すげぇ恥ずかしいです。
ほら……その……病んでる時期に書いたから……(言訳)
佐助:若さま~!!!若さまってば!!……ったく、雨も強くなってきたってのに、
何処行ったんだか……。
弁丸:………。(隠)
佐助:………。……若さま?
弁丸:うぉ!見つかってしもうた!(逃)
佐助:何処行くの。(捕)
弁丸:おぉっ!?か、髪を掴むでない!折角来たのに、もう帰るなど御免でござる!
佐助:あのね……風邪ひくでしょうが。帰るよ。
弁丸:………。嫌でござる~♪(逃)
佐助:あ、こら!待ちなさいって!あ~もうっ!(追)
弁丸:………。
佐助:いつまでむくれてんの。
弁丸:某は……お前が連れて行ってくれると言うから、
また高い木の上から城下町を眺めたり、赤くて甘い実を食べたり、
駆け足勝負が出来るものと……ずっと楽しみに……
佐助:余程あの山が気に入ったのね(苦笑)……けど、雨じゃ仕方ないだろ?
また連れてってあげるから。……ちゃんと拭かないと、本当に風邪ひくよ。
弁丸:そのような物など無くとも、これで十分だ!(振)
佐助:ちょ、冷たっ!……アンタね、犬じゃないんだから、
頭振って乾かそうとしないでよ……。
弁丸:「ごうりてき」だぞ?
佐助:何処が。頭もさもさになってるよ。お風呂も入ってきな。
弁丸:……佐助。手ぬぐいは何処だ?
佐助:あっちの押し入れ。
弁丸:佐助。
佐助:替えの帯はあっち。小袖はそっちね。その他諸々は用意しておきますから、
冷えないうちに早く行く!
弁丸:心得た!(走)
佐助:(溜息)……やれやれ。
弁丸:いや~、イイ風呂であったぞ!
佐助:子供のくせに、発言はやたら親爺………って、何。その頭。
弁丸:いつもと何ら変わらぬと思うが?
佐助:あのね……ちゃんと拭いた?水滴ってるし、ほつれてるし、そもそも結べてないし。
弁丸:某は、問題ないと思うのだが……。
佐助:(溜息)櫛貸して。
弁丸:………。やっぱり佐助は器用でござるな。
佐助:若さまが不器用過ぎるの。自分の髪くらい、自分で結えるようになってよね。
そうでなくても、自分の物も何処に仕舞ってあるか分からないし、
退屈だ~腹が減った~って騒ぐし、夜は一人で厠へも行けないし。
弁丸:むぅ…。
佐助:迷子になるし、怪我はするし、放っておくと直ぐ食べ過ぎるし。
………ホント、俺様が死んだらどーすんのよ。
弁丸:…………。しんだら……?
佐助:一生面倒見る訳にはいかないんだからね。自分のことくらい、
自分で出来るようにならなきゃ駄目だよ。
弁丸:………。そうなのか?
佐助:そうだよ。
弁丸:………。
佐助:………?若さま……?
弁丸:そうか。努力する。
佐助:……あ、うん。それなら、いいけど。………どうかした?
弁丸:いや、何でもない。
――
佐助:ただいま戻りました~。
幸村:おぉ、佐助!早かったな!
佐助:へへ~♪俺様、優秀だからね。旦那は……まだお仕事中?
お土産買ってきたんだけど。
幸村:おぉぉおっ!!!団子!!!しばし待て。直ぐに片付ける!
佐助:んな焦らなくてもイイっての(苦笑)これ……手紙か何か?
幸村:うむ。同盟を結べるか否かに関わる、重要な文でござる。
佐助:そんな大事なもんを、団子のためにいい加減にしちゃまずいでしょうが。
どれどれ~?……ふ~ん。やっぱ俺にはさっぱり分からないわ。
幸村:半日掛けて書いている物を、「ふ~ん」で片付けられると悲しいのだが……
佐助:御免御免(笑)……でもさ、旦那ってホント、字綺麗だよね。
幸村:そうか?俺にはよく分からぬ。
佐助:俺だって書の善し悪しなんてよく知らないけどさ、それでも分かるくらい
整ってるよ。繊細……っての?まるでおなごの恋文だね。
幸村:こ、恋文ぃ!?そのようなことを言われても嬉しくないわ!
佐助:冗談(笑)でも本当に見てて心地のいい字だと思うよ。………字は、ね。
幸村:……?なんだ、人の顔をじっと見て。
佐助:こんだけ繊細な字を書く人がさぁ……なんで、その頭なわけ?
幸村:頭?
佐助:旦那……また髪縛ったまんま寝たでしょ。モサモサにほつれまくってんだけど。
幸村:そうか?特に気にならぬぞ。
佐助:ちゃんと解いてから寝ないと痛むって言ったでしょ!
幸村:面倒でござる……。解いたら、起きた後結び直さねばならぬではないか。
佐助:結べばイイでしょうが。大した手間でもないだろ?
幸村:………自力では結べぬ。お前が居なかったのだから、仕方なかろう。
佐助:あのね……。だったら小姓にでも頼めば?
幸村:他の者では、どうもこそばゆくて敵わぬ。やはり、手慣れたお前が一番良い。
佐助:………(溜息)櫛、貸して。
幸村:い、痛いぞ!もっと丁寧にやらぬか!
佐助:ぐちゃぐちゃに絡んでんだもん。多少力押しで行かないとね。
手入れをさぼってた罰だよ。
幸村:うぅ……
佐助:………大体さぁ、何で伸ばしてるわけ?
幸村:なんで……とは?
佐助:旦那が自分の容姿に無頓着なのは今に始まった事じゃないけどさ。
……けど、だったら尚のこと、面倒な思いまでして、なんで伸ばしてるの?
旦那だったら、刀でぶちぶち髪切ってたって、俺様全然驚かないよ。
幸村:そこまで適当ではないわ……。……。……佐助は、切った方がよいと思うか?
佐助:う~ん。別に嫌いじゃないよ。やっぱ目立つから、戦場でも見つけやすいし
何より……
幸村:何より?
佐助:「尻尾」掴んだ方が、とっ捕まえる時に便利だしね~。
幸村:………。
佐助:恨みがましい視線を向けない。悪さして逃げる方がいけないんだよ。
幸村:むぅ……。
佐助:でもさぁ、いい加減自分で結えるようになって欲しいとは思うよ。
幸村:……。面倒なのか?
佐助:面倒とは思わないけど、心配にはなるよ。
幸村:心配?
佐助:だって………アンタ、俺が死んだらどーすんのよ。
―― ……。
佐助:そうでなくたって、団子は食べ過ぎるし、戦場でも無茶ばっかするし、
相変わらず迷子になるし、自分の着物の仕舞い場所だって……
幸村:………。
佐助:旦那?
幸村:おぉ!すまぬ。聞いておらなんだ。
佐助:アンタね……。兎に角、本当は器用なはずなんだから、
自分で出来るよう頑張ってくださいよ、いろいろと。
幸村:………そうだな。気が向いたら努力しよう。
佐助:今すぐ努力してよ……。
幸村:仕方なかろう。そう簡単にできるものか。
だから……髪結いは当分、お前の仕事だ。
――代わりなんて、居ないのだから。
佐助:えぇ~……俺様、忍なんですけど。
幸村:習慣というのは抜けぬものなのだ。戦働きも、団子も、迎えも、
当分はお前の仕事。死んでいる暇などないぞ。
佐助:過労死するっての……(溜息)
――それは、秘かな願掛け。
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