
天狐:これはあくまで修行なの!うちの大事な資産をぶち壊してどうするのさ!
火男:真田丸の砲撃にすら屈しぬとは、流石は幸村よ!
天狐:アンタも誉めてる場合か!つか、その仮面。大将はもうばれてんだから取ったら?
火男:否!此を付けている方が面白いであろう!
天狐:威張るなよ……。
幸村:構わぬ。天狐仮面殿、修行とはいえ全力で戦うが武田の流儀。
手加減などせず、持ちうる戦力を全て注いで参られよ。
天狐:こっちが構うんですよ!ただでさえ家計苦しいのに!
火男:幸村よ。更なる試練じゃ!この数を、どう捌く?
幸村:なんと!?
伏兵。そんな単純な戦法に、気付かなかった己の未熟さを呪った。
まだ倍近くの兵を隠していた敵は、容赦なく襲いかかってくる。
己の忍が「大将は何企んでるか分かんないから、嵌らないようにね」と
注意を促していたのを思いだした。そう簡単には負けぬと、見得を切っておきながら……
幸村:見事にその策に嵌ろうとは……佐助に馬鹿にされてしまうな。
今は偵察の任だとかで外出している忍の姿を思い描き、思わず苦笑を漏らした。
――その、己の前に、すと影が落ちた。
進み出たのは、この「網」を張っていた、己の師であった。
火男:幸村よ、数に騙されるな。突破口は必ずあるもの。まずは冷静に敵を分析せよ。
幸村:お館様!
火男:火男仮面と呼ばぬかぁあああああ!!!!(殴)
幸村:ぐっはぁ!失礼いたしもうした、火男仮面殿!
天狐:アホらし……。
火男:冷静に分析し、戦況を見極め……そして
幸村:そして……?
火男:力の限り、打ち倒すのじゃあああああああああああ!!!!
幸村:うぉおおおおおお押せ押せぁああああああああああああ!!!!!
天狐:結局力押しかい!
雪崩となって襲い来る兵を、次々と薙ぎ倒す。
数十人目を襖に向かって盛大にはじき飛ばしたとき、敵将は薄く笑みを浮かべた。
此方の疲弊を察しているのだろう。
火男:見事な技よ。戦場にて益々の働き、期待できよう。
幸村:あ、有り難き幸せぇええええっ!!!!
火男:だが、修行はまだ終わりではないぞ。次の段階は、既に用意してある。
幸村:なんと!
天狐:えぇ~……まだやんのぉ……?
火男:だが、それには「時間稼ぎ」が必要だ。
その身が果てるまで、儂の準備完了を待って、其処へ留まり続ける壁がな。
幸村:……壁。
火男:まだ分からぬのであれば、言うてやろう。天狐仮面、後は任せたぞ。
天狐:はいはい………って、ハィイイイイッッ!!!??
しかし、その言葉に、何ら己の心が動くことはない。
寧ろ、笑みすら浮かべて応えた。
幸村:其れがお館様の御為であるならば、某は主命を全うするまで。
火男:よくぞ言うた。だが、この男、知っての通り一筋縄では行かぬぞ。
全力を持って戦うて見せよ!
幸村:うぉおおおおおおお!!!!漲るぁあああああああ!!!!!
天狐:いや、ちょっとあの……漲んないで欲しいんですけど……。
火男:さ……いや、天狐仮面よ。
天狐:……なんすか。
火男:勝てば、ボーナスじゃあああ!!!!!!
天狐:………。
纏う空気が、変わった。
天狐:そういうことだから、旦那。俺様ちょっと、本気出しちゃうよ……?
幸村:望む所よ!さぁ、来るがよい!
天狐:生憎忍は、真っ向から飛び込むようには出来ていないんだ。
卑怯なんて言うなよ、これも仕事でね。
忍は足下に何かを放った。
途端、辺りに霧が立ちこめ、視界を塞ぐ。
幸村:ぬぉ!?佐助と同じ技!?流石は天狐仮面殿、侮れぬ……。
天狐:………。あのさぁ旦那。流石とか、凄いとか誉めてくださるんなら、
あいつの給料をあげてやってくれませんかねぇ?
聞こえぬ。
天狐:腕は立つし、頭は切れるし、飯は旨いし、掃除もうまいし、
選択も出来るし、買い物上手で、裁縫もうまい。
何も聞こえぬ。
天狐:ちょっと自分で言ってて哀しくなってきたけど……
其れに見合ったご褒美ってもんがさぁ、在ってもいいんじゃない?
聞こえぬ。
天狐:ねぇ、聞こえないフリはやめようよ……。わ、ちょっ!!!!?
気付けば己の刃が、男の喉元近くで唸っていた。
霧で見えぬと言うに、気配は確かに殺されているというのに、
何故かこの忍の位置だけは、容易に感じ取れてしまう。
元より当てる気などは無かったが、忍の表情には本気の焦りが生まれていた。
幸村:給料は据え置きだ。某には譲る気など無い。
天狐:酷……。俺様流石に泣いちゃうよ?頑張ってんのにさぁ……。
幸村:否。某は佐助を誰より信用しておる。その思いは給料の多い少ないでは
計れぬのだ。それは佐助にも伝わっている筈でござる。
天狐:………。ホント旦那って、俺より遥かに卑怯だよね。
幸村:……?
天狐:もう降参。俺様降りるから。そろそろ夕飯の仕度しなきゃなんないし……
じゃ、またね、旦那。
忍が何を思うたかは、生憎さっぱり分からなかった。
それでも、見守ってくれている師のため、良いところを見せねばならぬ。
忍の姿を追い、城内へと駆け入った。
幸村:天狐殿、修行はまだ終わっておらぬぞ!
天狐:へ?わ!旦那!ちょ、待っ!
忍は慌てて仮面を装着していた。その傍らに、火男仮面も降り立つ。
火男:幸村よ、準備は整うた!さぁ、全力で向かってくるが良い!
天狐:全力でって、大将!?ここ家の中……
手にした二槍は、まるで腕の一部であるかのようによく馴染んだ。
幸村:火男仮面殿、天狐殿、本気で参るぞ!
天狐:え、嘘……。
二槍が、紅蓮を纏った。
――目の前にあったのが布団部屋だと、どこか遠いことのように思っていた。
自分の攻撃を今更止めることが出来ず、布団が破け、舞い、綿が飛び散る様を見て、
「怒られる」と感じた。
壁際に、追い詰められた。師と並んで、大人しく正座する意外、術がない。
大した者だ。佐助と同じか、それ以上に……怖い。
身に纏う空気が、酷く歪んでいるのが分かる。
今日寝る布団をも粉砕してしまったのだから、怒られるのは当然だ。
幸村:だが……天狐殿が避けたから……
天狐:避けなきゃ俺があの布団の代わりに粉砕されてたでしょうが!
火男:修行は常に全力で行う物よ!
天狐:黙らっしゃい!そもそも道場ならまだしも、家の中だよ!?
思い付きで修行なんて始めてない下さい!
火男:むぅ……
説教は、一分の隙も見せず延々と続いた。
ただ黙って、小さくなるのみで……
――不意に、倒れ込んだ。
それまで淀みなく説教を続けていた忍が、息を呑むのが分かる。
天狐:旦那!?どうしたの!?何処か怪我でもした!?
忍の顔には、明らかな焦りが生まれていた。
――だが、最早我慢できない。
幸村:腹が減って……死にそうでござる。
突っ伏したまま、視線だけ持ち上げて言う。
忍は口をぽかんと開けた後、これ見よがしに溜息を付くと、炊事場の方へと向き直った。
天狐:おやつ……アイツに作らせてきますから、暫く正座して待ってなさい。
忍の姿が消えると、師はどっと息を吐いて姿勢を崩した。
火男:あ~……足痺れたぁ……。でかしたぞ幸村。
幸村:お館様ぁ!某の演技力も捨てた物ではございませぬな!
火男:全く、さ……じゃない、天狐仮面も堅物でいかん。修行の続きといくか、幸村!
幸村:お館様!心得ましてござりまするぅううううう!!!!!
――そんなことは、させない。
天狐:何、勝手に寛いでるわけ?
気付けば、傍らで声がした。
宙を舞うのは、どす黒い怒りのオーラ。背後をつつと、汗が伝った。
――嘘をついたらオヤツなんて、与えない。
天狐:アイツには三日間の禁団子と禁酒をお願いしてきますから。
火男:ぬぉおおおおおおおお!!!!!明日の飲み会楽しみにしてたのにぃいいいい!!!!
幸村:天狐殿!何卒、慈悲をぉおおおお!!!!
忍は、笑顔で振り返った。
天狐:破いた布団は縫っていただくからね………全部。
――
――漸く見つけた主は、美しささえ感じるほどの白に、埋もれていた。
夥しい綿に囲まれ、手にした針と糸をだらりと下げたまま、座り込んでいる。
足下に広がる布団を格闘していたが、破れた穴は一つも塞がっていないようだった。
佐助:………旦那?
己の声に反応し、肩が微かに震えた。ゆっくりと、振り返る。
幸村:佐助ぇ……
泣き出しそうな表情で。主は一歩、足を踏み出した。
途端、崩れるように布団が雪崩来る。
慌てて駆け寄ると、布団の山から何とかもぞもぞと這い出した。
佐助:大将は?
幸村:あっちでござる。
同じように埋もれているのか、何だかもっさりした赤い物体が見える。
苦笑しながら、手を差し出した。
佐助:話は聞いてるよ。手伝いましょうか?
主は半べそで、ぶんぶんと首を縦に振った。
――
目を覚ますと其処は白の波が在った。
布団に埋もれて、眠ってしまったらしい。師の盛大な鼾も聞こえてくる。
もぞもぞと起きあがると、伸びをしている忍の姿が見えた。
佐助:あ、やっと起きた。も~狡いよ、人に任せて寝ちゃうなんて。
幸村:あい済まぬ……。おぉ!?
布団は、見事に修繕されていた。
幸村:佐助が一人で直したのか!?
佐助:二人とも、全然戦力にならないからね。あ~……疲れた。
幸村:これは天狐殿に某等が下された罰であったと言うに……
佐助は優しすぎるぞ。
佐助:悪いけど俺、親切心だけでやってる訳じゃないからね。
これ、俺の布団も混ざってるし。
そう言って、非難の視線を向けてくる。自分はただ小さくなるしかない。
忍はその姿を見て、小さく吹き出した。
佐助:ま、反省してくれたんなら良いんだけどさ。
信玄:流石は佐助。忍の中の忍よ。
佐助:あれ?大将も目覚めたんだ。だったら二人とも、せめて片付けは手伝ってよね。
結構重労働なんだから。
幸村:あい分かった!
信玄:うむ。行くぞ、幸村ぁ!………む?
幸村:お館様、如何なさいました?
信玄:ふっふっふ……幸村よ。隙アリじゃぁあああああ!!!!(投)
幸村:なんとぉ!?枕!?
信玄:枕を手にしたら、投げるが男子足る者!説教など恐れていては、
一人前とは言えぬわ!
幸村:お館様ぁああああ!!!!この幸村、見事枕投げの頂点に立って見せましょうぞぉおお!!!
うぉおおおりゃあああああ(投)
信玄:甘いわぁああああ!!!!(投)
佐助:………。
――優しくなんか無い。アンタ達が何も、分かってないだけ。
幸村:ぬぉおおお!!!!?暗い!狭い!怖いでござるぅううう!!!
信玄:すまぬ佐助!もう悪のりはせぬ!しないから此処を開けてくれぇえええ!!!!
佐助:もう知りません。暫く其処(押し入れ)で反省してなさい。
弾けた材が、舞い散る花のようにはらはらと落ちる。
炎から吹き来る風が、一つに括った髪を揺らした。
幸村:此しきの豆鉄砲で、真田隊が屈すると思うてか!
両の手に槍を振りかざし、叫ぶ。
謎声:何してんのアンタぁあああああっ!!!!?
が、それ以上の叫び声が其れを掻き消した。
振り返れば、其処にあるのは、いつぞやも見た狐の面。
全身の毛を逆立てるようにして、口を開閉しながら此方を見ている。
天狐:これはあくまで修行なの!うちの大事な資産をぶち壊してどうするのさ!
火男:真田丸の砲撃にすら屈しぬとは、流石は幸村よ!
天狐:アンタも誉めてる場合か!つか、その仮面。大将はもうばれてんだから取ったら?
火男:否!此を付けている方が面白いであろう!
天狐:威張るなよ……。
幸村:構わぬ。天狐仮面殿、修行とはいえ全力で戦うが武田の流儀。
手加減などせず、持ちうる戦力を全て注いで参られよ。
天狐:こっちが構うんですよ!ただでさえ家計苦しいのに!
火男:幸村よ。更なる試練じゃ!この数を、どう捌く?
幸村:なんと!?
伏兵。そんな単純な戦法に、気付かなかった己の未熟さを呪った。
まだ倍近くの兵を隠していた敵は、容赦なく襲いかかってくる。
己の忍が「大将は何企んでるか分かんないから、嵌らないようにね」と
注意を促していたのを思いだした。そう簡単には負けぬと、見得を切っておきながら……
幸村:見事にその策に嵌ろうとは……佐助に馬鹿にされてしまうな。
今は偵察の任だとかで外出している忍の姿を思い描き、思わず苦笑を漏らした。
――その、己の前に、すと影が落ちた。
進み出たのは、この「網」を張っていた、己の師であった。
火男:幸村よ、数に騙されるな。突破口は必ずあるもの。まずは冷静に敵を分析せよ。
幸村:お館様!
火男:火男仮面と呼ばぬかぁあああああ!!!!(殴)
幸村:ぐっはぁ!失礼いたしもうした、火男仮面殿!
天狐:アホらし……。
火男:冷静に分析し、戦況を見極め……そして
幸村:そして……?
火男:力の限り、打ち倒すのじゃあああああああああああ!!!!
幸村:うぉおおおおおお押せ押せぁああああああああああああ!!!!!
天狐:結局力押しかい!
雪崩となって襲い来る兵を、次々と薙ぎ倒す。
数十人目を襖に向かって盛大にはじき飛ばしたとき、敵将は薄く笑みを浮かべた。
此方の疲弊を察しているのだろう。
火男:見事な技よ。戦場にて益々の働き、期待できよう。
幸村:あ、有り難き幸せぇええええっ!!!!
火男:だが、修行はまだ終わりではないぞ。次の段階は、既に用意してある。
幸村:なんと!
天狐:えぇ~……まだやんのぉ……?
火男:だが、それには「時間稼ぎ」が必要だ。
その身が果てるまで、儂の準備完了を待って、其処へ留まり続ける壁がな。
幸村:……壁。
火男:まだ分からぬのであれば、言うてやろう。天狐仮面、後は任せたぞ。
天狐:はいはい………って、ハィイイイイッッ!!!??
しかし、その言葉に、何ら己の心が動くことはない。
寧ろ、笑みすら浮かべて応えた。
幸村:其れがお館様の御為であるならば、某は主命を全うするまで。
火男:よくぞ言うた。だが、この男、知っての通り一筋縄では行かぬぞ。
全力を持って戦うて見せよ!
幸村:うぉおおおおおおお!!!!漲るぁあああああああ!!!!!
天狐:いや、ちょっとあの……漲んないで欲しいんですけど……。
火男:さ……いや、天狐仮面よ。
天狐:……なんすか。
火男:勝てば、ボーナスじゃあああ!!!!!!
天狐:………。
纏う空気が、変わった。
天狐:そういうことだから、旦那。俺様ちょっと、本気出しちゃうよ……?
幸村:望む所よ!さぁ、来るがよい!
天狐:生憎忍は、真っ向から飛び込むようには出来ていないんだ。
卑怯なんて言うなよ、これも仕事でね。
忍は足下に何かを放った。
途端、辺りに霧が立ちこめ、視界を塞ぐ。
幸村:ぬぉ!?佐助と同じ技!?流石は天狐仮面殿、侮れぬ……。
天狐:………。あのさぁ旦那。流石とか、凄いとか誉めてくださるんなら、
あいつの給料をあげてやってくれませんかねぇ?
聞こえぬ。
天狐:腕は立つし、頭は切れるし、飯は旨いし、掃除もうまいし、
選択も出来るし、買い物上手で、裁縫もうまい。
何も聞こえぬ。
天狐:ちょっと自分で言ってて哀しくなってきたけど……
其れに見合ったご褒美ってもんがさぁ、在ってもいいんじゃない?
聞こえぬ。
天狐:ねぇ、聞こえないフリはやめようよ……。わ、ちょっ!!!!?
気付けば己の刃が、男の喉元近くで唸っていた。
霧で見えぬと言うに、気配は確かに殺されているというのに、
何故かこの忍の位置だけは、容易に感じ取れてしまう。
元より当てる気などは無かったが、忍の表情には本気の焦りが生まれていた。
幸村:給料は据え置きだ。某には譲る気など無い。
天狐:酷……。俺様流石に泣いちゃうよ?頑張ってんのにさぁ……。
幸村:否。某は佐助を誰より信用しておる。その思いは給料の多い少ないでは
計れぬのだ。それは佐助にも伝わっている筈でござる。
天狐:………。ホント旦那って、俺より遥かに卑怯だよね。
幸村:……?
天狐:もう降参。俺様降りるから。そろそろ夕飯の仕度しなきゃなんないし……
じゃ、またね、旦那。
忍が何を思うたかは、生憎さっぱり分からなかった。
それでも、見守ってくれている師のため、良いところを見せねばならぬ。
忍の姿を追い、城内へと駆け入った。
幸村:天狐殿、修行はまだ終わっておらぬぞ!
天狐:へ?わ!旦那!ちょ、待っ!
忍は慌てて仮面を装着していた。その傍らに、火男仮面も降り立つ。
火男:幸村よ、準備は整うた!さぁ、全力で向かってくるが良い!
天狐:全力でって、大将!?ここ家の中……
手にした二槍は、まるで腕の一部であるかのようによく馴染んだ。
幸村:火男仮面殿、天狐殿、本気で参るぞ!
天狐:え、嘘……。
二槍が、紅蓮を纏った。
――目の前にあったのが布団部屋だと、どこか遠いことのように思っていた。
自分の攻撃を今更止めることが出来ず、布団が破け、舞い、綿が飛び散る様を見て、
「怒られる」と感じた。
壁際に、追い詰められた。師と並んで、大人しく正座する意外、術がない。
大した者だ。佐助と同じか、それ以上に……怖い。
身に纏う空気が、酷く歪んでいるのが分かる。
今日寝る布団をも粉砕してしまったのだから、怒られるのは当然だ。
幸村:だが……天狐殿が避けたから……
天狐:避けなきゃ俺があの布団の代わりに粉砕されてたでしょうが!
火男:修行は常に全力で行う物よ!
天狐:黙らっしゃい!そもそも道場ならまだしも、家の中だよ!?
思い付きで修行なんて始めてない下さい!
火男:むぅ……
説教は、一分の隙も見せず延々と続いた。
ただ黙って、小さくなるのみで……
――不意に、倒れ込んだ。
それまで淀みなく説教を続けていた忍が、息を呑むのが分かる。
天狐:旦那!?どうしたの!?何処か怪我でもした!?
忍の顔には、明らかな焦りが生まれていた。
――だが、最早我慢できない。
幸村:腹が減って……死にそうでござる。
突っ伏したまま、視線だけ持ち上げて言う。
忍は口をぽかんと開けた後、これ見よがしに溜息を付くと、炊事場の方へと向き直った。
天狐:おやつ……アイツに作らせてきますから、暫く正座して待ってなさい。
忍の姿が消えると、師はどっと息を吐いて姿勢を崩した。
火男:あ~……足痺れたぁ……。でかしたぞ幸村。
幸村:お館様ぁ!某の演技力も捨てた物ではございませぬな!
火男:全く、さ……じゃない、天狐仮面も堅物でいかん。修行の続きといくか、幸村!
幸村:お館様!心得ましてござりまするぅううううう!!!!!
――そんなことは、させない。
天狐:何、勝手に寛いでるわけ?
気付けば、傍らで声がした。
宙を舞うのは、どす黒い怒りのオーラ。背後をつつと、汗が伝った。
――嘘をついたらオヤツなんて、与えない。
天狐:アイツには三日間の禁団子と禁酒をお願いしてきますから。
火男:ぬぉおおおおおおおお!!!!!明日の飲み会楽しみにしてたのにぃいいいい!!!!
幸村:天狐殿!何卒、慈悲をぉおおおお!!!!
忍は、笑顔で振り返った。
天狐:破いた布団は縫っていただくからね………全部。
――
――漸く見つけた主は、美しささえ感じるほどの白に、埋もれていた。
夥しい綿に囲まれ、手にした針と糸をだらりと下げたまま、座り込んでいる。
足下に広がる布団を格闘していたが、破れた穴は一つも塞がっていないようだった。
佐助:………旦那?
己の声に反応し、肩が微かに震えた。ゆっくりと、振り返る。
幸村:佐助ぇ……
泣き出しそうな表情で。主は一歩、足を踏み出した。
途端、崩れるように布団が雪崩来る。
慌てて駆け寄ると、布団の山から何とかもぞもぞと這い出した。
佐助:大将は?
幸村:あっちでござる。
同じように埋もれているのか、何だかもっさりした赤い物体が見える。
苦笑しながら、手を差し出した。
佐助:話は聞いてるよ。手伝いましょうか?
主は半べそで、ぶんぶんと首を縦に振った。
――
目を覚ますと其処は白の波が在った。
布団に埋もれて、眠ってしまったらしい。師の盛大な鼾も聞こえてくる。
もぞもぞと起きあがると、伸びをしている忍の姿が見えた。
佐助:あ、やっと起きた。も~狡いよ、人に任せて寝ちゃうなんて。
幸村:あい済まぬ……。おぉ!?
布団は、見事に修繕されていた。
幸村:佐助が一人で直したのか!?
佐助:二人とも、全然戦力にならないからね。あ~……疲れた。
幸村:これは天狐殿に某等が下された罰であったと言うに……
佐助は優しすぎるぞ。
佐助:悪いけど俺、親切心だけでやってる訳じゃないからね。
これ、俺の布団も混ざってるし。
そう言って、非難の視線を向けてくる。自分はただ小さくなるしかない。
忍はその姿を見て、小さく吹き出した。
佐助:ま、反省してくれたんなら良いんだけどさ。
信玄:流石は佐助。忍の中の忍よ。
佐助:あれ?大将も目覚めたんだ。だったら二人とも、せめて片付けは手伝ってよね。
結構重労働なんだから。
幸村:あい分かった!
信玄:うむ。行くぞ、幸村ぁ!………む?
幸村:お館様、如何なさいました?
信玄:ふっふっふ……幸村よ。隙アリじゃぁあああああ!!!!(投)
幸村:なんとぉ!?枕!?
信玄:枕を手にしたら、投げるが男子足る者!説教など恐れていては、
一人前とは言えぬわ!
幸村:お館様ぁああああ!!!!この幸村、見事枕投げの頂点に立って見せましょうぞぉおお!!!
うぉおおおりゃあああああ(投)
信玄:甘いわぁああああ!!!!(投)
佐助:………。
――優しくなんか無い。アンタ達が何も、分かってないだけ。
幸村:ぬぉおおお!!!!?暗い!狭い!怖いでござるぅううう!!!
信玄:すまぬ佐助!もう悪のりはせぬ!しないから此処を開けてくれぇえええ!!!!
佐助:もう知りません。暫く其処(押し入れ)で反省してなさい。
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