忍者ブログ
戦国BASARAの二次創作文。 政宗、幸村、佐助、元親、元就が中心。 日々くだらない会話をしてます。
Posted by - 2024.11.26,Tue
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

Posted by 今元絢 - 2008.04.04,Fri
○真田主従編「お仕事」
政宗:やっと3回目か…
元就:よくこのようなものが三度も続いた物だな。
元親:それは言わないでやれよ。休日に引き籠もって書いてたんだから。
元就:寂しい輩だな。
佐助:さて、漸く俺様達の番だね~♪ネタをいただいたのが嬉しくて、
   徐々に長くなって来ちゃったみたいだけど。
幸村:なんと!それでは前置きは無しで行くぞ!はじまりでござる♪

――「本日より警護を預からせていただきます。猿飛佐助と申します。」

父に呼び出されて赴いた庭先。地に跪いた少年は、そう言って頭を下げた。
自分より大分年上だろうが、まだ幼さは抜けきらない。
それでも彼は、闇を背負う忍ならではの、静かな雰囲気を纏っていた。

弁丸:……。
昌幸:そなたは…まぁ……子守役ようなものだがな。仲良うしてやってくれ。
佐助:御意。弁丸様は命を賭して、御護りいたしま……
弁丸:………。
佐助:お、御身の安全は………。
弁丸:………。
佐助:………。
弁丸:むぅ~……

初めて、自分のためだけに働く部下を与えられた。それが嬉しくて、物珍しくて。
垂れた頭の下にひょいひょいと顔を潜らせて覗き込むと、
佐助はその度に、つと目をそらした。

弁丸:こら!何故顔を背ける!
佐助:そりゃそんなに見られたら気まずいっての……。あのですね若サマ、
   俺はアンタの部下ですから、許しがないと顔を上げられないんですよ。
弁丸:そうであったか!?知らなかったぞ!
佐助:……。
弁丸:面を上げよ、猿飛佐助。
佐助:はっ。

満面の笑みを浮かべた自分を、佐助は無表情に見上げていた。

弁丸:成る程、これが……。
佐助:若サマぁぁあーーーー!!!!
弁丸:おぉ、佐助!待ちかねたぞ!
佐助:待ちかねたじゃないでしょ!何やってんすか、こんな所で!
弁丸:そなたが言っていた、「物見の木」を見に来たのだ。本当に高いでござるな~。

屋敷の裏山にある、一際高い一本の木。首を一杯に反らせねば、てっぺんまで見えない。
確かにこれに上れば、彼方まで見渡せるだろう。忍隊が重宝する理由もよく分かる。

弁丸:しかし……これは……足が……届かぬ……。上れないではないか!
佐助:そりゃそうでしょ。アンタ、俺の腰くらいまでしか身長ないんだし。
弁丸:ば、馬鹿にしておるのか!?某とて、間もなく佐助も越える長身になるのだ!
   日夜小魚を食べ、これでもかというくらい背伸びをして背骨を強化……
佐助:はいはい、分かりましたから。若サマは家でじっとしててくれませんかね?
   守り役達が大騒ぎして、その度に必死で探すの俺なんですよ。
弁丸:むぅ……家でじっとしていては身体がなまって仕舞うではないか。
   戦場で己の力を振るうためには、弛まぬ努力が必要なのだ!
佐助:………。面倒くさいなぁ、もう。

そう言って佐助は、ひょいと肩に持ち上げた。
子供一人等まるで重みを感じぬとでも言うように、恐るべき俊足で地を駆ける。
問答無用で、屋敷に連れ帰るきなのだろう。
景色が、風が、目にもとまらぬ勢いで、背後に流れていく。

弁丸:おぉ!おぉおお!!!!?凄い速さだぞ佐助!!!凄い、凄いぞぉおおお!!!
佐助:ちょ、危な……じっとしててくれよ若サマ。落ことしちまうって。
弁丸:………。
佐助:い、いきなり沈黙されても、それはそれで不気味なんだけど。
弁丸:その呼び名は、どうも気に入らぬ。
佐助:は?
弁丸:「若様」という言い方だ。なにやら……突き放したようというか……
   近づくなと言われているような気になるぞ。
佐助:……。そう呼べって言われてるんですよ。
   他の従者だって、そう呼んでるじゃないですか。
弁丸:だがどうも……佐助の言い方だけ……気に入らぬ。
佐助:……。そうですか。それはどうも失礼いたしました………若サマ。

そう言って佐助は、笑みを浮かべた。暫く時がたっても、佐助は呼び名を変えなかった。

弁丸:父上のお役に立つため、今から稽古を開始するぞ!付き合え、佐助!
佐助:………。はいはい。

弁丸:民を護るは、武士の務め!……という訳で、民の暮らしを知るべく、
   城下に行くぞ、佐助!
佐助:若サマ……また甘味食べに行きたいだけでしょ。
弁丸:う……。

弁丸:おぉおお!!!?ち、父上の大事な茶器を……!!!ど、どしたら良いのだ、佐助!
佐助:俺に訊かれても……。
昌幸:何かあったのか?弁丸……な、なんと!私の大事な茶器が真っ二つにぃいいい!!!?
弁丸:あ、ああぁ……
昌幸:弁丸~~……これはどういうこと……
佐助:俺が落としました。
弁丸:!!!
昌幸:何?
佐助:俺が、勝手に触って、割ったんです。
弁丸:さ、佐助……?
昌幸:いや、しかし、今思い切り弁丸が破片を手にアタフタしていたではな……
佐助:俺が、割ったんです。申し訳ございません。如何様な御処分も受ける覚悟。
昌幸:う、うむ……。まぁ……良い。割ってしまったものは、仕方ないからな。
弁丸:………。

勝手に出歩いた時、怪談に泣きじゃくっている時、叱られるようなことをしでかした時。
どんな時でも、ゆらりと近くに現れて、すっと手を差し伸べてくれる。
しかし同時に浮かべるのは、興味の無さそうな表情と、遠ざけるような冷たい呼び方。
子供心に、軽い混乱を覚えたものだった。

佐助:俺、暫く留守にしますんで。

ある時、唐突に佐助はそう言った。意味が分からずに目を瞬かせると、
相変わらずの呆れ顔で、淡々と説明を始める。
なんでも近く、大きな戦があるらしい。その情報収集に赴くのだそうだ。
既に臨戦態勢に入っている両国。敵方も護りを強化しているため、おいそれとは行かない。
手が足りないため、その頃忍隊ではまだ格下の佐助も、駆り出されるのだという。

弁丸:危険では……ないのか?
佐助:護衛は別に付けますし、いつも通り、乳母も女中も近くにいる。問題ないですよ。
弁丸:某のことでは無い!忍隊のことを言っておるのだ!
佐助:………。忍如きの身を案じてくださるとは、お優しいことで。
弁丸:そのように自分を卑下するでない。某は忍達を真に信頼しておる。
   卓越した技、風の如き足、確かな働き、そして……忠節心。見事でござる。
佐助:少なくとも、最後のは間違ってますよ。
弁丸:……?
佐助:俺等が主君を護るのは、ただ仕事だからさ。多分若サマが考えているような
   信頼とか忠義とか、そんなもんは持ち合わせてない。
   くだらない感情に感化されれば、それだけ死期が近づくんです。
   俺なんか餓鬼ですけど、そうやって命落とした馬鹿を何人も見てる。
弁丸:何も、信じぬと申すか?信じては……ならぬのか?
佐助:ご自由に。まぁ、俺は若サマを護りますよ?それが「仕事」、ですからね。
弁丸:………。
佐助:将来は戦場で存分に働くんでしょう?そんな情けない顔、しない方がいいですよ。

いつかも見た、あの笑み。そのままふわりと姿を消す。
何故かとても悲しくなって、不安になって、ぎゅっと拳に力を込めた。

――闇に紛れ、忍の一団が地を駆ける。

忍隊:随分と変わったな。
佐助:……は?何が?
忍隊:なんというかお前はいつも……こう、人を小馬鹿にしたような顔だった。
   かちんと来たことも、一度や二度ではない。
佐助:はぁ、そりゃどうもすいませんでしたね。
忍隊:若様の守り役となってからは暫く姿を見ていなかったが、少し表情が和らいだな。
   子供らしい可愛げという物がでてきたぞ。
佐助:………。無駄口叩いてないで、もっと速く走ったらどうなんだよ。
忍隊:やはり喋ると相変わらずだな……。
佐助:あの若サマときたら、事あるごとに呼び出されて、泣かれて、付き合わされて。
   振り回されるこっちの身にもなってくれってんだよ。
忍隊:……随分と懐かれているではないか。お前を守り役にして正解だったようだな。
佐助:全然嬉しくないんだけど。
忍隊:小憎らしい奴よ。さて、そろそろだな。後方の支援は頼んだぞ。
佐助:はいはい。

歩調をずらし、忍び隊と距離を取る。子供を重要な位置にはおけよう筈もない。
精鋭部隊が侵入。此方はいざというときの為に置かれている支援部隊。
仲間が戻るまで、じっと息を殺していればよい。

佐助:あ~あ、退屈。
弁丸:では握り飯でも食べるか?
佐助:って、ちょ!!!?な、なんで若サマが此処にいんのぉおおお!!!!?

そんなもの、後を付けたに決まっている。
渋る従者に泣き顔をして見せ、無理矢理馬を駆らせて追いついた。
あとはその従者の目を盗んで逃亡。ばれないようこっそり探したところ、
呑気に草むらにしゃがんでいる佐助を見つけたという次第だ。

佐助:こんな子供に見つけられるようじゃ……俺様ホント忍失格だよ……

なんだか落ち込ませてしまったらしい。元気づけようと持参した握り飯を差し出したが、
いらないと言うように押し返された。此方も少々落ち込んでみる。

弁丸:佐助は忍失格などではないぞ?素晴らしき技を持っているではないか。
佐助:それでも、若サマにばれるようじゃ駄目なんですよ。
弁丸:仕方有るまい。いつも一緒に居れば、自ずと気配も覚えてしまう。
   この前も、父上の評定を覗いていたであろう。
佐助:え……。
弁丸:父上も部下達も優秀な武将であるが、誰もお前には気付いておらなんだぞ。
佐助:でも、若サマは気付いてたわけ?
弁丸:なんとなく分かってしまうのだ。佐助はいつも某をみつけては叱りつけるからな。
   佐助から隠れる手段も覚えてしまったのでござる!
佐助:それ……俺様の弱点もろばれってことじゃん……。笑い事じゃないっすよ……。
弁丸:大丈夫だ!某は誰にも言わぬ!そもそも「なんとなく」だから説明できぬしな!
佐助:胸を張って言われても……。兎に角、帰りますよ。
弁丸:な、何故でござるか!?ここからが本番でござろう!?
佐助:本番もへったくれも……アンタ庇いながら仕事できるかよ。
   後方支援が一人くらい離脱してもなんとかなるだろ。はい、帰るよ。
弁丸:むぅ……
佐助:むくれたって駄目な物は駄目なん……。……!?

自分は、何も感じなかった。
しかし佐助ははっと顔を上げ、敵方の城が有る方向を食い入るように見つめていた。
その途端、空に一条の影が舞い上がった。黒い、鳥。
それを見た瞬間、佐助はいつかと同じように自分を肩に負い、駆け出す。

弁丸:ど、どうしたのだ!?
佐助:まずいよ~……アイツ等しくじったみたいだ。
弁丸:しくじった?
佐助:味方がしくじった、こっちの動きがばれてたんだよ。
   逃げ場を塞がれる前に、アンタだけでもなんとかしないと……

佐助はそこで言葉を切り、足を止めた。何もない、草原だ。
そうとしか見えなかった場所から、次々に浮かび上がるのは影。その数、十以上。
頬に、つと汗が流れた。

佐助:これは……本格的にまずいね~……

佐助に負われ、闇を駆る。昼間は暖かく感じていた風も、今はじっとり重苦しい。
逃げ惑えど、次々に現れる敵方の忍。
自分を抱える佐助の手から、徐々に力が抜けていくのを感じた。息も荒い。
「降ろしてくれ、自分で逃げる」と言っても、佐助は聞く耳を持たない。
ひゅと、何かが空を切り裂く音がした。佐助の足が、地を擦って止まる。
いつの間にか、顔の横に手裏剣が構えられていた。それで飛び来た苦無を弾いたらしい。
しかしその頬には、浅い切り傷が出来ていた。

弁丸:佐助……

顔を歪め、声を掛けても、荒い呼吸を繰り返すだけで返事はない。
正面に二人、背後に三人、背後にはもっと居るだろう。
佐助は静かに、自分を地に降ろした。そのまま暫く黙った後、手裏剣を放り捨てた。

佐助:降参。やっぱ餓鬼に逃げ切れるほど、甘くないみたいだ。
弁丸:さ、佐助!?

思わず顔を見上げるが、佐助は何も答えない。
敵方忍にも、動揺の色が広がった。が、直ぐに一人が進み出る。

敵忍:往生際の良いことだな。……その子供は?随分と見なりが良いようだが。
佐助:良くて当たり前だろう?真田の次男坊、弁丸だよ。
敵忍:何!?
弁丸:……。

色めき立つ忍。不穏な空気に、佐助の着物の裾を握った。
佐助はそれをちらと見下ろしただけで、言葉を続ける。

佐助:俺は命が惜しい。だからアンタ等に下ってもいいと思ってる。
   ただ、それじゃ信用して貰えないだろ?だから、こいつを差し出してやるよ。
敵忍:なんだと?
佐助:人質にくれてやろうって言ってんだよ。戦を有利に運ぶため、
   これ以上ないほど便利な人間だと思うけどね。
敵忍:……。
佐助:条件を呑まないってんならそれでも良い。ただ、力尽くで俺から奪うとなると
   面倒だぜ?俺も悪足掻きはさせてもらうからな。その間に、うちの忍び隊が
   嗅ぎつけてこないとも限らない。
敵忍:……。

敵の忍達は、何やら相談しているらしかった。闇が、不気味に蠢く。

敵忍:よし、いいだろう。身の安全は保障してやる。だから弁丸を渡せ。
佐助:おいおい、冗談はよしてくれよ。どうせ渡した途端にばっさり、ってんだろ?
   けど、そんなの御免だ。こいつは俺が送り届ける。アンタ等が周りを固めて、
   俺が逃げないようにすれば、それでいいだろ?

そう言って、佐助は庇うように忍等との間に立ちふさがった。再び、闇が蠢く。

敵忍:言い分は分かった。だが此方とて、信用ならぬ者を連れ帰るわけにはいかぬ。
   そこで、だ。お前が我等に下るという証拠を示して貰おう。
佐助:疑り深いことで。で?何しろってんだよ。
敵忍:弁丸を、斬れ。
弁丸:!!!
佐助:……。人質はいらないのかい?
敵忍:勿論、有効だろう。だが、姿の消えた我が子が、何処でどうなっていようが
   知る手段はない。真田にはその身を預かったと伝え、戦の備えを解かせる。
   まさか子を見捨てるわけには行かぬからな。必死に従うであろう。
   全て破棄させるに近いところまで追い込み、一気に攻め落とすのだ。
佐助:……。服従じゃなく、滅ぼす、ってか。
敵忍:配下に置くには、あまりに力を持ちすぎている。いつ寝返るとも分からぬ存在。
   そのような輩は、消し去るが上策。いずれ親類縁者と同様の運命を辿るのだ。
   その子供も、ここで死のうと、早いか遅いかの違いのみよ。
佐助:……。
敵忍:骸はお前が持て。大事な証拠を持たせてやるのだ。
   背後から斬られる心配はなかろう?
佐助:……。そうかい。

そう言って、佐助はすらりと手裏剣を構えた。鎖で軌道を変える、大型の手裏剣。
今の自分に、避けられる術がないことは分かっていた。その刃が真っ直ぐに此方を向く。

弁丸:……佐助。
佐助:じゃあね……若サマ。

――刃が肉に刺さる、鈍い、音がした。

一瞬の沈黙の後。背後で、どさりという音がした。
そう思った瞬間、再び身体が持ち上げられる。
風景が、目にもとまらぬ速さで背後に消えた。

弁丸:相変わらず、佐助は速いでござるな~…
佐助:呑気に言ってる場合かよ。……ったく。

自分を斬ると見せかけて。
傍らを走り抜けた佐助は、背後にいた忍を倒し、そのまま自分を抱き上げて駆けだした。
不意打ちを食らった忍は、状況を理解し、追い始めるまでに数瞬を要した。
その間に、佐助は相当な距離を走り抜けていた。

佐助:下るフリしての時間稼ぎを見破られたか、本心で言ったのか。
   どちらにせよ、もう誤魔化しは効かない。必死扱いて逃げるしかないね。
弁丸:逃げるのみでは埒が明かぬ。某、父上に小太刀は持たされておるぞ。
   いざとなったら、存分に戦って見せよう!
佐助:はいはい、心意気だけ受け取っておきますから、大人しくしてて。
   ………。………それにしても、若サマ。
弁丸:……?
佐助:俺、なんの説明もしなかったのに、よく平気な顔してたよね。
弁丸:何の話でござるか……?
佐助:いや、だから……アンタ、俺が刃向けてるってのに、怯えるどころか
   目も閉じないで立ってんだもん。本気で裏切るとか……思わなかったわけ?
弁丸:思わなかった。
佐助:即答かよ……。
弁丸:申したであろう。某は佐助を信じておる。
佐助:……。だからその時も言っただろ?そんなもの、忍には無意味だって。
弁丸:それでも、信じているのだ。仕方なかろう。
佐助:……。俺は……

佐助が何かを言おうと、口を開いた時だった。
真っ直ぐ、自分の目に向かい、飛び来る苦無を見つけたのは。
先程佐助の手裏剣が飛び来たときは、何も感じなかったのに。
全身を恐怖が包み、凍り付く。何も出来ないまま、目だけを固く閉じた。
   
佐助:……っ!!
弁丸:佐助!?

頭に苦無が届こうとする直前、佐助が身を反転させるのが分かった。
身体が傾き、地に投げ出される。
慌てて縋れば、佐助の肩と足に、深々と苦無が突き立っていた。

弁丸:佐助……佐助っ!!!
佐助:大……丈夫……。けど……ちょっと走るには……きつい……かも。
   早いトコ……離れて、逃げて。少しの間……食い止めておくから。
弁丸:お、置いていくなど出来ぬ!
佐助:すぐ追いつくから……さ。
弁丸:断る!
佐助:頼むよ……。アンタに死なれたくないんだって……。
弁丸:某は……。……っ!!!

闇から、忍が飛び出してきた。その刃は、手負いの佐助に向かってくる。
反射的に小太刀を抜き、それを食い止めた。金属同士の擦れる、耳障りな音。
全力で押し返そうとするが、子供の力ではどうにもならない。
相手の刃が、じりじりと首元に迫る。

敵忍:忍如きを庇って果てるか。愚かな主も有ったものだ。
弁丸:そんなことはない。佐助は俺の忍……。置いて逃げたりなど……せぬ!

隙をつかれたか、相手の刃が一気に此方へ押し寄せた。覚悟を決め、身を固くした時……
――直前で、その刃が止まった。
敵忍は、そのまま此方にずるずると倒れ込む。なんとかその身体の下から這い出すと、
精も根も尽き果てたと言わんばかりの佐助が、大の字に寝ころんでいた。
敵忍の背には、深々と苦無。佐助は己の足に刺さったそれを、忍の背に突き立てたらしい。
足からは、痛々しい紅があふれ出ている。

佐助:ま、間に合ったぁ……

微かに耳に届く、笛の音。どことなく安堵させる音色だった。
いつの間に呼んだのか、味方の応援が到着したらしい。


――数日後。佐助の姿がなかった。
慌てて屋敷を探し回れば、見つけたのは炊事場だった。
珍しく鼻歌など歌いながら、何かを作っているらしい。
気配を悟ってか、此方を振り返った。

佐助:何?
弁丸:何ではない!お前はまだ怪我が治っておらぬのだぞ。ふらふら出歩いてはならぬ。
佐助:若サマにそんな事を言われる日が来ようとはな……。大丈夫、もう治りましたって。
弁丸:嘘を申すな。今の佐助など、膝かっくんで倒せるぞ。
佐助:ちょ、止めてよ!?そんなことされたら本当に足が死ぬから!
弁丸:……やはり治っておらぬではないか。
佐助:う……。文字通り、痛いところを突いてくる……ってか。若サマも賢くなったね。
弁丸:……。
佐助:な、何?その不満げな顔?
弁丸:やはり、どうもその呼び名はしっくり来ないでござる。
佐助:……そんなに気に入らない?
弁丸:うむぅ~……
佐助:まぁ、別に拘りないし、なんなら変えましょうか?どんなのが良い?
弁丸:ぬぅ~……。
佐助:そんなに悩むことでもないだろうに。
弁丸:……「ご主人様」?
佐助:それは駄目!絶対駄目!いろんな意味で駄目!
弁丸:何故でござるか?
佐助:なんででも!……まぁ、いいや。呼び名なんて何となく変わっていくもんだし、
   その内納得するような呼び方、してあげるからさ。
弁丸:うむ!
佐助:……あ、そうだ。はい、口開けて。
弁丸:……?

言われるが儘に口を開けると、ひょいと何かが放り込まれた。
もぐもぐとやると、やんわりとした甘さが広がっていく。

弁丸:お、おぉおお!!!?旨いでござる!!!
佐助:そりゃ良かった。甘いもの好きだから、喜ぶだろうと思ったよ。
弁丸:佐助は料理も出来たのでござるか!?尊敬してしまうぞ……
佐助:そこまで言われるほどのもんじゃないですよ。生きるために必要な知識だっただけ。
弁丸:兎に角旨いでござる♪……しかし、何故突然このようなものを?

首を傾げると、佐助はしゃがんで視線を同じ高さに合わせ、声を潜めた。

佐助:逃げ延びるためとはいえ、大事な主をダシに使ったり、危ない目に遭わせたなんて
   上司に知れたら、俺様大目玉じゃすまないもん。だから、口止め料。

指を立て、しぃっと呟きながら、くすくすと笑う。
それは、初めて見た、心の底から楽しそうな笑みだった。
なんだか嬉しくなって、此方も思わず笑い出す。

弁丸:成る程、口止め料か!では、もっと貰わねばな!団子追加でござる!
佐助:うわ~……がめつい子だな~。
弁丸:む?無礼を申すな!
佐助:わっ!ちょ……いきなり飛び付かないで!痛っ……傷が……
弁丸:っ!!!すまぬ!大丈夫か、佐助!?
佐助:嘘~♪
弁丸:こ、この……
佐助:わぁっ!!!?本当にちょっとは痛いんだってば!わかった、作る!
   団子くらい、いくらでも作ってあげるから!痛い痛い痛い痛い!!!
弁丸:本当か!?
佐助:うん。猿飛佐助、存分に働きますよ~。

――これも、お仕事だしね♪

 


〔あとがき(?)〕
佐助:うっそぉ!俺様、ここまで可愛げの無い子供だったぁ?
幸村:うむ!某はばっちりきっちり覚えて居るぞ!
佐助:うぅ……なんかやだなぁ……。あ、そういえば、今回の捏造は昌幸様だね。
幸村:父上でござるな♪
佐助:まぁお館様でも良かったんだけど、いろいろ辻褄が面倒だからってことで。
   さて、今回で幼少期シリーズもおしまい。
幸村:長かったでござるな~
佐助:特にうちは最後担当だったからね……。
幸村:また近い内に書くかも知れぬと言っていたぞ!ネタが有れば送って欲しいそうだ!
佐助:また人頼みかよ……。
幸村:それでは、また来週でござる~♪
佐助:絶対来週更新とか無理だと思いますがね~。

――お付き合い、有り難うございました!

PR
Comments
Post a Comment
Name :
Title :
E-mail :
URL :
Comments :
Pass :   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
TrackBack URL
TrackBacks
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
フリーエリア

WEB拍手です。

最新コメント
最新記事
最新トラックバック
プロフィール
HN:
今元絢
HP:
性別:
女性
バーコード
ブログ内検索
カウンター
Template by mavericyard*
Powered by "Samurai Factory"
忍者ブログ [PR]